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貴方の夢
著:唯愛様




「ふぁぁ…」

悟空が大あくびをしながら寝室から出てきたのに、チチは笑顔を向けた。

「おはよう、悟空さ」

「ああ、おはよう、チチ」

笑顔のチチに思わず悟空も笑う。

「朝ごはん、出来てるだよ!!」

「うん、すっげー美味そうな匂いがして、パッと目が覚めちう。チチの飯はすげえよな!!!」

「ふふっ、早く顔を洗ってくるだよ」

「おーう!!」

悟空は洗面所に行って、顔を洗う。



チチとケッコンして半年。
手に入れたこの生活は、今までの自由気ままなものと比べたらとても窮屈なものではあったが、快適でとても居心地の良いものだった。

栄養のある食事にいつも綺麗な家の中。
何よりチチという存在は、何も知らなかった頃とは比べ物にならないほど悟空にとって大事なものになっていた。

「愛おしい」存在と作り出す幸せな空間。
言葉には出来ないけれど、感覚で悟空は幸せを感じていた。



「いっただっきまーす!!!」

食事にがっつく悟空を、チチが笑顔で見つめる。

ふと、その笑顔がいつもよりずっとずっと嬉しそうなのに気付いて悟空は口いっぱいに食べ物を詰め込んだまま顔を上げた。

「チチ、なんか、うれし、そうだな!!!」

「悟空さ、口の中のもん飲み込んでから喋るだよ」

苦笑するチチに窘められ悟空はゴクンと飲み込んでわりぃわりぃと笑った。

「なんか、良い事でもあったんか?」

「ん?…んー、ふふふ…」

問いかけるも妻は楽しそうに笑うだけ。

「なんだよ、チチ」

「…んー、実はな、夢見ただよ」

「……ゆめ?」

「んだ。すごくすごく嬉しいことがあって、すごくすごくしあわせで、思わず目が覚めたんだども…それで、おら嬉しくて。」

チチの言葉に、悟空は呆けたようにチチを見た。

「……どんな夢だったんだ?」

「良い夢は話さないほうがいいだよ、正夢になるかもしれないだから」

「……オラに言えねぇ夢なんか?」

悟空は完全に箸を止め、チチを見つめる。その眉間に皺を見止めて、チチは首を傾げた。
どうにもご機嫌を損ねたらしいが、何が原因かわからない。

「……悟空さ?」

チチが聞くも悟空はプイッと顔を逸らしてしまう。

「悟空さ、どうしちまっただ?」

チチは困り思わず問いかける。こんな悟空は初めてだ。

「…チチは、夢のほうがいいんだ…」

「……え?」

拗ねたようにポツリと悟空が呟いたその一言に、チチは思わずプッ、と噴き出した。

「な、なんだよチチぃ」

「悟空さ、夢に嫉妬だべ?」

「しっと?なんだそれ?」

悟空はムッとする。

「オラはただ、チチは夢のほうが楽しいんかって思っただけだ。
オラはいまでも十分楽しいのに、チチはそうじゃねえのかなぁって。」

素直な言葉に、チチは一瞬呆けるが

「……悟空さ………っ!!」

「!!???」

立ち上がったチチは、悟空を後ろから抱き締めた。

「おらも、今が楽しくて、最高に幸せだ!!!
だども、もっともっと幸せになれる夢見ただよ、おらと、悟空さで!!」

「…お、オラも?」

「んだ!!!おらのしあわせは、悟空さがいなければ始まらねぇんだから!!!!」

自分の肩越しにチチが嬉しそうに笑う顔が見えて、悟空も「そっか」と笑う。

「オラ、よくわかんねぇけど、チチの見たしあわせな夢にオラがいるなら、いいや!!!」

「んだ!!!」

悟空も立ち上がり、嬉しそうに微笑むチチを正面から抱き締める。

互いの温もりを感じながら、「しあわせだな」と思える今。

悟空にとっては初めての感情で、慣れるまで波が激しくて困ったけれど。

わかっているのは、ただ一つ。
手放すことが出来ない、ということだけ。

でも、それだけわかれば十分で。

悟空はチチをギュッと抱き締めて、守っていく大切な存在を確かめていた。

(…悟空さ、怒るかな?)

チチはそんな悟空の胸の中で、悪戯っぽく笑う。

(…おらが見た夢に、もう一人、悟空さじゃない男が出てきたって言ったら、怒るかな?)

クスクス笑うチチに、悟空は「ん?」とチチの顔を覗き込む。

「悟空さ、大好き」

「……ああ、おらも。」

目を閉じたチチにゆっくり口付けを落として。

(…でも、許してくれるだ。
悟空さにそっくりの、おらたちの息子だもん。)

きっともうすぐ会える。

チチは確信に近いその思いに無意識の内に優しく自身の下腹を撫ぜた。



END



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あきゅろす。
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