平行世界の交わる時



結局俺は留学していた双子の兄として沢田家の一員として置いてもらえることになった。
名前は取り敢えず沢田家綱らしい――家光の息子で綱吉の兄ならそれで充分だろというのはこちらの世界のリボーンの言だった。イタリア人の癖に日本の歴史を知ってる博識さが厭味な野郎だ――。
因みに綱吉の母である奈々に俺自ら説明したら異次元の事もあっさりと納得した。
俺の母である奈々でも同じ反応だろうけれど相変わらず天然な人だとある意味感心する。
そんなこんなで、いつのまにか俺には戸籍が用意されていた――おそらくリボーンを通してボンゴレファミリーが用意したものだろう。勿論違法だけれどそんなの気にしない――。
さて。ここで問題が一つ。
戸籍があるという事は13歳の俺は必然的に中学校に通わなければならないということだ。
これもまたリボーンが用意したのか、既に並盛中への転入届は出ているらしく。
急な話だが明日には俺は並盛中生らしい。
ということは。

「ねぇ、綱吉〜、どうする〜?」

椅子に逆向きに座り背を抱きながら、あぐらをかいてずっとゲームをしている綱吉に話しかける。
いつもやっている落ちものゲーだろう。
画面に集中して連鎖を組んでいる。
あー、今の逆にした方が連鎖が一つ増えたのに。
それにしてもすごい集中力だ。
どうやら俺の声は聞こえていないらしい。
もしくはシカト。
どうしようかと少し考えた後、俺は椅子から立ち上がる。
椅子の背がギシッと軋んだ音を立てた。
そろりそろりと忍び足で近づく。
声も聞こえないほどの集中だ、まず気付かれないだろうけれどそれは気分の問題。
自分と同じ体なら、急所も同じかな、なんて考えながら。
敏感そうに見える耳孔に息を吹き込む。

「ひぁっ!」

跳ねた身体と甲高く上がった声は予想以上の反応で。
見るとコントローラーは手放され、画面ではラスボスだろう緑の髪の男が高笑いをしていた。
そして反応した本人は。
紅潮した顔に生理的な反応だろう潤んだ瞳。
耳を押さえ驚いたように俺を見る目は顔の角度のせいで見事に上目遣い。
正直に言おう。
非常に色っぽい。
そんな事を思っていたら余りにも凝視しすぎていたのか。

「……何だよ……?」

首を少し横に倒し眉間に一筋の皺を寄せ綱吉は口を開く。
同時に何が気になったのか、綱吉は唇をペロリと舐める。
唾液に塗れて艶めいた唇とチラリと見えた赤い舌に、俺は完璧に堕ちた。
綱吉の腕を引いて抱き寄せ、そっと口付ける。
混乱しているのか、抵抗する様子は無い。
何度か柔らかい唇を啄み、ペロリと舐めた後リップ音を響かせながら離れる。
さてはて、どんな顔をしているだろう、そんな事を考えながらキスの間閉じていた目を開くと。
意外にも初心だったのか、真っ赤な顔で俺の方を凝視していた。
眼差しに篭った心情は……信じられないっ!ってとこだろうか。
ショック状態から抜け出したら直ぐにでも怒り出しそうな感じだ。
と言うことで。
先手必勝、怒られる前に話題替え。
言い換えればやり逃げ――と言っても突っ込んだりはしてない。出来ればしたいけれど、なんて考えてることがばれたら俺殺されるかな?――。

「で、どうしたらいいと思う?」

キスする前に話そうとしていた話題をまた持ち出してみる。
勿論何事も無かったかのように。

「〜〜〜っ!何をだよっ!」

言いたくても言えない、逆切れのような声音についつい苦笑。
まぁちょっとは真剣な話をしますか。

「だから、俺明日から学校行くじゃん?その時俺もダメツナ被ってた方がいい?それとも出来がいい兄貴と出来が悪い弟演出してみる?って話」

「……別にそんなのどっちでもいいんじゃない?どうせ綱吉、じゃなくて家綱か、家綱は俺のことがばれるようなへまなんてしないんでしょ?」

酷く投げやりに返された答え。
確かにそうだけれど。

「んじゃ普通にやってるよ。適度に手は抜くけれどね」

その方が楽しそうだし、なんて付け加えたら俺は楽しくないなんてボソリと返って来て更に苦笑。
ついつい手を出しちゃった俺も悪いかもしれないけれど、誘うような仕草を天然でしちゃう綱吉も結構悪いと思うんだけれどなぁ、なんて。
うん、やっぱり言っても聞いて貰えないよね。























あきゅろす。
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