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オラにはまだケッコンというものがよく分からなかった。

「チチ、」

毎日、チチがオラより先に起きて朝飯を作る匂いがしてきて目が覚める。
広くてふかふかのベッドの上にはオラ一人だけが寝転がっていて、その隣には誰も居ない。

何となく寂しいような変な気持ちになって、リビングに向かうとテーブルには温かな料理が沢山並んでいる。
チチに言われるより先に洗面所に行って顔を洗って歯を磨いてきてから席につくと、チチは笑っておはようと言いながら温かいスープをよそって目の前に置く。

「おはよ、チチ」

「今日もよく眠れただか?」

毎朝決まってそう聞いてくるチチ。
それに返事をしてからいただきますを言って朝飯に手を伸ばす。
毎日食べても飽きないくらい、チチの作ってくれる飯は美味かった。

「美味ぇよ、チチ」

「あったりめぇだ」

次々と飯を掻き込むオラを頬杖つきながら見ているチチは笑う。
この笑顔だ。
チチのこの優しい笑顔は何だかすごく安心するみたいで好きだった。

いつも怒ったり泣いたり、コロコロ変わるチチの顔で一番好きだった。

「なー、チチ」

一旦食事の手を止めて、隣の椅子ごとチチを側に寄せた。
びっくりしたみたいな顔をしたチチは、すぐにまた笑顔になる。
それを確認してからまた食事を始めた。

「なぁ、悟空さ」

ふと、チチが呼んだ。
もぐもぐと口を動かして、口の中に残っていたのを飲み込んでから顔を上げる。

「んー?」

「…キ、キス…してっ、けろ?」

「へ…っ?」

急にそんな事を言われてびっくりして、何て返したらいいか分からなくなる。
言い出しっぺなのはチチのくせに、真っ赤になって下を向いている。

『キス』が何かとか、どういうことなのかは知っていた。

だけど、毎回どうしてか緊張するし、恥ずかしい。
だから滅多にすることがなかった。

したい、と思ったことは正直に言えば何度かあった。
でもそれがどうしてなのかは分からなかった。

チチの事は好きだし、一緒に居ると楽しい。
側に居てほしいと思うし、触れたいとも思う。

だけど女はそういう事が嫌いなんじゃないのか?
ブルマだってよく亀仙人のじっちゃんに怒ってたじゃないか。

「…悟空さ、早く!」

チチは真っ赤だ。
目は閉じていて、睫毛が長いなぁなんて違うことを考えていた。

早く、と急かされてもじっとその顔を見ていた。

「悟空、さ?」

オラは知っていた。
チチとする『キス』は気持ちいい。
ずっとそうしていたいと思うくらい。

でも、あんまり長くしてたらチチが怒る。
だから本当はしてはいけないような気がして。
いつもやたらと緊張していた。

「…ん……っ…」

ほんのちょっと触れるだけのキスにチチの声が漏れる。
何だか胸がドキドキして苦しくて、もっとしてやりたくなる。

「…チチ……」

そんな気持ちを抑えて、代わりに目の前の華奢な体をぎゅっと抱きしめた。

「悟空さ」

ゆっくりと抱きしめ返して来るチチの腕。

ドキドキはまだ治まる気配がなかった。

「…本当は、もっとして欲しいだよ。おらたち結婚してるんだからな」

小さな声でゴニョゴニョとチチは言った。



300Hitのプチももさまへ。
新婚な悟チチ(悟空視点)で甘、になってたらいいな。
つまらない物ですが、受け取って頂けると嬉しいです☆
リクエストありがとうございました!






あきゅろす。
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