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今日はテスト最終日で、半日授業。
休み時間に「テストが終わったらパーッとカラオケでも行って遊ぶか!」って言う陽介の提案を、瀬多はカラオケは苦手だからと言う理由で断った。陽介は大層落ち込んでいたが、他の特捜隊メンバー(一人を除き)からOKを貰った為ご機嫌で帰って行った。
苦手…と言うか、多分ああやって騒ぐ場所は彼女が苦手なんじゃないかなと思って。案の定やっぱ苦手みたいで断っていた。
そんな彼女を家に呼んだ。



「おじゃまします」
「どうぞ」



ぺこりと丁寧に頭を下げ瀬多の後から家に上がる辺り、彼女の生真面目さから来るものなんだろう。



「飲み物用意するから座ってていいよ」
「えと…僕も手伝います」
「じゃあコタツ入れといてくれるかな」
「あ…はい、わかりました」



ちょっとその場で戸惑っていたが、「すみません、ではお先に」と声をかけて座敷に向かった。



「さて…」



この寒い冬に冷たい飲み物は流石に出せない。女の子は体を冷やすと良くないから。暖かい飲み物はないか、と考えていると、インスタントコーヒーが目に飛び込んできた。
これはよく叔父が「珈琲を入れるのは俺の役目だ」と、総司と菜々子に入れてくれたものだった。そんな叔父も菜々子も入院中で今は誰も入れてくれる事のない珈琲を手に取った。やかんに水を入れ沸くのを待つ。
その間カップに珈琲豆を入れようと思ったが、堂島家には3つしかカップがない。叔父のを使うのは何だか引けるので、自分と菜々子のカップを手に取り、豆を入れた。菜々子、お兄ちゃんがカップ使ったら怒るんだろうなぁ、と思いながら菜々子のカップは直斗に使って貰う事にした。
暫くするとあまり水の入れていないやかんは早々とピューっと音を立てた。



「直斗ー、砂糖と牛乳どうする?」
「砂糖と牛乳いっ………どちらもいりません」
「そう?凄いね。俺はブラックは苦くて飲めないんだ」



自分のカップだけに砂糖をスプーン2杯と牛乳を入れて持って行く。



「熱いから気をつけるんだよ」
「はい、ありがとうございます」



制服の袖でカップを包みふーふーと珈琲を冷ます姿が、(影と向き合ったとは言え背伸びをしてる)名探偵だって事を忘れそうになる。年相応…寧ろ実年齢より下の女の子に見えて物凄く可愛い。彼女を見て微笑んでいると目が合い、直斗の頬がほんのり赤くなる。



「あ、あの…僕の顔に何か?」
「ううん、直斗は可愛いなと思って」
「え?も、もうっ。またあなたはそうやって」
「ふふ、正直に言ったまでだよ」
「ぼ、僕はいいから…っ!珈琲冷めてしまいますよ」



慌てた表情で俯きカップに口をつけるが猫舌なんだろうか、彼女にはまだ熱かったらしく眉間に皺を寄せ、カップをテーブルに置いてまたふーふー吹き始めた。…ほんとに可愛い。



「今日は…」
「……?」
「今日は先輩も花村先輩にカラオケに誘われたんですよね?」
「あぁ、誘われたよ」
「何で行かなかったんですか?」
「カラオケはちょっと苦手だしね」
「へぇ、先輩に苦手事なんて珍しい。でも付き合いのいい先輩が断る程だ、他にも理由が…」
「流石名探偵、鋭いね。もう一つの理由は…なんだと思う?」
「…?体…はピンピンしてますし、こうして僕といる事は用があった訳でもない。他に理由は……」
「……大好きな人が来ないだろうと想定して、だよ」
「…!!!」



瀬多は、顔を真っ赤にして陸に上がった魚のように口をパクパクしている彼女を見て、クスクス笑った。



「みんなといる時間も楽しいけど、やっぱそこに直斗もいなきゃ寂しいから」
「す…すみません。僕のせいで…」
「いいんだよ。さっき言った"カラオケはちょっと苦手"ってのもほんとの事だし」
「そうですか…」



赤くなったり青くなったり。仲間になる前のポーカーフェイスが上手かった彼女からはこんな表情は滅多に見られなかった。きっと心を許してくれている証拠だろう。
直斗はもう火傷しない位には冷めただろう珈琲を飲み始めた。みるみるうちに眉間に皺が寄る。流石に今度は熱くて出る表情ではないと思う。



「………」
「もしかして…苦いの?」
「!!!」
「…やっぱそうか」
「……」
「ブラックが飲めれば大人だーとか思ってたりして」
「う…」
「大人だって甘くして飲む人もいるんだぞ。俺だって実際砂糖も牛乳も入れてるし。砂糖と牛乳持ってくるな」
「は、はい…すみません」



