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PROMISE
著:葵 藍様






魔人ブウとの激闘の末に勝利し、地球の…宇宙の危機を救った孫悟空。



「はい、悟空さ」
「ん?チチ、それ何だ?」



老界王神の命を貰った事で生き返る事の出来た彼に待ち受けていたもの。

それは…。










【PROMISE】










「何って、悟空さの仕事着と仕事道具だべ」

そう言って笑顔で作業服と鍬を渡すのは、悟空の愛する妻のチチ。彼女の浮かべるその笑顔には、何か逆らえないものを感じさせる。
修行に行ってくる、と…。悟空は毎度の如くそう言って家を出ようとしていたにも関わらず、何故チチがそんな事を言い出したのか悟空には解らなかった。

「いや…、オラ…これから修行…」
「悟空さ」

笑顔で名前を呼ばれ、悟空は思わずビクリと身体を震わせる。何故ならチチの周りを包む空気が一気に下がったからだ。
宇宙一最強など言われてはいるが、悟空は最強なのはチチだと思っている。現に今のチチはあの魔人ブウより悟空に恐怖を与えている。

「約束したべ?」
「へ?」
「セルとの戦いが終わったら働くって…。なぁ?悟空さ」
「い゛い゛っ!?」

チチに言われて思い出す、カメハウスでの出来事。心臓病から復活した後、若干強制的ではあったが確かにチチとそう約束をした。
修行はしたいし、チチから逃げるのは容易だ。しかしそんな事をしたらどうなるか、悟空とてそれなりに学習能力のあるから想像はつく。

「まぁさぁかぁ、約束…破るつもりじゃねぇべなぁ…?」
「(こっ…怖ぇっ…)」

チチが怖い。しかしそれでも悟空は、どうしても修行に行きたかった。昨日の修行で、また強くなれるヒントみたいなものを感じたからだ。
約束を破るのは、チチに本当に申し訳ないと思いつつ…。それでもチチはこんな自分を最終的には許してくれる、悟空はそんな確信があった。
意を決した様に、悟空は一度閉じた瞳を開けて…。

「チチ!すまねぇっ!!」
「あっ!こらっ!悟空さーーーっ!!」

目にも留まらぬ速さで家を飛び出して、空へと飛び上がる悟空。チチの怒声に苦笑しながら、悟空は修行場へと向かった。










空が夕闇色に染まる頃。
修行を終えて帰って来た悟空は、玄関の扉を目の前に立ち尽くしていた。
お腹を空かせているせいか、家から漂ってくる夕飯の匂いに喉を鳴らし…。悟空はドキドキしながら扉を開けた。

「お帰り、悟空さ」
「へっ!?あ…ただいま…」
「もう少しで夕飯出来上がるから、先に風呂さ入っててけれ」
「お…、おう…?」

怒鳴られるか無視されるか、相応の覚悟をしていた悟空だったが…。チチはいつもと変わらず普通に接してきた。

「(チチの奴、いってぇどうしたんだ?)」

悟空は修行の汗を風呂場で流しながら、ただただチチの様子に首を傾げる。
風呂から上がっても、夕飯の時もその後もチチの様子はいつもと同じ。怒っていないのだ、と思いながらも悟空は気になって仕方なかった。
そして就寝の時刻が訪れ…。悟空は風呂上がりのチチにドキドキしながらも、疑問に思っていた事をぶつける。

「なぁ、チチ…。おめぇ、何で怒ってねぇんだ?」
「は?」

チチからしてみたら唐突な質問だったのだろう。何を言ってるんだ、と表情がそう物語っている。

「いや、だってよぉ…。オラ、仕事しねぇで逃げちまったし…」
「あぁ、その事け。それならもう気にしてねぇだよ」
「でもよぉ…」

まだ何か言いたそうな悟空に、チチは優しい笑みを浮かべながら…。

「悟空さは一番守って欲しかった約束を守ってくれたから、おら…本当はそれで充分なんだべ。仕事の事はちょっと意地悪しただけだ」

悟空の厚い胸板に頬を寄せて背中に両腕を回し、嬉しそうにそう言った。
その瞬間、悟空は7年前に交わしたもう一つの約束を思い出す。
7年前のセルゲーム前夜の時。必ず帰って来て、と…。チチが泣きながらそう言っていて、悟空はその言葉に頷いた。

「7年も…、待たせちまったな…」
「うん…。でもいいんだ。おらはこうして悟空さが傍に居るなら、それだけで…嬉しいから…」
「チチ…」

もうそれ以上、言葉を紡ぐ必要は無かった。チチの想いの深さを、改めてよく解ったからだ。
悟空はチチへの愛しさが胸中から溢れ出しそうなのを感じながら、チチを優しく…けれど強く抱き締めた。










生き返る事が出来た彼に待ち受けていたもの。



それは…。



愛する妻の深い愛情。










END




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