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 ネットに棲むモンスター 

ネットにはモンスターが棲んでいる!

『誹謗中傷』『無断転載』『名誉棄損』
ネットには見えない悪意が渦巻いている。

匿名という隠れ蓑を被り、彼らは特定の人物を攻撃する。

みなさんは年間何人の若者たちが、この風評被害に合って
自殺をしているのか知っていますか?

かつて、2ちゃんねるの掲示板に『誹謗中傷』『無断転載』
事実無根な『デマ』まで流されるという被害にあった、
この泡沫恋歌が自らの体験を元に、ネットに一石を投じる作品です。

表紙はフリー画像素材 Free Images 3.0 OhLizz 様よりお借りしました。http://www.gatag.net/

無料フリー写真素材[ 足成 ] 様よりお借りしました。
http://www.ashinari.com/


   初稿 novelist 2012年1月 文字数 38,743字
   カクヨム投稿 2018/4/19 文字数 40,020字










   第一章 ナッティーについて

「アザース!」
 嬉しそうに彼女はニッコリと微笑んだ。
 僕のパソコンの画面に映し出された彼女はとってもチャーミングなアバターなのだ。
 アバターというのはSNSなどでゲームやチャットをする時に自分の分身として、画面に表示される画像ことで、それぞれのSNSでいろんな顔や服装パターンが存在する。
 彼女が入っているSNSは、特にアバターが精巧に出来ていて可愛い。アバターには服装や背景を着せ替えできるようになっていて、自分のアバターにお気に入りの衣装をコーディネイトして楽しむ趣味の人たちがいる。――いわゆる『アバ廃人』と呼ばれるマニアで、月に何万円もアバターを買っている人たちだ。
 まあ、よくお金が続くなぁーと感心してしまう。

「コンビニでウエブマネー買ったから、今、番号教える」
「良かったぁー、これでまたアバターを買えるわ」
「ほどほどにしなよ」
「だってぇー、アバター命だもん!」
「もう死んでるのに……」
「――それを言うか? 失礼な奴めぇー」

 彼女のハンドルネームはナッティー、実はネットの中に棲んでいる幽霊なんだ。……まさか、信じられない?うん、誰だってそう思うよね。
 だけど、最近の幽霊はお墓になんか棲んじゃいないのさ。いろんな世界と繋がる異次元空間ともいえる、このネットこそが幽霊たちの隠れ家なんだ。アバターやアイコンでしか存在を示せないネットでは、リアルの肉体を失くした彼らが、幽霊だと悟られずに人間たちとコミュニケーションできる唯一の場所なのだ。
 君も気を付けなよ、ネット仲間の何人かに、もしかしたら幽霊が紛れ込んでいるかも知れないぜ。あははっ

 ――ナッティーも、そんな幽霊たちのひとりなんだ。
 彼女に訊いたところ、一年ほど前にパソコンをやっている最中に心臓発作で亡くなったらしい。
 ナッティーは超アバター好きの『アバ廃人』で、アイテムバックにはレアアバターをかなりコレクションしているらしく、亡くなった日は欲しかったレアアバターをゲットできて歓喜し過ぎて興奮したために発作を起こしたらしい。
 元々、心臓が悪いナッティーは自宅で療養生活だった。――あまり外出できないので、パソコンべったりの『ネット依存症』になったらしく……そのせいか、アバターへの執着とネット依存症で死んでも成仏できず、ネット幽霊としてSNSに棲み着いてしまったのだ。
 俗名は菜摘(なつみ)、享年十九歳。それがナッティーの生涯だった――。

 しかし、ネット幽霊になってしまったものの、SNSの課金システムは厳しい。
 自縛霊のナッティーはネットの外へ出られないので、お金を自分でチャージすることができない、定期的に課金しないとSNSのいろんなサービスを受けられなくなってしまう。
 そんなナッティーのために、この僕はウエブマネーを買って、時々チャージしてあげてるってわけさ。





