Ordine



人の気配が無くなったのを確認してから綱吉は身を起こす。
白いシーツは寝ていたせいで少し乱れていたが、そんなものを気にしてやる義理は無い。
転んだと言う間抜けな原因でも失神した生徒を放っておくのは入学式があるからか。
そんな事を考えながら綱吉は保健室の戸を潜る。
上手くサボれたはいいが、保健室に寝ているのでは性に合わない――と言っても普段は本性など全く出す気も無いが――。
綱吉は何処に行こうかと僅かに考え、直ぐに答えを出す。
全校生徒及び教師が揃っていなければならない入学式会場でただ一人いなかった人物に会いに行こう、と。
勘で屋上辺りだろうかと考えると、幼い頃から持っていた超直感が肯定を示す。
階段を昇る面倒臭さに一度溜息を吐くと、綱吉は迷いの無い足取りで歩き出した。


三階分の階段を昇り、屋上へ出る扉の前に辿り着く。
ゆっくりと扉を押すと、金属が錆びているのか、軋んだ音を立てて開いていく。
途端に飛び込んでくるのは空の青さ。
そう言えば今日は天気が良かったのだと、室内に閉じ込められっ放しだった綱吉は今更のように思う。
ついボーっと空の青さを眺めていると、何かが動く気配を感じた。
扉の外に出てゆっくりと視線をさまよわせる。
彼も綱吉の気配に気付いて出て来ていたのだろう、直ぐに見付ける事が出来た。 漆黒の瞳から殺気を漂わせ、ゆっくりと綱吉の方に歩いてくる。

「君、誰?」

簡潔に言われた問。
常人ならばその殺気に思わず答えてしまう雰囲気。
そんな中、その問いに答えず、綱吉はにっこりと微笑った。

「へぇ……ただの草食動物って訳じゃ無さそうだね。でも、風紀を乱す者は誰であろうと咬み殺すよ」

入学式当日にサボっている人が風紀について言えるのかと思いながらも、制服はブレザーの筈なのに何故か学ランを羽織っている少年を見ると、何処に仕込んであったのか何時の間にかトンファーを取り出していた。
さて、どうしようかなどと暢気に考えている間にトンファーは目の前に来ていた。
予想以上に速い動きにヒュゥと口笛を吹き、あっさり避ける。
思ったのは、思っていたよりは使えそうな駒だという事。
そんな綱吉の考えに気付かずに少年は動きを止め楽しげに笑んだ。

「ワォ、素晴らしいね、君。もっと楽しませてよ」

「それって闘えって事ですか?」

綱吉は少年に向かって初めて声を発した。
面倒臭いという感情を全く隠さない声。 しかし少年は気にした様子もなくあぁ、と頷く。
綱吉は酷く面倒臭そうに、それでも思考し、数瞬後、深く笑みを浮かべた。

「条件付きでならいいですよ?」

「手加減はしないよ?」

条件など付けられたことも無いのだろう、見当違いの事を言われ綱吉はクスクスと無邪気に嗤う。

「そんなんじゃないですよ。ただ、俺が勝ったらあなたの権力を利用させて欲しいんですよ、並盛中風紀委員長で『並盛の秩序』の雲雀恭弥さん」

「ワォ、僕を知っていて刃向かってくるのかい?いい度胸だね」

少年――恭弥は、渡り合える肉食獣を見付けたと思ったのか、とても楽しそうに笑っている。

「条件の方は大丈夫そうですね?じゃあ次。選ばせてあげますよ」

綱吉は口の端を上げて顔を歪める。
歪な笑みとまたも意味の解らない言葉に恭弥はこれ以上焦らすなと言わんばかりに眉根に皺を作る。
綱吉は煽るようにクツクツと嘲笑い、言った。

「一瞬で落とされるか、それとも意識を保たせたまま痛めつけられるか。俺としてのお勧めは前者ですね。後者は入院費とかがかかっちゃいますから」

「っ!本気で咬み殺すっ!!」

侮辱をきっちり受け止めたのだろう、恭弥は白磁の頬を僅かに紅潮させ、トンファーで殴りかかる。
それに対し、綱吉は嘲笑のまま最低限の動きで繰り出されるトンファーを避けていく。

「ねぇ、どっちにします〜?答えてくれないのなら面倒くさいんで前者でいっちゃいますよ〜?」

「出来るものならやってみればいい」

トンファーでの攻撃は更に激しくなる。
そんな中、恭弥の視界から、いきなり綱吉の姿が消える。

「あなたは世界にはあなたより強い人間が五万といる事を知った方がいいですよ」

恭弥の耳元でそっと囁かれた言葉。
それと同時に恭弥の意識はブラックアウトした。






出来るから言ってるに決まってるじゃん。
奈々ママはツナヨシが倒れた事に気付いていません。だから側に誰もいませんでした。まぁ入学仕立てだと教師も保護者の顔わかんないしね。後綱吉君は雲雀を井の中の蛙程度に見てます。綱吉君は本気なんて更々出してませんから。


あきゅろす。
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