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今日は日曜日で学校も休み。それに…兄さんも黒の騎士団活動は今日はないみたいだから僕らは商店街に出て休みを満喫していた。


欲しいもの


二人でこうやって外で買い物なんて…兄さんの記憶が戻って初めてかもしれない。兄さん色々と忙しそうだったもんなぁ…

兄さんから「折角の休みだし、兄弟仲良く外にでも行かないか?」なんて言われたものだから嬉しくてずっと顔が緩みっぱなしだ。兄さんの視線を感じる時は頑張って引き締めてるつもり。だって、なんか僕ニヤニヤしてて変なコみたいじゃん。

はぁ…出来るならば兄さんと手を繋ぎたいなぁ…なんて思っちゃったり。でも男同士でおかしいよね。
そう考えながらずっと兄さんの手を見て歩いていると隣りで歩いている兄さんがくすっと笑った。
顔を上げ兄さんの方を向くと凄く優しげで綺麗な表情にドキッとした。


「なんだ、ロロ。手でも繋ぎたいのか?」


兄さんは直ぐに僕の考えてる事を当てちゃう。でもごめんね、兄さん。…恥ずかしいから嘘をつかせて。


「あはは、やだなぁ…違うよ」


僕は顔を左右にふり、なるべく心境を読まれないように平常心を保ち否定する。


「そうか」


兄さんはまた前を向き直った。なんかちょっと残念。まぁ仕方ないよね。
兄さんには気付かれないように小さく溜め息をついた。素直じゃないなぁ、僕って。でも素直になって僕が兄さんと手を繋ぎたいなんて言った所で兄さんがなんて思うか…。
何で僕は弟なんだろう。これが妹だったら…ナナリーだったら素直に言えるんだろうなぁ。

……?
気付いてみれば手に温かい感触。僕の手より冷たいものだけど、とても温かい何か。壊れ物を包み込むように優しく掴むそれは兄さんの手だった。


「…!!に、兄さん…」
「ん?何だ?」
「えっと…手…」
「あぁ、これか?」
「なんで…」
「俺が繋ぎたいから繋いだ。…嫌か?」


兄さんはとても優しい口調で言った。繋ぎたいから……本当は僕に気を使ってなんじゃないかと思ってしまう。でも嬉しい事には変わりはないからいっか…。


「…嫌、じゃない」


緊張して声が掠れる。兄さんに聞こえたかなぁ…
うわぁ…なんか顔が凄く熱くなって来た気がする。兄さんをそっと横目に此方を向いていない事を確認し、繋いでいない方の手で自分の頬を触った。
やっぱ熱い。こんな顔兄さんに見られたら…


「喉が乾いたな…。ちょっと喫茶店で休憩してもいいか?」
「へ…?あ、うん」


助かった。もしかして僕のこの状態に気付いてた…なんてないよね。そうだったら凄いよ、兄さん。
そして僕らは近くの喫茶店に入った。


「こうやって二人でゆっくり出来るのも久しぶりだな…」
「兄さん、生徒会の仕事だけでも大変なのに黒の騎士団活動でもっと大変だもの」
「なかなか時間を作ってあげられなくてごめんな」
「兄さんが謝る事じゃないよ。僕も本当は何か手伝えればいいんだけど…」
「はは…、気持ちだけで十分だよ」


なんか複雑な気分。だけど僕の事も考えてくれてるんだなぁって思うとまた顔が緩んでしまう。
い、いっけない…


「それよりロロ、何を注文するんだ?俺は決まったぞ」
「あ…ごめん、ちょっと待ってて」


すっかりメニューを決めるのを忘れてた。メニューに目を落とした瞬間僕は無性に甘いものが食べたくなった。だって…ここのパフェが美味しそうで…
でも僕らは昼食を終えてから家(クラブハウス)を出て来た。つまりは昼食からはそんなに時間が経たない。お腹が空いてる訳じゃない。ただ純粋に美味しそうな物に目が行っただけ…。


「決まったか?ロロ」
「ぅー…」


僕は唸りながら兄さんをチラチラと見る。兄さんの喉が乾いたからちょっと飲み物でもと喫茶店に入ったのに…何だか…


「食べたいんだったらケーキでも何でも頼んでもいいぞ。」
「え…っ」
「だってロロ。さっきから飲み物を見てないからな」
「あっ」
「好きなものを頼むといい。何が食べたいんだ?」
「……いちごチョコレートパフェ」
「ははっ、可愛いな…ロロは」