   第二章 僕と秋生について

 さて、前置きが長くなったが――。
 僕の名前は福山翼(ふくやま つばさ)都立に通う高校三年生だ。サッカー好きの親父に『ツバサ』とキャプテン翼にちなんだ名前を付けられたが、実は小学校からずっと剣道一筋なんだ。
 このネット幽霊ナッティーとは、半年前に起きた悲しい事件をきっかけに知り合いになった。――僕らはある人を死に至らしめた犯人をネットの世界で探しているのだ。

 その事件とは、僕の幼馴染で親友だった、村井秋生(むらい あきお)の自殺だ。
 僕と秋生は同じマンションに住み、小・中・高校とずっと同じだった。看護師をしている母親とふたり暮らしの秋生は。よく僕の家に泊まりにきて、ご飯を食べて風呂まで一緒に入った。まさに家族同然の付き合いだった。
 気が優しくて繊細な秋生は人と争うことが嫌いで、ひとり静かに小説を読んでいるような奴で、棒きれ振りまわして暴れてる剣道少年の僕とは大違いだった。――だけど僕らは兄弟みたいに仲が良く、自分にない部分をお互いおぎあい認め合っていたんだ。
 高校生になって勉強や塾、部活などで前ほど遊べなくなったけど、スカイプやメールなどで連絡は取り合っていた。

 秋生の様子がオカシイなぁーと感じたのは、あいつが自殺する前日だった。
 十時過ぎに塾が終わって、僕は自転車で帰宅中、自宅のあるマンションの前にきたら、建物敷地内の児童公園の暗がりに誰かがうずくまっていた。ホームレスかと思って通り過ぎようとしたら、「ツバサ……」と呟くような声が聴こえてきたのだ。
 振り返って見たら、それが秋生だった。確か、一週間前から学校を休んでいると秋生のクラスの剣道部員から話を聞いていたが、近所ということもあって、つい見舞いにいくのが遅れてしまった。――言い訳すれば、剣道部の試合と塾の模擬試験が重なって忙しかったのだが……。
 心配しながらも後回しにしていたら、まさかこんな所で秋生と会うとは思わなかった。
 ――だが、いつもの秋生と様子が違う。僕らは会うとジョークを二言三言、飛ばして笑い合うのだが……その日の秋生は蒼白い顔をして元気がなかった。
 塾帰りの僕は腹が減っていたので、近所のラーメン屋にいかないかと秋生を誘ったら付いてきた。一緒にラーメンを注文したが、ほとんど秋生は食べなかった。口数も少なく、時々しゃべるとドモッたり、瞼がピクピク痙攣して……なにか、神経性の疾患ではないかと思われた。

「秋生、何かあったのか? いつものおまえらしくないぞ」
 目の前の秋生の様子が心配で箸を置いて僕は訊ねた。
「……べつに……」
 曖昧な顔で秋生が薄く笑う。
「悩みごとでもあるんじゃないのか? 何かあるなら相談しろよ」
「どうしようもない……」
「えっ?」
「もう……限界だ……」
「なにが?」
「……ジ・エンド」
「秋生?」
 その後、秋生は何を聞いてもいっさいしゃべらなかった。
 その日は遅くなったので自宅のあるマンションのエレベーターの前で別れた。僕の家は七階で、秋生は最上階の十五階なのだ。

 それが――秋生を見た最後の姿だった。
 
 朝方、ベッドの枕もとに置いた携帯が鳴った。着信音がメールだったので後で読もうと開かないで、そのままにして……眠ってしまった。
 遅刻ギリギリまで寝ていた僕は、慌てて支度をするとカロリーメイトとポカリを持って、マンションのエレベーターに飛び乗った。そこで気が付いて、早朝にきたメールを僕は開いてみた。
 ――それは秋生からだった。


『 ツバサ、おまえに残したいものがある。
  これは僕の遺産だから

  ID:●●●●●●●
  パスワード:*******

  このHPを守ってくれ!

