世界は綺麗だ。だからこの世界で生まれた人間は綺麗で、人間がつくったAKUMAだって本当は綺麗なのだ。少なくとも僕は今までそう思っていて、多分これからもこの考えは変わらない。そう言うと、目の前の少女が妖しく口角をあげた。
短いスカートが風でひらひらと舞う。目をそらすと、ウブだねぇ、と幼さの残る声。風はやまない。スカートが揺れて、病的に白いふとももが見え隠れする。なぜだかひどく背徳的だ。

「ねぇ、アレンー」

少女の喋り方は独特だ。間のびしているのに、隙がない。アレンは少女と同じような喋り方の女を知っている。師匠が家に連れ込んだ女の中の一人で、娼婦であった。けれど目の前の少女は娼婦ではなかった。ついでに云うならば、自分と同じ種族ですらなかった。けれど人外と思い込むことが難しいくらいには、少女は人間臭かった。

「当たり前でしょお?僕だって人間なんだから」
「人間は頭を潰されたら死にます。常識ですよ?」
「知らないよぉ。大体、誰がそんなこと決めたのさ。僕は人間だけど死なないよ?」

けらけらと笑う少女はとても純粋に見えた。真実、純粋なのだろう。けれど其故におそろしい程に残酷になれるのだ。この少女は。アレンを殺さないのもその残酷さ故であって、それが少女にとってどんな意味を持つのかアレンは知らない。
ただ、殺意を向けてこない人間を殺すことなど大抵の人間にはできない訳で、今の少女の態度は非常に卑怯な防衛手段であるとは思う。もっとも少女に殺意が宿ったところで、アレンには少女を殺すことなどできないのだが。

「アレンは卑怯だよねぇ」
「僕がですか?」
「そうだよぉ。だって僕がアレンを殺そうとしても、アレンは僕を殺そうとしないでしょー?怒りもしないし、泣きもしないし、命乞いもしないなら、」
「少しくらいは泣くかもしれませんけど」
「嘘吐き。とにかく、そんなヤツは殺そうと思わないよぉ。殺す価値がないから」

つまんないしねぇ、と。惜し気もなくふとももを晒す少女は、年と不釣り合いなくらいに妖艶だった。背徳だった。それでも良いような気すらした。

「アレン、さっきの話だけどさぁ」
「なんでしょう」
「人間もAKUMAも綺麗だって云うなら、アレンの云うところの、人間じゃない僕は、何なの?」

「多分それがわかった日が、僕とあなたのお別れの日ですよ」



fin


ラブラブを目指してみた。



2006.10


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