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息子の嫁はやっぱり可愛がっとけ(愛情増量中)
著:唯愛様



「待つだ、悟空さっ!!!今日はおらと買い物にっ…」

「じゃ、じゃあなっ!!!チチ、行ってくっぞ!!」

今日も今日とて、悟空はチチの静止も聞かず筋斗雲に乗って家を飛び出していく。

「……悟空さっ…」

取り残されたチチは、悔しさに拳を震わせながら、空の彼方を睨んだ。

修行、修行……。
いつまでたっても、ほったらかしの現状に、チチの怒りも爆発寸前。

「……たまには、おらと二人でゆっくり過ごしてほしいだよ……。」

何故か今日は心細い気持ちに襲われ、普段なら「仕方ねぇだなぁ」で済ませられるようなことだというのに、目に涙まで浮かんできた。

「……悟空さ……」

すん、と小さく鼻を鳴らし、涙を拭う。

「ほんと、おめぇは一途な女だなぁ。そんなに泣いてまで、カカロットか?」

不意に、聞こえてきた声にチチは顔を上げた。

「……誰……?」

「ここ、ここ。」

「……わっ!!!」

丁度チチの目線より頭一つぐらい上の辺り。

浮かんでいる人間の姿が、二人。声の主がゆっくりとチチに顔を向けたので、その一人が誰なのかはチチにもわかった。

「……おっ……お義父さんっ!!」

「よぉ、チチ、久しぶりだな」

ニッと笑ってバーダックはチチの前に下りてくる。
悟空そっくりのその顔に、チチは思わず胸に飛び込んだ。

「おっ……お義父さぁぁぁぁん!!!!」

「おっ!?」

まさか突然胸に飛び込んでこられるとは思わなかったバーダックは一瞬驚いたが、役得とばかりにチチを抱き締めた。

「よーしよし。おめぇもやっとわかったみてぇだな?カカロットみてぇな奴、さっさと見限れ見限れ。悟飯も一緒に俺が一生面倒みてやるぞ」

「死人が何言ってるだ」

チチはぐすんぐすんと泣きながら、バーダックの胸から顔を上げ、身体を離す。

「どーしただ、また占いババ様に無理言って遊びに来ただか?」

「そんなんじゃねぇよ。
なんだ、もう離れちまうのか?もっと抱かせろ」

「スッ、スケベ!!!」

チチがベーッと舌を出し、上からクックッと笑い声が洩れる。

「そいつがカカロットの女か。」

「!?」

嫌な気配にチチが身構えると、バーダックの隣にスウッと降りてくる、その男。その顔を見て、チチは愕然とした。

「!!??おめぇ……まさか…」

悟飯に話を聞いていた、悟空そっくりの男。
その名は

「俺のこと知ってるのか?俺はターレス。」

「やっぱりっ!!おめぇ、おらの悟飯ちゃんを…!!!」

チチが武道の構えを取るのを遮るように、バーダックがチチの肩を抱いた。

「やめとけ。コイツももう死んだ身だぜ?悪さしねぇって言うからつれてきてやったんだ。」

「お義父さんが連れてきただか!?こっだら悪い奴、なして!?」

「俺だって嫌だったんだ。それをターレスの奴が、おめぇを見たいとかぬかしやがるからよ」

「貴様がカカロットの嫁を散々自慢するからだ」

「うるせぇな。」

バーダックが面倒そうに睨みつける。

「言っておくがな、チチに悪さしてみろ。魂もミンチになるかどうか、俺がてめぇで試してやるぞ」

「フン。」

ターレスは舐めるようにチチの全身を見る。
チチはもちろんその視線が気にくわず、ギロリとにらみつけた。が、バーダックの手前何も言わずにいた。

「フン…気の強そうな女だな…。」

クイッと顎を上げて顔を覗き込む。

「…ふ…ぅん…」

チチの視線とターレスの視線がぶつかり、一瞬ターレスが怯むように息を吐いた。

「…悪くないな。どうだ?お前、俺の女にならないか?」

「死人が何言ってるだ!!!」

思わず噛み付くように言い返したが、ほんの一瞬だけ、ドキリとした。
バーダックはさすが父親だけあって悟空によく似ているが…ターレスも、悟空とそっくりと言っていい風貌。チチは戸惑いを隠すように目を逸らした。