  ツバサ、ごめんな、
  おまえはいい奴だった、ありがとう

  もう限界なんだ 疲れたから
  今から飛ぶよ

  さよなら……

               秋生   』


 こんな冗談とも取れない、意味不明のメールがAm5:10に携帯に送られていたのだ。
 僕は悪い冗談かと……首を捻りながらも、昨夜の秋生の様子が尋常ではなかったので、俄かに心配になってきた。やがてエレベーターが階下に着いた、エントランスの自動ドアが開いて僕が見たものは……。
 救急車とパトカーが数台、それを囲むように野次馬の群れ、それらの眼は真っ赤な血に染まったマンション前の路上と白いシートに包まれたある物にそそがれていた。
 ――そう言えば、メールの着信音の後にドーンと何か落ちたような音がしたが、あれは……もしかして……秋生、おまえだったのか!?

 僕は言葉もなく、その場に茫然と立ち尽くしていた――。




 
   第三章 秋生の死

 秋生が死んだ! あの白いシートの中身は秋生だったんだ。
 僕にメールを送った直後に、秋生はマンションの十五階から飛び降りた。遺体は大きな物音に驚いた、犬の散歩中の老人が発見通報したのだ。
 当初、遺体の損傷が激しく身元が分からなかったが、十五階の階段の踊り場に携帯電話が置かれていたので判明したらしい。秋生のお母さんは看護師で、その日は夜勤で不在だったが警察から連絡を受けて、遺体の『身元確認』をしたらしい。

 飛び降り自殺は高い所から落下するので重力がかかって、もの凄い重さになって落ちていく――だから地面に激突すると身体中の骨がバラバラに砕けてしまう。まるで熟したトマトを思いっきり壁に投げつけたようなもので、グチャグチャになって人間の原型を留めていないのだ。
 マンションのエントランスに、僕が立っていたときは、秋生の遺体を運搬する車を待っていた時だった。すでに死亡が確定している人間を救急車は乗せてくれない。

 ――お葬式の日、どうしても秋生の死が受け入れられず、僕は悲しむことさえできなかった。まるで夢の中の出来事のようで――傍観者のように眺めていた。秋生のお母さんも茫然として、心ここに在らずという顔だった。しかも、この数日の間に十歳は老け込んで見える。
 小さい頃「秋生はひとりっ子だから……」と言って、僕も一緒に遊園地や映画館、プールにもよく連れて行ってくれた。男っぽくて、さっぱりした気質の人で、離婚して女手ひとつで秋生を育てていた。看護師をしているので勤務時間が不規則だったが、うちの母親が秋生の面倒をよく見ていたので、そのことをいつも感謝してくれていた。
 僕の下には妹と弟がいて、三人兄弟だったし、ひとりくらい増えても手間はかからないと母は笑っていた。実際、秋生はとても大人しい子どもだった。
 おばさんにも「秋生は内気で弱虫だから、イジメられたらツバサくんが助けてあげてね」と僕はいつも頼まれていた。なのに、それなのに……僕は秋生が苦しんでいるときに知らん振り、何も力になってやれなかった。――僕は最低だ、薄情な人間だ! 壁に頭を打ちつけたいほど、激しく後悔していた。

 おばさんが泣いた!
 火葬場で骨になった秋生の遺体見たとき、おばさんが大きな声で泣き出した。
 僕も骨になった秋生を見た瞬間、堪えていたものがプツンと切れて、堰を切ったように涙が溢れた、俯いた僕の黒いローファの上に涙の雫がポタポタと落ちた。
《秋生のバカ野郎! みんなをこんなに悲しませやがって、なんで死んだんだ? どうして自殺なんか……》心の中で叫びながら僕は泣いた。

