誰でも良いから教えて欲しい。
一体これはどういう事なのか。



事の発端はお姉ちゃんからの電話だ。久しぶりに会えないかしら、との質問をふたつ返事で了解したのが昨日の夜。一人暮らしのちらかった部屋を、カリントウをさくさくやりながらうきうき気分で片付けたのが昨日の深夜。
睡眠時間を削るような真似はカガク的に見て良いとは云えないのだけれど、お姉ちゃんがあの部屋を見て呆れるのはごめんだ。もうコドモじゃないことを示して安心させてあげなきゃいけない。


今のお姉ちゃんはとても優しい。9年前のあの日からお姉ちゃんはとても優しくなった。いや、昔に戻ったと云うべきだろう。これも全部、成歩堂さん達のおかげ。ついこの間7年前の事件が解決して、成歩堂さんの無実が証明されたことも手伝って私は最近機嫌が良い。
そして更に更に喜ばしいことに、最近はあのじゃらじゃらした検事に呼び出されることもない。私はこの世の天国を満喫していた。この上久しぶりにお姉ちゃんにも会える。神様は私を見捨ててはいなかったようだ。
そう喜びを噛みしめて眠りに就いたのが今日の明け方。


案の定寝不足で仕事の効率も悪く、そのためにカリントウをさくさくやる回数も増えて警察署を後にする頃には持参したカリントウ一袋は綺麗さっぱりなくなってしまったのだけど、機嫌はすこぶる良好だ。私は急いで家路についた。


そして今私は自分の家のドアの前に馬鹿みたいに突っ立っている訳だ。
鍵が開いて部屋に電気がついているのは分かる。お姉ちゃんには鍵を渡した筈だし先にあがっているなら電気くらいつける。
ただ、お姉ちゃんしかいない筈の部屋から談笑する声が聞こえたり、あまつさえ会話の途中にじゃらじゃらと金属の擦れる音がするのはどうしてだろう。カガク的に見ても、これは非常に良くない展開だ。というか最悪だ。
最後に残された希望、すなわち私の耳が悪かったのだという可能性を信じて金属製のドアノブをひねった。
「久しぶりね、茜」
「お邪魔しているよ、刑事クン」


……思わずドアを閉めたくなった。神様はやっぱり私を見捨てることに決めたらしい。
でも負けちゃ駄目だ。絶対にこのじゃらじゃらした検事に屈してたまるか!
私がそんな決意をしている横でお姉ちゃんが笑顔で検事にお茶を煎れていた。検事も笑顔で受け取る。……ちょっと待って。
「お姉ちゃん、牙琉検事と知り合いなの」
「何を云っているんだい刑事クン。宝月検事は僕の先輩にあたる人じゃないか」
「あんたには訊いてないわよ!」
カリントウを投げつけようとするが、鞄に手を伸ばした瞬間に切らしてしまったことを思い出す。本当についてない。
隣ではお姉ちゃんがニコニコ笑いながら仲が良いのねとか茜もそんな年頃なのねとか勝手に納得している。今だけ昔の冷たいお姉ちゃんに帰ってきて欲しい。


私が一人で頭をかかえていると、お姉ちゃんが検事に向かって「これからも茜をよろしく」みたいな事を話しているのが耳に入った。
慌てて顔をあげるとすぐ近くに整った爽やかスマイル。
「将を射つ時はまずは馬をしとめるんだよ」
昔の人間も良いこと云うよね、と綺麗に笑う検事。後ろではお姉ちゃんが笑っている。
夢なら早く覚めて欲しい。






・巴さんはすっかり丸くなってると良い
・弟はしっかり巴さんを味方につけている気がする
・茜さん絶体絶命
そんな妄想から生まれました。捏造ばんざい。でも証拠品の捏造は良くないです

2007.5.4



あきゅろす。
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