ちゃぷりと透明感が揺れる。

素肌。

花色。

幾枚もの
色彩は
水色の透明にあえやかで
湯温は心地よく沁みて
素足に纏う花弁たち。

柔らかな薫りが
細やかに
立つ。

透明感、ちゃぷり、と。



クリアカラーのタブに両足を浸して
体温に近似の湯を揺らすと
濃紅色紅色薄紅色の花びらが
綺麗に撓みながら混じり合い
湯中で皮膚を滑って
また水上で纏わって
滑らかな蒸気。

香りは
身に付いただろうか。


「お姫様。御機嫌は直ってくれたかな。」


全ての情景はぼんやりと
把握していて
五感の一つが響きを拾うと
神経が反射を。

頤を定めると視線に
まず自身の金色が滑り
それは頬を擽って
感触を

そして視覚
集中されるは中心

ゆらりと
足許の水色さえ反射したのか
数多の光を集約させたかの様な
白銀よりもオーロラに近しい
柔らかな瞬き。


ちらちらと髪が。

揺れたのか乱反射なのかは知れず。


中性的な
少女の様な
無性別な
少年を美しく模しながら。


「良い匂いだね…でもやっぱアンタにはきつ過ぎるかな、お姫様。」


音声も
澄み透る
きれいな響きではあったのだが
ふわりと笑むままのそれに
不思議と有機的な温度なぞ感じられず
若干の違和感を刻んで。


おひめさま
「彼」からそう呼ばれる事は
少女にとって
まごうかたなき侮辱で
精神への凌辱であるのだが。

ゆるい瞬きを瞼に。

少女は
そうして開いた虹彩の
妙に深めく透明な琥珀に彼を。

瞬きに合わせて
小さな形良い唇を
ひらいては。


「Xi……あなた、いつまで此所にいるつもり」


「お姫様には薔薇なんかじゃなくてもっと淡い……そうだなぁ、さくら?桜なんかが似合うと思うよ。」


柔らかな桜色から放った音声は
少女らしいその見た目に反して
問いと諌めの合間か
若干に冷ややかで
それでも少女の可憐さに大差なぞ無いが。

言語を無視して少年は気紛れに邪気無く紡ぎ
少女と違わぬ華奢な身体のその上半身を
チェアに座す少女の両膝へと
屈んでは預ける。

ちゃぷり。

体温は人並みだ。

常ではないが。

水面に薔薇は揺らぐ。

湯温は徐々に下がり出す。


甘えを騙って
中性的な面立ちが上げられた。


「さくら、さくら、次は沈丁花……弥子の花だね」


虹彩は銀膜の張られているかの様に
淡い虹めいた色彩に些か過剰なまでに煌めいて
むしろその瞬きは鋭い。


蛇の眼だ。と弥子はいつも思う。


あどけなく造られた輪郭の

見た目通り柔らかな温度
ふわりと舞う白銀の先
オーロラの髪先
膝に散る。


幼い物言いは
少年にも少女にもなりきれない
子供にも大人にもなりきれない
この、世間では怪物と呼称されている生き物の
本然の虚無をそのまま隠し切れず曝してまいる様で。

言葉を彼女は応えない。

代わりのように
彼にそうさせている。

好きなように。

甘えを騙りたいのであればそのままで良い。


何者であろうと
何者でもなかろうと
桂木弥子にとって
モンスターロバーXiは
そのままXiである。

他のXiなぞは知らないのだから。


そんな風に
思考しながらも
銀の反射を弾く虹彩を琥珀の虹彩に見下ろしたまま。

されど
Xiになれば
少女の思考の所以を読むのも容易くて
単純に
自らを見てはいない事実に
眼を合わせながら頬を膨らます。


「まぁーた俺の事見てないしっ」


「拗ねたの?」


「アイみたいな事言ってー」


ちらちら乱反射の全てが
淡い輪郭なのに冷たい。

虹が白に呑まれる。

湯温が
水になる。


香りの消失。


ちゃぷり。


睫毛の長い影にかかる
琥珀の透色は
そしてぱちりと
漸く
明確さを伴って開き直される。

透明なアンバー
陰影の具合によって紅色の。

その円の中心の
漆黒の瞳孔に
淡い白銀と
鮮やかにオーロラとを。

呑まれた虹色さえ
弥子になら可視され得るのだ。


さくら、は淡い。


「良い子ね。」


さらりと粉雪のように
今にも溶け消えそうな
繊細な髪質を指に滑らす。

心地は良い。

足が冷える。

膝の上で身じろぐ温かさが珍しく
ゆったりと撫ぜ梳いて
淡い光は爪の研磨された桜色にも熔け込んだ。


細い指先にXiが薔薇を掬う。

垂れる紅から滴る水滴が匂い立ちそうに鮮やかで。

すい
と上げられて
反応を少女は思考する。

何をすべきか。

気紛れな軌跡に曖昧な柔さで笑いながらXiは弥子を見上げたまま。

弥子はXiを見下げたまま。


結局
花弁は
彼の唇へと収まり
紅い薫りに今更ながらに
これは自分らしくないのだと。


撫ぜていた掌の下で
猫のように
淡く幼い温度の離れては

口付けは薔薇の味。


「ん……っ」


「ね、いかないで、どこにも、」


ずっと。


移された花弁の紅が
脳裏に弾け散る。

白い煌めきを
だから求めた。

両腕を
相手と同じく
細い背に回して。


ちゃぷり
足許で水が鳴る。



いつから自分は此所に居て
いつまでこれは続くのかと

今日も少女は尋ねられずに。








































20091106

雑記Logを格納

監禁よりも逆監禁が萌えるんじゃね的な
桂木宅でXiちゃんが弥子ちゃんにべったり的な
別に普通に誘拐でもいいけど…

前々から花弁の浮いた盥に弥子ちゃんの足を入れたかったのでそこだけはクリアー

またいつか書き直します





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