 ふと気付いたら、僕と同じ学生服を着ている人がいる。彼も後ろを向いて壁に向かって肩を小刻みに震わせている。秋生の死を悲しんで泣いているのだろうか?
 顔はよく見えないが、確か三年の『深野』という人で、秋生が所属している文芸部の部長で生徒会の会長もしている。
 成績が良くて、人当たりの良い深野さんは学校では先生たちの信頼が厚く、女生徒にも人気がある。秋生とは創作者仲間だと聞いていた。
 秋生の死を悲しむ人はここにも居るのに、どうして僕らを残して逝ったんだ! 怒りにも似た悲しみで涙が止まらない。


   第四章 ナッティーとの出会い

 幼馴染の親友を喪った僕は、大きなショックから立ち直れなくなっていた。
 あの時もっと秋生の話を聞いてやれば良かった、一週間も学校を休んでいる間に、なぜ訪ねてやらなかったんだろう? どうして秋生の心の変化に気づいてやれなかったのか? 僕は親友だと言いながら、秋生のことに無関心で冷たい奴だった。秋生、ゴメンな、僕が不甲斐ないばかりに……。
 そんな風に自分を責めて、責めて……僕は勉強も部活も手に着かなくなってしまった。
 秋生に教えられたホームページは、なんだか怖くて開くことができなかった。悶々と苦しんでひと月ほど経った僕は、昔、秋生と一緒にゲームして遊んだSNSを開いた。ゲームをして気分を紛らわせようと思って――。

 ふと、秋生のマイページを見にいこうと思った。主(あるじ)はもういないが誰がきているのかと気になったのだ。
 秋生の伝言板には『ナッティー』という女の子のアバターがきていて、毎日々、秋生に挨拶を書き込んでいた。ひと月以上も秋生はログインしていないのに、それでも毎日伝言板にきていたし、とても心配している様子だった。たぶんミニメールもたくさん送っているのだろう。
 ……こんなに心配させて、可哀相に……ツライけれど秋生が死んだ事実を告げた方がよいと判断して、ナッティーのマイページにいってみることにした。

 とってもチャーミングな女の子のアバターだった。
 このSNSはゲームとアバターに人気があって、アバターに着せ替えする服や背景のアイテムに高価な値段が付いて、ネットオークションでも取引されていると、以前、秋生から聞いていたが、まさに彼女のアバターはレアモノで高そうだった。
 ゲームのアイコンもたくさんゲットしているので、アバターだけではなくゲームもかなり遣り込んでいそうな雰囲気だった。それらのアイコンの中には秋生がよく遊んでいたゲームのもあった。――もしかしたら、秋生のゲーム仲間だったのかな?

 まさか、秋生の死を伝言板に書き込むことはできない。僕は彼女にミニメールを送ることにした。


『  はじめまして、ツバサと言います。

   僕は秋生のリアルの友人ですが、
   彼は不幸な事故でひと月前に亡くなりました。

   今まで、秋生にありがとう。       

                ツバサ   』


 何を書けばよいか分からず……簡素だが、そういう文面で、ナッティーにSNSからミニメールを送った。

 翌日、僕のマイページにナッティーからミニメールの返信がきていた。


 『 こんにちは。わたしナッティーです。

   秋生くんとはよくゲームをして遊びました。
   死んでしまったなんて信じられないわ。
   詳しい事情を聞かせて欲しいので、
   チャット部屋にきてください。

   チャット部屋 38番
   入室パスワード****

   午後7時〜12時まで待っています。

                  ナッティー  』


 いきなり、チャットで話を聞かせて欲しいという、ナッティーの申し出にいささか戸惑ったが、一ヶ月以上も毎日秋生の安否を確かめにきていた彼女の心情を思うと、やはり、きちんと事実を告げるべきだと僕は思った。
 もしかしたら、秋生の自殺の理由を何か知っているかもしれない。――そういう期待も無きにしも非ず。

 入室パスワードを打ちこんで、僕はナッティーが待っているというチャット部屋に入っていった。そこはバーチャルだが、小部屋風でお互いのアバターが表示される。
 鍵をかければ(入室パスワード設定)誰にも邪魔されず、ふたりきりでゆっくり話ができる。ここは、ネットのカップルたちがイチャイチャするのによく使っている部屋なのだ。
 チャット部屋に入ったら、ナッティーのアバターは表示されていたが、本人は別の場所にいるようだった。

