Potere



首の後ろに叩き込んだ手刀は、あっさりと恭弥の意識を奪った。
ドサリと音を立ててコンクリに倒れこんだ彼を見下ろして、綱吉はこれからどうしようかと再び考える。
入学式が終わるまではまだ時間があるから暇と言えば暇なのだが。
それでもこの倒れた物質が起きるのを待つ程には暇では無く、風紀委員が根城としている応接室に運んでやる程には綱吉は優しく無かった。
再び僅かに思考し、結論を出す。
綱吉は恭弥の後ろに回ると、上半身を起こし、意識が戻るように力を込めて刺激を加える。

「うっ……」

綱吉に不可能な事など無いのだろう、そう思わせるほど直ぐに恭弥は小さく呻きうっすらと目を開ける。
何がどうなったのかもわからなかったのだろう、暫くゆっくりと目を瞬かせ、背を支えられていた手を振り払う。
直ぐに向けられるのは殺意のこもった瞳。

「肉食動物を名乗るのならより強いものに服従でもしてみます?」

その眼差しを見て愉しげに笑いながら綱吉は言う。
見下した視線は恭弥のプライドを壊すためのものだろう。
恭弥は眉値を寄せ綱吉から顔を背ける。
それを見て綱吉は更に笑みを深める。
綱吉はわざと足音を響かせながら恭弥に近付き顔を寄せ、再び耳元で囁く。

「条件、覚えてますよね?」

とても綺麗な笑みの筈なのに、何処か毒々しく、禍々しく見えるのは冷え切った瞳のせいだろうか、恭弥はふと考え、その場違いな思いに投げやりに嗤った。
何時の間に力が入っていたのか、落ちたトンファーを拾おうとした手には紅く流れる血と爪痕。
気にせずトンファーを拾い袖にしまうと、恭弥は再び綱吉と向き合う。

「君が求めているのは権力、だったよね……この並盛で一体何をするつもり?」

鋭い、それでも殺意が消えた声で恭弥は問う。
クスリと笑った瞬間、屋上故の風が吹き、さらりと綱吉の髪が揺れる。
意図的に顔を隠すためか長めのその髪は、綱吉の目を隠す。
表情を成すのは端が禍々しく上がった口のみで。
そこから何でもないことのように言葉が紡ぎ出される。

「ちょっと家庭の事情で刺客に狙われてるんで、もし殺しちゃったら処分をお願いしようかと思いまして。並中の風紀委員は死体も処理してくれるって小耳に挟んだんですけれど、あってます?」

いくら自分が支配体制をひいているからと言って平和な日本においていきなり出た“刺客”という言葉に恭弥は僅かに目を見開く。
しかし直ぐに僅かに口の端を上げて笑った。

「全く……この並盛にあんまり変なのを連れ込まないでよね……でもまぁ君は僕と同類みたいだしね。引き受けてあげるよ」

その口調は酷く楽しそうで。
綱吉もその言葉を聞いて歪んだ笑みを浮かべたのだった。







後始末なんて面倒臭いことは雑魚に任せるに限る。
部下一人ゲット。恭弥さんを完璧に格下扱いの綱吉様。因みに綱吉様にとって刺客に襲われるのは日常茶飯事です。ただ殺せないとなると秘密保持のために撒くことしか出来ないのでかなりストレスが溜まっていました。だから殺しても処理してくれる部下を探してたご様子。最後の笑いはこれでストレスを溜めなくてもすむという笑みだったりします。


あきゅろす。
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