あの日々の事をなんと言ったらいいんだろう… オレが暗い夜に迷いそうになった時 君が月の光になって オレを照らしてくれた 確かにオレは君と過ごした あの奇跡のような夢の日々を 君と言うリトルドールと… 空はどんよりと厚い雲に覆われて、肌寒さを感じた秋も終わりの頃。 オレは十四年間暮らして来た家を外から眺めていた。 全ての荷物を引越し業者が持って行き、何も無くなった家は何だか感概深い。 色々な思い出があるはずなのに、まるでモノクロ掛かったみたいに色褪せて見える。 新しい家はアパートなので、いらない物は全て捨てて行くと父さんは言った。 家の外には、『いらなくった物』がまるでゴミの様に放置されていた。 母さんの物や…一年前に死んだ姉・ミクの物…どれもまだ使える物ばかりだ。 父さんにとって、この家での事も、あの二人の事も…忘れたい記憶になってしまっていたのかもしれない。 ポツリポツリと雨が降り出して、地面に水玉を作り出す。 オレは『いらなくなった物』の中から、姉さんの赤い傘を取り出して差した。 これくらいなら持って行ったって構わないだろ… ふと傘の下から、何かが見えた。 「あれって…」 家の壁に寄り掛かる様に置かれていた物に、オレは近寄る。 それは姉さんが小さな頃に遊んでいた人形。 どうしてかそれだけは、『いらなくなった物』から少し離れて置かれていた。 まるで気付いてほしいかの様に。 引越しの片付けの時に出てきたんだろうか? あまり覚えは無いのだけど。 雨に濡れるその姿が、いやに寂しそうに見えた。 気付けばオレはその人形に近づき、傘を差し出していた。 どうしてそんな事をしたのか解らない。 だけど、置き去りにされたその姿に、自分を重ねたのかもしれない。 オレは眉を寄せて人形に笑いかけると、手を伸ばした…―――。 >>>サンプルの為、ここまで! [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |