「すごい綺麗だね…!」
レンはそれを見上げて、声を上げた。
「でしょ!!今年はとびっきり綺麗にしてもらったのよ!!」
私はその隣に立ち、得意気に顎を上げて見せる。
毎年、城の庭にある一番大きなもみの木が、キリストの聖誕祭に向けて飾り付けられる。
今年もその装飾が終わったと聞き、私達は外へ出た。
もみの木は天辺に星形のモニュメントを讃え、モールやリボンやベルのオーナメントで美しく可愛らしく飾られた。
所々に灯る蝋燭が、夜の闇の中でより一層に幻想的に照らす。
「こんな綺麗なクリスマスツリーは初めて見たよ。」
蝋燭の灯りが反射したキラキラした瞳で、レンはとても嬉しそうに笑う。
私もその笑顔を見ると、心が温かくなって満足げに笑って見せた。
「それはそーよ!この国にこのツリー以上があるわけないじゃない!!」
私がそう言えば、レンはクスクスと笑いながらそうだねと言った。
「レンは教会にいたのよね?
やっぱりクリスマスは特別だった?」
不意に疑問に思った言葉を投げ掛けると、レンは一瞬眉を動かす。
その後すぐに、懐かしそうに目を細めた。
「そうだね。やっぱり特別だったよ」
思い返す様に目が空を仰ぐ。
「小さな教会だったけど、近くの町の人が集まって、クリスマスパーティーをして…」
「パーティー!?素敵!!」
両の指を合わせて歓声を上げると、レンはまた声を上げて笑う。
「あはは!リンが思ってる様な、パーティーには程遠いけどね。」
私が首を傾げれば、またクスリとレンは笑う。
「本当に細やかで、慎ましい…うん。そんな感じさ。」
まったく分からないけど、たぶん理解も出来ない事の様だから、私はふーんと返事をする。
出会った時…8歳の頃から、再会するまでの話を私達はしない。
その代わりに、それ以前の話はよくした。
違う環境で離れて暮らしてた私達は、よくお互いの話で驚いたり、笑ったりした。
理解出来ないモノばかりだけど、それでもレンの話を聞くのが好き。
だってそれまでのレンを、少しでも知れるのが嬉しいから。
「クリスマスと言えば…リンはサンタクロースは信じてた?」
レンに問われて、私は眉を寄せる。
「サンタクロース?あんなの空想上の生き物でしょ?」
私の反応にやっぱりと言ってレンは片眉上げて笑う。
「僕はね。実は少し信じてるんだよ。」
「そうなの?」
少し意外で目を丸くした。
レンたら意外に、ロマンチストなのね。
「そう。恥ずかしくて誰にもお願い出来ないから、サンタにお願いしてたんだよ。」
クスクス笑いながら、ほんの少し照れた様な顔をする。
「何を願ったの?」
私が不思議そうに問えば、レンはまた目を細めて笑いながら私を見る。
「一目でいいから、王女様に会いたい…って。」
私は驚いて目を見開いた。
「一目会う所か、今横で一緒にツリーを見上げて、しかも…その王女様が実は双子の姉だった。」
――なんて、夢みたいな願いが叶ったんだから。
サンタを信じずにいられないだろ?――
と、続けたレンの言葉に私は思わず表情を緩ませた。
「私を物みたいに言わないでよ。」
と、ちょっと剥れて言ってみればクスクスとまた笑った。
「でも…」
続けた言葉に、今度はレンが首を傾げる。
「それなら私もサンタを信じてもいいわ。」
私がそう言えば、驚く様に目を丸くした後に、そうかと言って優しく笑った。
だってあなたと同時に、私の願いも叶えてくれたのよ。
『弟が欲しい』…って。
二人でまたツリーを見上げて、綺麗な灯火に心を預ける。
ねぇ…サンタクロース。
また願いを叶えてくれるなら…
来年も再来年も…この先ずっと。
レンと一緒に、こんな風にツリーを見上げていたい。
なんて…私の方が、よっぽどロマンチストね。
13歳の聖夜。
誓いのような願いを託し、私達は笑い合う。
この先に何があるかなんて…
その時は考えもせずに。
ただ…あなたと共に。
〜fin〜
************************
*あとがき*
○第14話の2ページと3ページの間のお話でした!!
クリスマスな悪ノって、なかなか無さそうだし書いてみたかったんです(*^_^*)
それに今だからこそ書きたかった話ですね。
だって…もうこんな風に幸せな二人は書けないから(T-T)ブワッ
召使レンくん優しいなー。
王女リンちゃんツンカワだなーって…( ´∀`)
まぁ、結果はちょっと切なくなったんですがww
こんなクリスマスな話しもありですよね!!
メリークリスマス★
up 2010.12.22
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