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【2周年記念(キョンユキ)】





「はぁ、はぁ、、」
やけに心臓の音が大きく聞こえて、呼吸が荒くなる。

まさか17にもなって、掃除用具箱の中で鬼に怯えることになろうとは。


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"部室棟内でかくれんぼをしよう"

いつもの放課後、唐突なアイディアはいつものことで、
その言いだしっぺのハルヒが鬼になったのはいうまでもない。


だが、


「最初に見つかった人は、今度の不思議探索の時に全員に奢り!!」



と鬼が高らかに宣言してしまったことで、この遊びは罰ゲームに早変わりした。


「あ、でも。女子は除外するわよ。」

「なんだその不公平!」

「キョンうるさい。あんたが有希やみくるちゃんに奢ってもらおうなんて、そうはいかないわ!」

お前に何のリスクも無いことは別にいいのかよ。

「異論は終わってから聞くわ。」



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理不尽極まりないルールと共に、かくれんぼはスタートした。


とはいえ、白熱するわけでもなく。

かくれんぼのルールを理解していなかった長門は、
部室で本を読んでいたところを発見。

朝比奈さんは廊下をウロウロしていたら発見されたようだ。


ここまでの時間、『約1分』

残るは、奢りルール適用者の男子2名だ。



古泉はスタートと同時に部室を出て行ったのが最後で、 どこに隠れたかはわからない。


さて俺はと、、、

SOS団部室の掃除用具箱の中だ。


普通なら部室の外に逃げるだろうが、裏をかいてみた。
ハルヒはさっきから部室以外を探しているから、一応成功したらしい。

しばらくして部室に引き返してきたハルヒは、息を切らしつつ、
先ほど捕まった朝比奈さんからお茶を受け取った。


「キョンのやつ、どこいったのかしら」

お前のすぐ近くにいるけどな。


「見付けたらギッタギタのメッタメタにしてあげるわ!」

鬼か。――あ、鬼だ。
命の危険を感じた。


掃除用具箱の中からも、一応外は見えるようになっていて、
ちょうど目線の高さに隙間が開いているのだ。
そこから確認できるのは、捕虜1号の長門だけで、
いつもの定位置で本を読んでいる長門は、もうかくれんぼのことなんて忘れているんだろう。


……ふむ。
ここまで、長門をじっと見る機会ってのもなかなか無いな。
時折ページをめくる手が動かないと、ただの置物にしか見えない。
無機質な瞳は、本に引き込まれている。


ピンチの時はいつも助けてくれて、あの小さな手に頼ってばかりな自分に苛立つときもあった。
長門が俺を助けるのは”観測対象の重要なキー”だからなのか。
情報統合思念体からの命令だけで動いているのか、そこにお前の意思はあるのか。
あるとすれば、お前が俺を助けてくれるのはなぜだ。


ふと、長門の顔が動いた。
無機質な瞳の対象は、掃除用具箱に向けられている。


「どうしたの有希?」

ハルヒの問いかけに長門は答えない。

「もしかして、誰か隠れてる?」

答えない。
だが視線だけはずっとこちらに向けられている。
何かを訴えかけるわけでもなく、ただ”見られていた”。


『キョン!みーつーけーたー!!』

何も考える間もなく、
ハルヒが猛ダッシュで掃除用具箱(俺)にドロップキックを食らわせた。

この鬼。



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罰ゲームは俺に決定。
もともと無茶苦茶な内容だったしな、まぁいいさ。
ちなみに、古泉はコンピ研にかくまってもらってたらしい。


でも、これだけは聞いておかなければならない。


「なぁ、長門。」


長門はページをめくる手をとめて、ゆっくり俺の顔を見上げた。

「俺がアレに隠れてるの、なんでわかったんだ?不思議な力でも使ったのか?」


俺に向けられていた視線を、また本に向けながら。

「わからない。」

他の団員には聞こえないような小さな声で、そう答えてくれた。






fin
てるてるぼうず







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