机越しに手を伸ばし僕の頭を撫でる。あ、今僕子供扱いされた…。
軽く頬を膨らませるとポンポンと叩かれ、兄さんは店員さんを呼んだ。


「すみません」
「はい、ご注文でしょうか」
「アイスストレートティーといちごチョコレートパフェを一つ」
「かしこまりました」


あぁ、なーんかちょっと周りの視線を感じるような…。いや、思い込みも程々にしておこう。
それにしてもあの苺の量といいチョコの量といい生クリームの量といい凄く美味しそうで内心楽しみだったり。


「何にも計画せず出て来てしまったが、何処か行きたい所はあるか?」
「え…行きたい所?僕は兄さんと一緒だったら何処でもいいよ」
「…悩むな。うーむ…」
「適当に外を歩いてればきっと何か見つかるんじゃない?」
「そうだな…」


正直大好きな兄さんと歩けるだけで嬉しいからお店なんてどうでも良かったり。


「お待たせしました!アイスストレートティーといちごチョコレートパフェになります。ごゆっくりどうぞ」


迷いもなく店員は僕の方にパフェを置いた。そりゃ…そうか。兄さんてパフェとか食べなさそうだもんな。
と言うか…


「わぁ…写真のより生クリームがいっぱいだぁ」



スプーンを手に目を輝かせていると兄さんに笑われた。何だか今日は緩みっぱなしだ。仕方ないじゃない。兄さんといると安心しちゃって…。


「いただきます!〜〜〜…っ」


一口食べて口にスプーンを入れたまま止まる。何これ美味しい…!!
生クリームの甘さも程良くてしつこくなく、苺もチョコレートと中和して酸っぱすぎずアイスも冷たくて美味しいし…幸せな気持ちに浸る。
一口、また一口口に入れては頬を緩ませる。


「美味しいか、ロロ」


目を細め優しく微笑みながら兄さんが聞いて来た。あ…この表情好き。
僕は口に含みながらコクコク頷く。


「俺にも少しくれないか?」
「うん、いいよ!」


僕が生クリームと苺とチョコとアイスを均等に掬うと兄さんは僕の手首を掴み自分の口へと運ぶ。
スプーンを口に入れ、最後にペロっと舐める姿が凄く色っぽい。
あ、スプーン…!!そう気付いたら顔が熱くなって来た。
うわぁ…こんな向かい合って…どどどうしよう……
よくよく考えると兄さんが僕の手を使おうが使うまいがどちらにせよ僕のスプーンで食べる事は前提だった。あまりにパフェが美味しくてそんな事考えてなかった。
兄さんが僕の手首を離す。


「ん、本当に美味しいな」


僕は手を引き、スプーンを見たまま停止する。
兄さんが使ったスプーン…
パフェを食べるのに掬うが手が震えてなかなか口に運べない。
兄さんが自分の飲み物を飲みながら此方の様子を微笑みながら見てる。え…もしかして兄さん僕で遊んでる!!?


「ロロ、」
「は、はいっ!?」


恥ずかしい!!凄く裏返っちゃった!!
兄さんはくすくす笑いながらも僕のスプーンを奪った。


「ほら…」


僕の前にスプーンが突き出された。


「早く食べないとアイスが溶けちゃうぞ」
「う、うん…。あの、兄さん…自分で食べられるから大丈夫だよ」


目の前のスプーンと兄さんの顔を交互に見て言う。そもそもこんなあーんみたいな形で食べるなんてもっと恥ずかしいよ…。
でも兄さんの笑顔は変わらない。何を考えてるんだろう…。


「でも何だか凄く手がおぼついていたぞ。まぁ折角だから一口…な?」
「ぅ…うん…」


もう…僕が兄さんに頼まれたら断れないのわかってて…。で、でも恥ずかしいなぁ…
僕は目の前に出されたスプーンに集中して口を開ける。
ぱくっ
ゴクリと音を立てて飲み込む。ヤバい、緊張して味がわからない。…味?兄さんの…
僕は顔が火がふくように真っ赤になった。や、やだ…


「ロロは本当に可愛いな」


うわ、見られてる…。兄さんからスプーンを少し強引に受け取り再び食べ始めた。もう殆どヤケ。
あぁ…美味しいパフェが台無しだ。いや、でも美味しいけど…。
たまに様子をうかがう為にチラっと兄さんに視線を向けながら黙々と食べきった。


