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 Spring garden(春の庭)


時空モノガタリのテーマ【 太陽のせい 】で書いた作品です。

写真はほとんど自分で撮ったものですが、シクラメンと
たんぽぽの綿毛だけが検索した画像です。

カメラはCanon IXYで、6年くらい前に家電量販店の閉店大安売りで
激安価格で購入しましたが、今や私の片腕です(笑)



   初稿は時空モノガタリ 2014年4月5日 文字数 1,598字
   カクヨム投稿(夢想家のショートストーリー集)2017年3月6日 文字数 1,653字








小さなお庭で春の花たちが目覚めます。
太陽の光を浴びて、青々とした葉っぱを茂らせて、
太く伸びた茎には、美しい花を咲かせました。

「こんにちは。太陽さん」
チューリップが大きな口で挨拶します。

「今日も良い天気じゃ」
ひげオヤジみたいな顔のパンジーたち。






「暖かい日差しが、気持ちいいわ」
マーガレットたちもプランターでご機嫌なようす。

花たちが成長するには、水、肥料、太陽が必要なのです。
植物には光合成というのがあって、太陽のエネルギーで成長します。
そして、きれいな空気も作ってくれるのです。

「みんなイイなぁー。オイラのところには日陰なんだ」

どこからか声がしました。
よく見ると、ブロック塀とコンクリートの
わずかな隙間に、小さな黄色い花が咲いています。






「あらっ! そんなところに居たの?」
「そこは影になって光が届かないでしょう」
「お気の毒ねぇー」
春の花たちが口々に喋りだします。

「オイラも明るいところに移動したい」

……けれども植物は自分では移動できません。

ちょっとでも日当たりの良い場所に
プランターや植木鉢を置いて欲しいと
花たちはいつも願っています。

「ただの雑草のくせに生意気よ!」
チューリップが大声で言いました。






「オイラは雑草じゃない! たんぽぽって名前があるんだ」

「私たちは種や球根を鉢に植えて咲いた花なのよ。
勝手にそこら辺で咲いている花とは身分が違うのよ」
チューリップがバカにしました。

その言葉にシュンとなって、たんぽぽは黙り込んでしまいました。

「あたしも、うつむいてばかりだから太陽の光を拝んだことがないの」
花壇の隅っこで、クリスマスローズが呟いた。






「どうして、いつも地面ばかり見てるの?
それにクリスマスでもないのに、クリスマスローズなんて変よ」
チューリップが笑いました。

「チューリップさん、そんな言い方はずいぶんだと思うわ」
隣のプランターのさくら草たちが口々に批判しました。

「なによっ! あんたたち桜の木の親戚でもないくせに、
さくら草なんて、おこがましいのよ」

「ひどいわ! ひどいわ!」
さくら草たちはプンプン怒りました。






「あんたこそ大口開けバカみたい!」
黄色いスイセンがチューリップに噛みつきました。

「失礼ね! 私は春の花ナンバーワンのチューリップよ」
「まあ、なんて図々しい花なの!」
「だって、春になると一番待たれている花がこの私よ」
「フン! あんたのバカ面は見あきたって太陽が言ってたわ」
「あ〜ら、太陽は私ものよ」
「ウソおっしゃい!」

みんな不満そうにざわつきました。






「まあまあ、太陽の光はみんなに平等だから……」
冬の花のシクラメンが仲裁します。

「シクラメンさん、まだ居たの? 
あなたの季節はとっくに終わったのよ」

「チューリップさん、ちゃんと分かってますよ。
そろそろ日陰に置いて欲しいと思っていたところです」

「花が少ない、冬のシーズンに華やかに
咲いていたシクラメンさんは立派です!」

春の花たちが賞賛の声をあげました。






「私はもうお役御免です」
そう言って、シクラメンは花びらを散らし始めました。

「シクラメンさん、お疲れさま。また来年お会いましょう」

季節のバトンタッチ。
冬から春へ、その中で一番花たちが活気づくシーズン。

――それが春なのです。






あれから、ずーっと沈黙していたたんぽぽに
なにやら変化が……
いつの間にか、フワフワの綿毛になっていました。

「オイラの仲間たちが、今から旅に出るんだ!」

一陣の春風が吹き荒れたら、
たんぽぽの綿毛たちが、いっせいに大空へ舞い上がった。

「すごい! 空を飛べるなんて」
「たんぽぽさんが羨ましいわ」
「風で運ばれる種なんて素敵!」






「みんな、さよなら〜」

たんぽぽの綿毛たちは手を振りながら、
春の庭から遠い町へと旅立って行きました。

「今度は日当たりの良い場所に根を下ろすんだよ」
たんぽぽの綿毛をみんなで見送りました。

時々、ケンカもするけれど
太陽の恵みで植物は、スクスク成長しているのです。

みんな太陽が大好き!


そんな賑やかな春の庭の花たちを
ニコニコしながら太陽が見ていました――。




― おしまい ―








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