獣耳があったらきっとしゅーんと垂れ下がってるであろう頭をぽんぽん、と叩いて砂糖と牛乳を持ちに台所に向かう。



「はい、自分で好きなだけ入れるといいよ」
「…ありがとうございます」



スプーンを手にして砂糖を軽く一杯と牛乳を少し入れる。



「…絶対に足りないよね」



ボソッと後押ししてみると図星をついたのか「あぅっ」と呻き声を上げた。



「俺が見てると入れ辛い?」
「………ちょっと」
「じゃあ俺向こう向いてるな」



瀬多が視線を違う方に向いてるのを確認してまた砂糖に手を伸ばす。一杯…二杯…………三杯。そしてカップから零れない程度に牛乳をいっぱい注ぐ。



「あの…ありがとうございます。もう大丈夫です」



恥ずかしさからなのかカップを隠しながら言った。なんか親にいけないものでも隠す子供のようだ、なんて直斗に言ったらきっとふてくされて一日会話が終了しちゃうんだろうな、と苦笑しながら瀬多は砂糖と牛乳を戻しにまた台所に向かった。



「お手数おかけしました」
「いいよ、直斗の為なら。今度は大丈夫?」
「はい、美味しいです」



隠しながら飲んでるけど、今度は眉を寄せてはいない直斗を見てほっとした。



「で、どの位入れたの?」
「え…そ、そこ聞くんですか!?…そっぽ向いて貰った意味、なくなっちゃうじゃないですか」
「やっぱ大好きな直斗の事は些細な事でも知りたいな」
「もう、そう言う言い方やめて下さい。恥ずかしいから嫌です…って、あっ…!」



直斗は持っていたカップを奪われ、慌てて取り返そうと手を伸ばすが、そのカップの行方は予想外のテーブルの上に。中身を見られるのか、飲まれるのかの二択を考えていた直斗は頭に大きなクエッションマークを浮かべて首を傾げた。その瞬間、視界が暗くなる。



「ん…っんん……」



唇に違和感。ぬるっと口内に生暖かいものまで入って来た。視界には大好きな人の長い睫毛。
この距離といい、唇から伝わる生暖かい感触といい…自分は今、思い切りこの人にキスをされているのだと認知し、羞恥でギュッと目を瞑った。



「うん、甘い」



唇から温もりが離れ、怖ず怖ずと目を開けるとまだ鼻と鼻がぶつかりそうな距離で…吐息もかかる距離で。思わず視線を逸らす。



「ば…かですか…あなたは…っ」
「だって直斗が教えてくれそうになかったから」
「うぅ…初めて…だったんですけど」
「キスが?」
「………は、ぃ」
「ふふ、直斗のファーストキス、ゲット」
「もうっ!…んっ」



角度を変え更に深く舌を入れる。二人の口内からちゅくちゅくと唾液が混ざるいやらしい音が静かな居間に響き渡る。
逃げ腰な直斗の舌を絡み取り舌ごと口内を犯すと、気持ちよくなって来たのか直斗の目がとろんとして来た。



「ふ…ぅ…、んっ……ん…」
「ん…直斗の可愛いお口…凄く柔らかくて甘くて、とろけそう」
「や、だ…バカ!瀬多さんの……バカ」
「バカで結構。ふふ、直斗だって満更でもなさそうだったよ」
「〜〜〜…っ」



直斗の口の横に垂れたどちらのものとは言えない唾液を親指で拭い舐めた。直斗はと言えば、もう林檎なのかさくらんぼなのか…兎に角今まで見た中で最高に顔が真っ赤だ。目は睨んではいるが今にも零れ落ちそうな程に涙を溜めている。その表情に体が疼いてしまった瀬多は潔く直斗から離れた。



(ヤバい…何反応してるんだ俺の体!キスが初めてな子にエッチは急展開すぎだろ)



チラッと直斗を見ると、瞼を閉じて睫毛を揺らしている。細い指を唇に当て、もう片方の手は胸辺りをギュッと掴んでいて凄く魅力的な表情…。もう自分を誘ってるようにしか見えないが(←思い込み)、ここは自重しようと深呼吸した。



「…直斗」
「…っ」
「ごめんな、悪戯がすぎたな。直斗が本当に可愛くて……。好きな人を大切にしたいのに…ごめん」
「……ううん、謝らないで下さい。僕だって…」
「…?」
「わ、わたしだって…内心こんな形でも瀬多さんと……き、キス出来て………嬉しかった、ですから…」
「…っ直斗!!」



我慢の糸がプツッと切れ、猛獣の如くガバァと直斗を押し倒して胸のボタンに手をかければバチーンと頬を叩く音が堂島家に鳴り響いた。







とびきりいのをお願い
(なななな何するんですかぁ!!!)(直斗、俺…可愛い直斗を前に我慢)(して下さい!!!!!)









END
────────────
結局自重出来なかった番長(笑)
直斗は絶対に甘党だろうと言う管理人の妄想から来たお話でした。や、小説でも多少こんなネタありましたが(ぁ)
チョコで頭が活性化するらしいけどミルクチョコを持ち歩いてる辺り絶対に甘党だろ!いちいち可愛い子だよナオチャンは!!

因みに管理人はこれでもかって位、砂糖とミルクを入れる派でs←


━お題提供━
(C)確かに恋だった
http://85.xmbs.jp/utis/



2009.09.16


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