「ふぅ…ご馳走様」
「美味しかったか?ロロ。また食べに来ような」
「あ、う…うん!」


今度は普通に食べられればいいなぁ…なんて。
別に今回みたいに兄さんとのか、か、関節キスが嫌だった訳じゃなくて…恥ずかしいし緊張するしで途中味がわかんなかったし。
正直嬉しかったけど。


「じゃあ行くか」


僕たちは立ち上がり、兄さんが支払いを済ませて喫茶店を後にした。
外に出るなりまた手を掴まれる。お願い兄さん、心臓を休ませて。


「一先ず…こっちに向かって歩くか」
「う、うん」


ヤバい…会話が弾まない。折角の兄さんとのお出掛けなのに…


「ロロは本当に行きたい所とか欲しい物とかないのか?」
「特にないけど…兄さんは?」
「本当はロロと遊園地にでも行きたい所だが、それはちゃんと予定を組まないとな。欲しい物…と言えば……あれだ……」


兄さんが珍しく言葉に詰まる。視線は斜め上。え、そんなに言えない物…!?
暫く沈黙のまま歩いていると兄さんの足が止まった。


「ちょっとここに寄ってもいいか?」


そこはアクセサリーショップだった。兄さんの欲しい物ってアクセサリーだったんだ…。でも何で言葉に詰まったんだろ。ま、いっか。


「うん、いいよ」


僕たちはアクセサリーショップに入った。
そこには沢山のアクセサリーがあり、キラキラ輝いていた。
指輪、ネックレス、ブレスレット、ピアス…
僕一人じゃあまり入らなそうなお店だから何か新鮮。
キョロキョロしてると兄さんがクスクス笑い出す。


「そんなに珍しいか?」
「僕、こう言うお店あんまり入らないから…」
「そうか。ちょっと暇かもしれないがここで待っててくれないか?」
「?うん…わかった」


僕の頭をポンポンと叩くと兄さんは離れていった。
兄さんがここで待ってろって言ってたから周辺の物を見回していた。兄さんてなんか大人だな…。
格好いいものや綺麗なものが沢山あって兄さんにはどれも似合いそうな物ばっかだけど僕が着けたら子供が背伸びしてるようにしか見えないような物ばかりだ。
そう考えてるうちに兄さんは戻って来た。


「すまない、待たせたな。行こうか」
「うん。いい物買えた?」
「あぁ」


僕が笑顔で聞くと兄さんも笑顔で返してくれた。何て幸せな一時だろう…
店から出るなり兄さんがまた手を…


「に、兄さん…もう恥ずかしいよ」
「すまない、やっぱり嫌だったか」


手は離れ兄さんの眉が下がる。僕凄く悪い事しちゃっかな…。兄さんのそんな顔が見たい訳じゃないのに…
僕は離された兄さんの人差し指の先を握った。


「嫌、じゃないんだ。ちょっとだけ…恥ずかしくて…」
「そうか…」


兄さんは柔らかい表情に変わる。良かった…
その後服を見たり本を見たりして時間を潰した。
外も段々と薄暗くなり肌寒くなって来た。僕らは帰り道に小さな公園に立ち寄った。


「くしゅん」
「ロロ…風邪でもひいたか?」
「ううん、大丈夫だよ」
「そうか、良かった。しかし無理はするなよ?…今日はありがとな」
「此方こそ、折角のゆっくり出来る休日に僕なんかと時間を作ってくれてありがと。くしゅん」
「ロロ…」
「…?」


兄さんは上着を脱ぎ、僕にかけてくれた。優しいな、兄さんは…。
そして小さな包みを出し僕に渡す。


「ロロにプレゼントだ」
「え…」
「と言っても大した物じゃないけどな」
「誕生日でもないのに…貰ってもいいの?」
「プレゼントは誕生日じゃなくてもあげたい時にあげるものさ」
「そう、なんだ…。…開けてもいい?」


兄さんは頷いた。
包みを開けると…指輪のついたネックレスが入っていた。


「実は俺もお揃いを買って来たんだけどな」

兄さんはもう一つの包みを出しネックレスを出す。


「兄さんと…お揃い」


嬉しいのに、何故か涙が込み上げて来た。


「あはは…あれ?おかしいな…嬉しいのに涙が…」


僕は笑いながらも腕で涙を拭う。
こんな変な僕を兄さんはどう思うかな。人って…嬉しくても涙が出るものなの?


