――酒を飲ませたら――
次の日から春休みということで、志摩子は聖の家に遊びに来ていた。
聖が学校付近まで迎えに来たため、制服のまま家に連れて来られている。
お互いの近況を一通り話した後、聖が制服を見て言った。
「リリアンの制服…懐かしいね」
「そうですか?」
「うん。というか大学は制服じゃないから」
聖は志摩子の制服のタイに触れる。
「志摩子の制服はキレイだね。私ももうちょっとキレイに着てやれば良かったな」
「お姉さまはいろんな所に座りすぎでしたから」
「だって学校裏の木の下とかすごく気持ち良いんだよ?銀杏の木の下も良いね。黄色い絨毯の上で昼寝。気持ち良かった。ただちょっと寒いけど」
「…ずいぶん充実した学校生活でしたね」
「んー、そうなのかな」
志摩子は感心したのか呆れたのか分からない溜息を吐いた。
「お姉さまは学校で何かやり残したことはあるのですか?」
「そうだね…」
前にも同じようなことを聞かれたが、そのときは何と答えたのだったか。
聖はそこで一旦悩む素振りを見せる。
「志摩子にちゅーしたりとか」
「………」
志摩子からの反応はなし。
ちょっとふざけ過ぎたかなと、慌てて場を繕う。
「なーんて、冗談だよ」
楽しそうに笑う聖に対し、志摩子の表情は複雑なものだった。
「志摩…「なら、今すればいい…」
普段の志摩子からは考えられない程の切羽詰まった声。
「ちょ…志摩子さん??」
「お姉さま…」
あろうことか、志摩子は聖の顔を両手で挟むとその唇を近付けた。
「ん…んん……っ、」
触れ合う唇と唇。
突然のことで抵抗もできない。
角度を変えて何度も繰り返される口付けに、意識が朦朧としてくる。
上手い下手に関わらず、想い人からのそれは甘い。
言わば、媚薬の味。
不意に、志摩子が聖の唇を舐めあげた。
半ば強引に志摩子の小さくてかわいい舌を押し込んでくる。
熱くて熱くて、胸が苦しい。
聖が肩口に手を置き軽く力を込めると、志摩子は思いの外簡単に離れた。
「はぁ、はぁ、…気持ちいい、ですか?」
「んっ、志摩、子…」
荒くなった呼吸を整えながら、何とか思考を整える。
こんなことになった原因。
そもそもの始まりは志摩子に酒を飲ませたことだった。
未成年の飲酒はダメなんですと断る志摩子に一口だけと言って飲ませた。
やましい感情が無かったとは言い切れないが、一口程度で酔うとは思ってもみなかった。
だが、微量ではあっても、志摩子を酔わせるには充分な量だったのだろう。
酒のせいか先程の行為のせいか、志摩子の頬は桜色に染まっている。
「…ごめん」
「どうして、謝るのですか?」
「こんなこと、させるつもりじゃなかった」
志摩子の表情が曇った。
「………嫌、でしたか?」
今にも泣き出しそうな顔。
頬を染めて涙を浮かべて。
おまけに上目使いで自分を見上げる姿。
取り戻した理性を再び失いそうになる。
「嫌じゃない…でも、志摩子の意思を無視してこんなことするのは、嫌だ」
「私の…意思?」
「私は志摩子が好き。だから酔った志摩子を襲うなんて卑怯な真似はしたく……へ?」
言葉の前半は志摩子の顔を見れなかったから。
後半はちゃんと目を見て話すべきだと顔を上げると、志摩子の姿はなかった。
慌てて視線を下げると、志摩子は床に体を投げ出して寝ているわけで。
聖は額に手をやり本気で溜息を吐く。
「本当に襲うよ?」
言うだけ言って志摩子の首の後に手を回した。
太股にも手を回しすと、ほどよく柔らかい感触が。
首を振って襲いくる邪念を無視する。
そのままお姫様抱っこでベッドまで運んだ。
ベッドに体を降ろすと、志摩子が火照った頬で微笑む。
「お姉さま…」
一体どんな夢を見ているのか。
自分の名前を呼んだということは夢でも志摩子に会えているのか。
嬉しさに顔の筋肉を緩ませながら、聖は肩まで布団を掛けてやり、志摩子から離れようとする。
が、離れるための一歩が踏み出せない。
志摩子にしっかりと服の裾を握られていた。
「とんだお姫様だ」
聖は苦笑混じりに呟く。
寝ている志摩子を起こさないように、布団に潜りこんだ。
――あったかい。
目を閉じると簡単に夢の世界に誘い込まれる。
翌朝、何も覚えていない志摩子は隣に眠る聖を見てかなり驚いたという。
―――――――――――――
あくまでも聖志摩です。志摩聖みたいになったけど。
佐藤は受けでもきっとかわいいと思うんだ。藤堂は基本受けだけど、酒を飲ませてリミッター解除したら攻めに変身☆ただ、技術に関してはすごい下手。一通りちゅーして爆睡。佐藤は訳分かんないまま取り残される。
アリガチなネタだけど好きだなー。
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