「こんばんは」
 チャットに書き込んだ。
 ――しばらく経っても反応がない。三十分ほど待って、もう部屋から出ようかと思ったら、やっとナッティーから返事がきた。
「待たせてゴメンね!」
「こんばんは」
 もう一度、同じ挨拶を打ち込んだ。
「あのね、アバターの交換所にいっていたから、すぐに気がつかなくて……ゴメンなさい」
 アバター交換所というのは、自分の持っているアバターアイテムと交換相手の持っているアバターがお互いに気にいったら、交換しあう場所なのだ。『アバ廃人』たちはここでレアアバターなどを手に入れると聞いている。
「いいよ、僕も他のゲームしながら待っていたから」
 どうでもいいようなパズルゲームを僕も別ウインドウでやっていた。
「今日はきてくれて、ありがとう」
 キュートなアバターのナッティーがそう打ち込んできた。
「僕は秋生と幼馴染で親友だった。だから君に秋生のことをちゃんと話さないといけないと思った」
「秋生くん、いつ亡くなったの?」
「ひと月ほど前」
「死因は?」
「自殺」
 僕がそう打ち込んだら、しばらくナッティーから反応がなくなった。
 たぶん、パソコンの向うでショックを受けたのだろう。――その気持ちは分かる。五、六分経って、十分以上過ぎて……もしや落ちてしまったのか?

「そうなるんじゃないかと心配していました」

 やっと返ってきた返答が、あまりに意外だったから僕は驚いてしまった。彼女は何か知っているのかもしれない。
「知っているんですか? 秋生の自殺の原因を……」
「ええ……」
 そう言うとナッティーはチャットの画面にURLを書き込んだ。
「このサイトにいってください」
「これは、なあに?」
「そこへいって、読んでくれれば分かります」
「うん……」

 僕はウィンドウをもう一つ開き、そのURLをドラックしてコピーすると検索に貼り付けた。

 ――そして、パソコン画面に別のサイトが開いた。



   第五章 3ちゃんネルの掲示板

 僕はそのサイトを開いて、見た瞬間、我が目を疑った。
 そこに書かれていたことは、とても信じられないことばかりだった!


 3ちゃんネル ■ 掲示板 ■

【 村井秋生 】∀゜)彡<こいつの、悪事をみんなで語ろう!!

1 :名無しの女子高生?:2011/09/18(土) 08:33:05.42
都立OO高校3年の【 村井秋生 】に、あたし体育準備室でむりやりキスされた!
あいつ、カッターナイフで脅して胸とか触ったんだ。その後も、理科室や美術準備室で何度も触られた。
もうイヤーだよ! こいつキモイから何とかしてよ! ( ゚Д゚)<氏ね!

みんなで【 村井秋生 】を血祭りにあげちゃってよ!!

2 :名無しの女子高生?:2011/09/18(土) 09:12:02.28
【 村井秋生 】こいつ知ってるよ。
文芸部の奴でしょう。大人しい顔してこんな変態野郎だったなんて・・・
最低!(ノ ̄皿 ̄)ノウワアァァァアア―!┫:・‘.::

3:名無しの女子高生?:2011/09/18(土) 10:10:01.12
あたしのクラブの後輩の子も【 村井秋生 】に付き合ってくれって
しつこく、ストーカーされたんだよ。
エロいメールとかいっぱい送ってきてマジ迷惑してたわw

4:名無しの女子高生?:2011/09/18(土) 10:12:45.08
へぇーそんなに女に餓えてたんだぁーw
ものすげえキモい。

5:名無しの女子高生?:2011/09/18(土) 10:13:11.28
警察に通報しましたw

6:名無しの女子高生?:2011/09/18(土) 10:23:39.05
アタチ【 村井秋生 】に部室においてた下着盗まれたもん(泣)
女子トイレ盗撮してるって噂もあるよん(笑)

