本当に見た目どおりのひとだったんだなあ。
全てを聞かされて真っ先に思ったのはそれだけだった。周りの大人たちは大騒ぎしてあちこち駆け回っていたけれど、こんなに周りをかき乱して去っていくなんて、それこそあの飄々とした男にふさわしい。

彼がただの仲間から特別な存在になったのは、一体いつだったのか。彼は私に特別な事など何ひとつしてくれなかったけど、そのかわりにいつも近くにいた。雑務や研究に追われていた兄さんよりも、彼と過ごした時間の方が長かった。
年齢が近かったからだろう。そして私は初めての同年代の仲間というのが嬉しかったのだ。

周りのエクソシスト達はみんな大人で、友人と呼べるのは彼ひとりだった。自然と私たちはいつも二人だった。彼と一緒に戦って、彼と一緒にご飯を食べるのは、楽しかった。大人たちと一緒の時と違って、気を遣わずにいられた。それは故郷を離れてから初めてのことだった。
その行為自体はただの仲間のものでしかなかったけれど、それでもたったひとりの友達の彼を、私は特別だと思ったのだ。

「リナリー」

透き通るような声だといつも思う。彼のそれよりも少しばかり細い。綺麗な声、男の子なのに、と少し悔しくもなる声だ。
振り返れば白髪の少年がこちらを見つめている。なぁに?と微笑むと、胸がちりちりと痛んだ気がした。
大丈夫ですか、と少年は問う。その姿がとても痛ましくて、私は少し笑ってしまった。大丈夫じゃないのはそっちじゃない。

「きっと、価値観が違っただけだわ」

おそらくそれが全てなんだと思う。私はここのみんなが何より大事だったけれど、彼はそれより優先するべきものがあった。
(仕方ないよね、だってそれが彼の夢だったんだもの)
(そして私たちはみんな、それに敵わなかったんだわ)

「ラビは、リナリーのこと、大事に思ってましたよ」

少年は眉根を寄せて哀しそうに云った。優しいひとだと思う。私はまた微笑んで、わかっていたわよ、と。

「だから私も追いかけようとは思わないの」




***

微妙に連載にしようと目論んでいます。更新遅いけど。地味に地味に続けていきます。


2006.10


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