全く以て笑える状況じゃない。
なんだってこんな事になるのか。
紫煙が晴れた先、そこにいたのは、

俺と全く同じ顔をした、平行世界の同一存在だった。




平行世界の交わる時




驚愕に見開かれた瞳。
琥珀色のそれも、ふわふわと跳ねた髪も、全てにおいて見た事があるどころか普段鏡の中に出て来る物と同じで。
や、なんて挨拶をしてみた所で、固まったまま返ってこない答え。
数瞬後響いた驚愕に満ちた叫び声は、大きすぎて耳を塞いでおけば良かったと後悔したくなるようなものだった。


「何これ信じられないどうなってるんだよお前誰だよ何したんだよねぇこれ現実かよあぁもう寧ろ俺誰だよ」

叫び声は鎮まったが、それでも混乱しているらしい全く同じ顔の彼は、一息に言い切った。
素晴らしい肺活量だと思う。
それとは対照的にかなり落ち着いている俺。
ん?少しは慌てろって?
二人とも慌ててちゃ話し進まないじゃん。
まぁ取り敢えず。

「落ち着けよー、そんなに慌てたって現状変わんないって」

なんて正論を投げかけてみる。
見かけだけならただのドッペルなのに性格は結構違うらしい。
そんな事を思っていたらはぁ、と深い溜息を吐かれた。
落ち着いたらしい、と言うより現実逃避に見えるのは彼が俺から目を逸らして何処か遠い所を見ているから。
おーい、なんて言いながら彼の目の前に手を翳してみたら苛ついたように睨まれて。
俺、そんな悪い事したかな……?
なんて思ったらまた溜息を吐かれた。

「……で、信じたくないから一応聞いておくけれど……お前誰……?」

本当に諦めたのだろう、疲れと呆れが交る声音で言う彼ににこりと笑って俺は言った。

「初めまして、この世界の沢田綱吉。俺は別の世界の沢田綱吉だよ」

「うわぁやっぱりか……ダメツナじゃないから別人じゃないかってほんのちょっとでも期待してたんだけれどなぁ……」

期待だなんて言葉、久々に聞いた場面がこんなところだなんて、と俺は口の端を上げた。
笑えているのかなんてわからないが、まぁいい。
そんな事より。

「諦めて受け入れろよ、この猫被り」

何時までも仮面を被られっ放しなんて虫唾が走る。
他の誰がわからなくても、俺だからわかる演技。
流石は同一存在と言うべきか、それともボンゴレの血に宿る超直感か。
言った瞬間それまでの呆れたような表情がスッと消える。
瞳に宿された色は、深い絶望。
被っていた仮面は俺が元居た世界で被っていたものと殆ど同じだろう、そこに至るまでの経緯はしかし全く逆だったらしい。
『対極』という言葉が似合うのだろうと、そう思った。
























あきゅろす。
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