・ずっと触れたかった (スクアーロ×山本)
あんたの背中はいつも遠くて、近づこうと手を伸ばしても決してその距離は縮まらない。
いつもオレが見ているのはあんたの背中ばかりで、そう、あんたの視界の先には、いつもXANXUSがいた。
***
「スクアーロ、久しぶりだな」
ツナの命で日本に長く滞在していたオレは、久しぶりにイタリアへと帰国することになった。日本を離れて数年、すっかりオレのホームグランドはイタリアになっていて、だけどそれを懐かしいと思っても、決して寂しいとは思っていない。オレはイタリアに発つ時、それまでの過去、経歴、生きた証全てを捨てた。その覚悟がなくて、イタリアに来る資格はないと心のどこかで直感していたからだ。だからこそ今回の日本への仕事も、帰国ではなく仕事だった。ここにはもう何もない。戻る場所も、帰る場所も。
帰国してボンゴレの屋敷へと報告に来たオレが、一番最初に見たものはスクアーロの後ろ姿だった。いつも油断など見せないスクアーロを気安く背中に触れようとすると間違いなく刀の餌食になる。少し離れたところから声をかけると、スクアーロは変わらない面倒くさそうな声とともに振り返った。
「やあっと帰ったかあ、くそガキがあ」
口は悪いが嬉しそうに歪められた口元を見て、オレも久しぶりの再会に嬉しくなる。
「スクアーロも報告か?ツナの所に行くんだろう?」
「ああ?そんなことはどうでも良い。それより腕落ちてねえだろうなあ」
「はは、なんなら確かめてみるか?」
「上等だあ、どこからでもかかってこい!!」
いつもスクアーロと会うとこれだ。そしてそれはお互い容赦などできなくて、血を見ないことはまずありえないくらい激しい戦いになってしまう。オレの師匠は親父だけど、スクアーロはオレの先生なのだ。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・どうよ、スクアーロ・・・」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・・まだまだ甘いぞ、山本おおお!!!」
いつもお互いが動けなくなるまでその戦いは続き、だけど今日は、一本の電話が突然この戦いを止めた。
「ああ?!そんなこと知るかああ!!」
スクアーロは自分の携帯に向かって不機嫌に叫んでいる。おそらく電話の相手はXANXUSだろう。戦いを中断してまで電話に出る相手などその他には考えられない。
「くそボスがあ!!肉に虫が止まってこんなの食えるかって大騒ぎ起こしやがった!!おい、山本おお!この勝負は一旦おあずけだあ、次に会った時には塵にしてやるう。じゃあな!!」
勢いよく捲くし立て足早とスクアーロは去ってしまい、オレは一声もかける暇なくただその背中を眺めるしかできない。
「相変わらずな・・・スクアーロ」
その背中に、オレの腕が届いたことはない。いつもスクアーロはオレの前に立っていて、そして前に立つことを許さなかった。
だけどオレはずっと触れたかった。その背中に触れ、そしてスクアーロの前に立つことができたら、オレ達の関係は何か変わるだろうか。
スクアーロの視界に、オレはただ入りたい―――――――
THE END
あとがき
未来です。スクアーロ×山本とありますが、私の中ではスクアーロ+山本的な感じですね。
この二人の間柄はもう恋愛だとかそういうんじゃないんですよね。でもお互いのことを一番分かり合ってるというか・・・
だからこそ恋愛関係に発展しない・・・みたいな。
あっ、でも体の関係が全くないかと言われるとそれもあれな話です。
私の中のスク山はシャマ山前提であって欲しいなとそんな事を思いながら書きました。
山本はスクアーロと対等に立ちたいと思ってるんですよね。スクアーロは自分と対等かそれ以上の強さを持っていなければ相手にしないし、XANXUSが絶対なのは変わらない。山本の腕も評価はしているけど、自分の背中は預けない。
うーん、言いたいことが上手く言えない。伝わってるでしょうか・・・どきどき
としてもこの二人は私にとってとても書きやすい二人でした。結構愛しい二人です☆
お付き合いありがとうございました!
2009.10.19
椿
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