「名前は?」

「……」

「頑固そうだな。益々気に入った」

ニヤリと口の端を上げ、ターレスはチチの顎を掴んだまま口付けようとした。

「やっ……!!」

「てめぇ、ターレス!!」

バーダックが両手に気を集め始めた、そのとき。
「!!!??」

ターレスは背中に衝撃を感じ、チチに触れていた手を離した。
「……っ…てめぇ、カカロット!!」

バーダックが舌打ちしながら振り返った先には、筋斗雲に乗った悟空の姿。
ターレスの背中に気弾を放ったのだ。もちろん、チチに衝撃がいかない様にコントロールして。

「悟空さ!!!」

「オラのチチに触んな!!!」

悟空は筋斗雲から降り、ターレスを睨みつける。

「…カカロットか。」

振り返ったターレスに、悟空は怒り心頭。

「嫌な気配を感じて、戻ってきたんだ!!!
ターレス、てめぇぇぇ、悟飯だけじゃ飽き足らず、オラのチチを!!!」

「勘違いするな。俺は貴様の女が気に入ったから連れて行くまでだ。あのガキとは違う」

「つ、連れて行く?!」

「大体貴様は修行にかまけてこの女をほったらかしにしてたらしいじゃねぇか。俺と来たほうがコイツは幸せだぜ。」

「なっ……!!!」

悟空が言葉に詰まるのを見て、ターレスはチチの肩を抱き寄せた。

「なぁ、チチとかいったか?おめぇだって、冷たい亭主より良い想いさせてやれる俺のがいいってきっと思うぜ…?なあ、こいよ。俺と」

「ターレス、てめぇチチに触んな。コイツは俺のもんだ」

「どさくさに紛れてお義父さんまで何言ってるだ!!!」

ターレスとバーダックが両脇からチチを取り合っているのに、悟空は俯いたまま。

「悟空さ……」

チチが呼びかけると、悟空は得意げに顔をあげた。

「父ちゃん、ターレス。」

やけに余裕げな悟空の態度に、バーダックもターレスも悟空を見た。

「おめぇらじゃ、どう足掻いたってオラには勝てねぇってとこ、見せてやるぜ!!!」


言うなり悟空は気を弾けさせ、金色のオーラを纏った姿へと変貌を遂げた。

「何っ…!!カカロット、てめえ!!!」

「伝説の…超サイヤ人!!??」

驚きに目を見開くターレスとバーダックに、悟空は得意げに顎を逸らす。

「どうだ?俺は超サイヤ人になれるんだぜ…。てめぇらがいくら束になってかかったって俺にはかなわねぇ。チチは、俺のもんだ」

ニヤリと不敵に笑う悟空に、ターレスとバーダックは何か言いたげに視線を逸らした。

その途端

「超化は嫌いって言ったべ!!!」

チチの鋭い声が響く。

「……へ……?」

「悟空さ!!あれだけ超化は嫌いだって言ったのに、なんだべ!!」

「いや…だって……!!」

「もー知らねぇだ!!悟空さなんか、大嫌いだっ!!」

「Σちっ……チチ!!!!???」

呆然と立ち尽くす超化悟空に、バーダックとターレスがニヤニヤと話しかける。

「いやー、残念だったなカカロット」

「伝説の超サイヤ人なんていっても、チチに嫌われちゃあなぁ…」

「そ……そんな……チチ…」

「さ、お義父さん、ターレスさ、お昼ご馳走してやるから手伝うだ」

「おう、何でも獲ってきてやるぜ」

「じゃあな、カカロット〜」

チチについてターレスとバーダックが家に入っていくのを何も言えず見送った悟空は、呆然とその場に立ち尽くした…。

「チチー!!!これからは買い物も付き合うからーー!!!超化もチチの前ではあんまりしねぇからーー!!!オラも入れてくれーーー!!!」

「修行も程ほどにするだか!?」

「する!!!する!!!」

「もっとおらを構ってくれるだか?!」

「構う!!!!構うから〜!!!」

「しょうがねぇだなぁ…」

「チチ、サンキュー!!!」





「なんだかんだ、すげぇ嫁だな…」

「結局、カカロットの方が惚れ負けだ」

玄関のほうから聞こえてくる夫婦のやりとりを聞きながら、ターレスとバーダックが面白くなさそうに酒を酌み交わしていた。

「ま、俺はチチを諦めたりしねぇけどな」

「いや、貴様は諦めるべきだろ。父親なんだから。」

「うるせぇな」

「俺もあの女が気に入った。カカロットには勿体ねぇよ」

「……てめぇは諦めろ」



リビングで不毛な会話が繰り広げられているとも知らず、悟空はやっと開いた玄関のドアをくぐり、チチを抱き締める。

「悟空さ、キスしてけれ?」

「ああ。」


啄むような軽いキスを繰り返して、悟空は強くチチを抱き締めた。


誰が来たって、絶対渡すもんか。

コイツは、オラのだ。


ぐっと力を込めた両腕に、固い決意を込めて。


**end**




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あきゅろす。
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