7:名無しの女子高生?:2011/09/18(土) 10:32:07.08
そいつのあそこをチン切ってやれいw

8:名無しの女子高生?:2011/09/18(土) 11:03:36.45
【 村井秋生 】変態野郎ww
みんな大爆笑だな、こいつの正体がばれてwww
ぶははははははははははは。

9:名無しの女子高生?:2011/09/18(土) 11:09:47.39
【 村井秋生 】ってさぁー
小説かいてるとかきいたけど
あんなのぜんぶ盗作なんだぜぇー

ようするに【 村井秋生 】って奴は
ロクな人間がじゃねぇよ、屑野郎なんだ!
こんな奴はいてもいなくても同じだよな。
生きてても死んでても同じってこと。( ゚Д゚)<氏ね!
m9(^Д^)9mプギャー!!

10:名無しの女子高生?:2011/09/18(土) 11:43:05.41
これが本当だったら、学校と警察に通報して【 村井秋生 】を捕まえてもらわないと、女子は安心して学校にも行けません。
明日、生活指導の先生にこの掲示板のことで相談します。
みんなで、女性の敵【 村井秋生 】に天罰を与えましょう!


 僕は怒りで身体がワナワナと震えていた。
 秋生を誹謗中傷する掲示板が長々と二百スレくらいまで書かれてあった。どれも事実無根で僕の知っている秋生はこんな卑劣漢では断じてない。
 許せない! いったい誰がこんなデマ掲示板を作って秋生を嵌めたんだ!? 
 強烈な怒りで腹わたが煮えくりかえるようだった――。

「――読んだ?」
 頭に血がのぼった僕は、ナッティーとのチャットを忘れていた。
「こんなのデマだ! 秋生はやってない!!」
「分かってるよ。秋生くんはそんな子じゃないもの」
「……ネットでしか知らないはずなのに、どうして君が断言できるんだ?」
 自信たっぷりにそういったナッティーの言葉に僕は疑念をもった。
「秋生くんはネットでしか知らないけど、わたしには見えるんだ」
「なにが?」
「秋生くんのオーラが見えるの」
「オーラ?」
「そう、秋生くんの身体からはきれいな水色の優しいオーラが出ていたもの」
「そんなのどうやって見るんだ?」
「パソコンの中から、あなたたちを見ているのよ」
「はあ? それってどういうこと?」
「だって、ナッティーはネットの世界に棲んでいるんだもん」
「君って……いったい何者なんだ?」
 ナッティーの不思議な言葉に興味が湧いてきた。





   第六章 ネット幽霊ナッティー

「ナッティーは幽霊なのよ」
 いきなり、チャットではなく肉声がパソコンから聴こえてきた。
「ええっー?」
 驚いて、僕は部屋の中をキョロキョロ見回した。
「もう現世には肉体がないの、魂だけ、このネットの中に閉じ込められた」
 その後、ナッティーは自分が死んだ経緯とアバターやネット依存症のせいで成仏できなかったと語った。
「君は自縛霊みたいなもの? パソコンの中から僕らを見たり、話しかけたりしているんだね」
「そうよ。ネットの中からパソコンの前にいるツバサくんが見えるよ」
「じゃあ、僕のオーラはなに色さ?」
「今は、オレンジ色かな? 正義感が強くて、元気な人。秋生くんのことで凄く怒ってるから赤みが強くなっているわ」
「たしかに頭に血がのぼってるけど……」
「嘘が嫌いな正直者ね。秋生くんとの深い友情を感じる」
「そうかな。だけど……こんなデマを流した奴らを絶対に許せない!」

 ――誰にでも優しい秋生は争いごとが苦手だった。
 人を傷つけたことがないから、自分自身、傷つくことに免疫性がなかった。3ちゃんネルの掲示版の「誹謗中傷」「悪口雑言」「からかい」は確実に秋生の精神を傷つけ、崩壊させた。これらのストレスに耐えられず、秋生は欝状態になって自殺したのだと思われる。
 なんてことだ! あいつは繊細な神経の持ち主だった。唯一の親友をこんなデマから守ってやれなかった。

