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雪の日の彼ら。





大雪のため、童実野町内の大半の学校は臨時休校。


交通網の乱れ等社会人には迷惑この上ない雪でも、学生である彼らには格好の遊び道具。





「くらえー!」
「わぶっ!……やりやがったなモクバぁっ!」
「大人げねぇぞ城之内ー!」
「うるせぇ本田!てめえも……くらいやがれっ!」
「ぶふっ!……この野郎、三倍にして返してやらあっ!」
「オレも加勢するぜいっ!」





場所は海馬邸の庭。


モクバが遊戯を家に誘い、せっかくだからと杏子、城之内、本田も一緒に連れてきたのだ。
モクバの『みんなで雪遊びしようぜい!』の言葉にのって庭に出た。


そして唐突に始まった雪合戦。
入り損ねた遊戯と杏子は三人の様子を眺めていた。





「まったく、城之内も本田もコドモなんだから……」
「なんか、入り損ねちゃったね。」
「今からでも入れば?」
「いや……さすがにあの中に入るのはちょっと……」


かなりの勢いで雪玉が飛びかっている。
モクバに対しては多少手加減しているが、城之内と本田の間では熾烈な戦いが繰り広げられている。
あの二人の戦いに割って入る勇気はさすがになかった。


「ねえ杏子、雪だるまとか作らない?」
「いいわね。せっかくだから人数分作ろうか。」
「うん!もうひとりのボクも雪遊びしたいって言ってるし、何体作ればいいかなあ。」





雪合戦は一応の決着が着いた。


モクバが、雪だるまを作っている遊戯達に気付き途中抜け。
城之内と本田の一騎打ちになるかと思いきや、彼らもまた遊戯達の様子に気付いた。
引き分けということでケリを着け、二人も雪だるま作りに参加した。





「これで……完成!」


本田が最後の雪だるまの頭を乗せた。


ズラリと並んだ雪だるま。


「こんだけ並ぶと壮観だな。」


城之内の言葉に皆同意する。


遊戯ともうひとりの遊戯に、杏子、城之内、本田とモクバ。


そして。


「……あれ?一体多いぜい?」


少し小ぶりに作られたモクバの雪だるまの横にもう一体雪だるまが。


「んっ……しょっ……よっ……とっ。」
「……遊戯?」


ふと声のする方を見れば、雪玉を転がしている遊戯がいた。


「何やってんだよ遊戯?」
「あ、城之内くん。これ乗せるの手伝ってくれる?」
「あ?ああ、いいぜ。」


モクバの隣の雪だるまにもう一つ雪玉を乗せ、三段重ねの雪だるまが完成。


「これで、よしっと!」
「ありがと、城之内くん。」
「いいっていいって。でも、これじゃ一体多くねえか?」
「うん、そうだね。」
「へ?……じゃあこれって誰の分だよ?」





「海馬くん!」





「……え゛!?」


反射的に後退りした城之内に、遊戯が苦笑をもらす。


「遊戯、兄サマの分も作ってくれたのか。」
「うん。……しばらく会ってないから、つい。」


少し淋しそうな顔をする遊戯に、モクバも同意するように俯く。
海馬と遊戯の関係を知っている城之内達は複雑な表情を浮かべている。


そんな時だった。





「……何をやっているんだ、お前達。」


噂をすれば陰とはよく言ったもので。


「兄サマ!」
「げっ!?何でいんだよテメー!?」
「オレがオレの家にいるのがおかしいか?……ふぅん、凡骨は此処が何処かも理解してないらしいな。」


海馬と城之内の言い争いがヒートアップしそうなその時。


「久しぶり、海馬くん!」
「む、来ていたんだな遊戯。」
「うん!……仕事、忙しかったんだね。」
「そうだな……まともに顔を合わせるのも半月ぶりくらいか。」


遊戯に話しかけられたことで海馬の意識はそちらに向かい、纏う空気が穏やかな物になる。
面白くないのは城之内だ。
二人のことを知ってはいるものの、納得まではしていない。
間に割って入ろうとした城之内を、モクバ、杏子、本田が抑えた。


……海馬と遊戯は既に二人の世界に入ってしまっている。


この空気に割って入れば、海馬の怒りを買うことは避けられないだろう。
杏子と本田はとばっちりを受けたくないから、モクバは二人の邪魔はさせないと若干の違いはあった。
が、海馬に掴みかかりそうな城之内を抑えなくてはいけないというのは共に認識していた。


そんな周囲の状況など気にも留めていない二人の放つ空気は、どんどんピンク色になっていく。





「……で?」
「え?」
「久々に会ったというのに、何もないのか?」
「そ……それは……」


照れ臭そうに顔を俯かせて、ゆっくりと海馬に近付く。
そして。





「∞$#℃☆!!?」
「「うわあ……」」
「ラブラブだなあ二人とも……」


ちなみに上から城之内、杏子と本田、モクバの言葉だ。


城之内のダメージは相当大きいらしく、地面に座り込んでしまっている。
杏子と本田は城之内ほどではないが、その声には呆れが含まれている。
モクバは多少慣れているのか、三人に比べれば比較的いつも通りの様子だった。


……遊戯が、海馬に抱きついたのだ。


「……海馬くんだあ。」


ぴったりと抱きついているため表情はわからないが、その声からは嬉しさが滲み出ていた。


「……まあ、良しとするか。」


海馬としてはキスの一つもして欲しかったところだが、近くにはモクバ達もいる。
それに、遊戯の幸せそうな声が聞けただけでも満たされていた。


「?何か言った、海馬くん?」
「いや。……それよりも、だ。」


顔を上げた遊戯の頬を両手で包むように触れると、予想通り冷えていた。


「海馬くんの手あったかーい。」
「おまえの頬が冷たいんだ。一度、中に入れ。」


海馬の手をカイロ代わりに頬に押し当てる遊戯に、家の中に入るよう促す。
急かすように体の向きを変えられ背を押されては、遊戯も海馬の言葉を了承せざるを得ない。


「あのね、海馬くんの分の雪だるまも作ったからさ、後で……」
「わかった、後で見てやる。」
「うん!」


家の中に入る寸前で海馬が立ち止まり庭の方を見る。


「モクバ、おまえも中に入れ。」
「はーい。あ、じゃあメイドにお茶用意させるぜい。」
「ああ。……貴様らにも用意してやる、有難く思うが良い。」


城之内達もいた事を思い出して軽くパニックを起こす遊戯を連れて、海馬は家の中に入っていった。





「大丈夫かー城之内ー。」
「…………」
「これはダメだわ。……まあ、気持ちはわかるけどね。」
「ああ……わかってても精神的にくるよなアレは……」


城之内は完全に灰になっている。
これ以上此処にいては、自分達も城之内同様にダメージを負うのは解り切っている。





杏子と本田は未だ真っ白なままの城之内を連れて、海馬邸を後にしたのだった。





……海馬邸を出る前にちらりと覗いた部屋の中で見た遊戯と海馬のいちゃつき振りに、杏子と本田もうっかり意識が飛びそうになったというのは、まあ余談だろう。



END



あとがき。


やっと書けた……!


リクエスト受けてから一月近く経ってるよ!
遅筆過ぎだよ管理人!


匿名希望サマ、このようなものでよろしかったでしょうか?
書き直しはいつでも受け付けます。




あきゅろす。
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