「ロロ…」


ビクッと肩が揺れる。
兄さんは僕の手からネックレスを取った。


「目を瞑って。いいって言うまで開けちゃ駄目だぞ」
「うん…」


理由も分からず目を瞑ると涙が滴り落ちる。
首の後ろに手を回されてる感覚がある。もしかして…ネックレスをつけてくれてるのかな。
まだ…目を開けちゃ駄目なのかな?

ふと、温かいものが一度瞼の上に触れ、次は唇に触れた。
え…



驚いて僕は目を開けてしまった。まさか…。
そのまさかで兄さんの顔は凄く近くにあった。僕、兄さんと…キス…してる…

唇は離され兄さんの目がゆっくりと開く。


「コラ、ロロ。いいって言うまで開けちゃ駄目だろ」
「だって…兄さんが…」


僕は真っ赤になり両手で口を押さえる。
僕の今の顔、すっごく情けない顔になってるんだろうなぁ…


「あの時の質問。俺の一番欲しいもの…それはロロだよ」
「へ…?」
「俺はロロが欲しくて仕方がない。ロロが可愛くて、愛おしくて…」
「にい…さん…」


僕の瞳が揺れる。やだ、また泣きそう。涙なんか流さなかった僕が何でこんなに…
僕は一度涙を飲むように唇をキュッと締め気持ちを落ち着かせる。


「僕も…僕も兄さんが一番欲しい。兄さん以外何も…」
「ありがとな、ロロ…」


兄さんの手が僕の首もとへ行く。僕はそれを追った。


「この指輪は店の人にチェーンに通して貰った。そんなに高いものでもないがいつかお前の指にはめられたらな…。これならいつでも…離れていても一緒にいられるし、制服の下に付ければ会長とかに茶化されずいつでもつけていられるだろう?」


少し首を曲げ優しい微笑みで「な?」なんて言われたらもう僕は目が離せなくなる。僕は今兄さんのギアスにかかってしまっているんではないかと言う疑問が湧いて来る程におちていく。


「離れていても…これをつけていれば一時も忘れはしない。愛してるよ、ロロ」


愛してる…その一言に無数の感情が一気に出て来る。
記憶改ざんされた兄さんは当たり前ながらも僕をナナリーとして愛した。そして記憶を取り戻した兄さんはナナリーばっかりで、僕の方なんて見向きもしなかった。
だけど…今の愛してると言う言葉は僕だけに向けられた言葉。このネックレスも僕にくれた大切な証。嬉しくて嬉しくて言葉が出て来ない。


「にいさん…」


今はただ兄さんに抱きつき胸に顔をうずめ、涙を抑えるのに必死。
一度ゆるんだ涙腺はそう軽くはしまってくれない。
兄さんに背中をポンポンとされるととても安心する。


「…くしゅん」
「さっきからくしゃみが出るな?咲世子に風呂を沸かすよう連絡しておくからクラブハウスに着いたら先に入るといい」
「うん…ごめんね、兄さん」
「謝る事はない。大切なロロが風邪でもひいたら俺も辛いからな」
「ありがとう…」


兄さんは咲世子に連絡を取った。
僕らは先程までとは違い指を絡め合い手を繋いで公園を出た。何故だろう、全然恥ずかしくないや…
気持ちを伝え合ったから…かな。それとも……
ふふっ、兄さんもほんのり顔が赤いからかな。…僕と一緒だと思うと安心する。


「愛してる…ルルーシュ兄さん」


繋いだ手にキュッと力を込めるとそれを返すように兄さんからも握り返してくれた。
夕暮れ時、二人の影は優しく重なっていた。













END
───────────────
ロロたんのキスの味はパフェ味vv(うふふ)

ってか終わり方とかわからないよぉー!!!!
ホント文サイトじゃなくて良かったorzマジきついよコレ…
ロロ好きさんを元気づける為の幸せ話だった筈なのにだらだら長くて疲れさせちゃったかとぉ°・(ノД`)・°・
もぅ、駄目だ…
ホント文サイトさまは神だよ…

パフェを美味しそうに食べるロロとか見てみたい管理人の欲望が形になりました(笑)ってか絵のパフェでかすぎ!!!

あ、因みに兄さんは前々からロロが自分に気がある事はわかった上での話です!(ぇ)じゃなきゃどんだけ兄さん自惚れてるんだって感じだよ(笑)
それを文中で書ければ良かったんだけど、や…無理。
許して下さい…

めちゃめちゃ長い文に付き合って頂きありがとう御座いました!!


08.09.02 柚姫


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