「こいつら……許せない!」
 3ちゃんネルの掲示板を見ながら、こんなデマを流した奴らを絶対に探し出してやろうと僕は決心した。
「ひと月ほど前から3ちゃんネルに、こんな掲示板が挙がって秋生くんは晒されていたのよ。それだけじゃない、パソコンのメールには大量のエロ系サイトのメールが送られてくるし、見てもいないエロ動画の高額請求書まで送られてきて、秋生くんのマイページのメールボックスにも悪口を書いたミニメールが毎日送られてきていたのよ」
「ひどい……」
 これはネットパッシング、ネットストーカーのレベルだ。
 執拗なまでの誹謗中傷は、秋生に対する恨みがあるとしか思えない。おそらく首謀者がいるに違いない。
「一番応えたのは、この掲示板を読んでいたクラスの女の子たちにキモイとか変態とか言われて、すっごく傷ついてた。その頃から学校にも行かなくなってパソコンも開かなくなってしまったから、秋生くんとの連絡がつかなくて凄く心配してたの」
 こんな陰湿なイジメにあっていたなんて知らなかった。親友の僕にも打ち明けられず、秋生は一人で苦しんでいたんだ。

「いったい誰なんだ!? 誰が秋生をここまで追い詰めたんだ」
「ナッティーも犯人を探しているけど……これをやっている奴はただの人間ではないみたいなの。3ちゃんネルの掲示板は、秋生くんが何度も運営側に「削除依頼」したけど、削除してくれなかったの。そのせいでどんどん落ち込んでいく秋生くんが可哀相で見てられないから、代わりにナッティーが削除しようとしたんだけど……不思議なことに消せなかった。――あの掲示板には、なにか結界のようなものが貼られて、ドス黒い瘴気(しょうき)が漂っているわ」
「ドス黒い瘴気って……?」
「ものすご悪意と憎悪を感じるの。あの掲示板を挙げた人間には悪霊がとり憑れているかもしれない」
 ナッティーの言葉に僕は動揺したが……たとえ相手が誰だろうと秋生の無念を晴らしたい。その憑かれている人物を探し出して、二度とこんなことをしないように懲らしめなくてはいけない。――僕はその意思を強く固めていた。

「ツバサくんは犯人を探す気ね?」
「ああ、僕は何があってもこんなことをした犯人を見つけ出して、二度とこんな卑劣なことをしないように懲らしめてやりたいんだ」
「お願い! ナッティーにも手伝わせて!」
「えっ、いいのかい?」
「ナッティーは幽霊だからネットの中なら、どこでも見れるのよ」
「それは心強いなぁー」
「――秋生くんを成仏させてあげたいの。きっと彼は亡くなった場所で悲しんでいると思うわ。犯人を見つけて安心させてあげようよ」
「ありがとう!」
「秋生くんはとっても良い子だったから……。よく一緒にロールプレイングゲームをしてたけど、あたしが敵に殺られそうになると、いつも身代わりになってくれたの。小説の才能も凄くあったのに……死んじゃうなんて……惜しいよ」
「秋生は追い詰められて、自分の未来を閉じてしまった」
「あたし、秋生くんを自殺させた犯人を絶対に許さない!」
「ナッティー……」
「秋生くんと二度と逢えないなんて、悲しいよ……」
 僕のパソコンの画面に雫が流れた。触ってみると生温かい……これは、きっとナッティーの涙なんだね。
「一緒に秋生の無念を晴らそう」
「やっと、生甲斐が見つかったわ!」
「死んでから生甲斐って……? あはははっ」
「もう! うっさいよぉー」

 そして、ナッティーと僕は「秋生を自殺に追い込んだ犯人」を探すことになった――。
 

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