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「白石唇荒れとんなぁ。」

「そうか?」

洞察力が鋭く人の感情の動きにも敏感。
なのにどうして自分に向けられる好意にここ迄鈍感になれるのか。

いっそ聞いてみたい位や。白石は自分の唇の上を行き来する指から意識を反らした


「王子様みたいな顔しとる癖に無頓着なんやから」

「無頓着はユウジもやろ?」

「俺はええねん、別に誰の夢壊す訳とちゃうし」

「あー…そっちやなくて」

「?」

向かい合った机の向こうで机に肘をついて小首を傾げるユウジはただ可愛らしい。

「思わせぶりは罪やろ、て話」

「なにが」

「そんな唇ばっかさわられとったらちゅーしたいのかなって思うやろ?」

「へっ?」

「いっそ食べてまおうかな」

白石の唇に指を当てたままで目をまんまるにして固まってしまったユウジは、白石の唇がゆっくり開いて自分の指を挟もうとする寸前で我に返り慌てて手を引いた


「嫌や!あほ!」

「ケチ」

カチン、と歯が噛み合う音がして空を噛んだ白石が面白そうに笑う

なにか大変な事をしてしまったようなされたような、よくわからない気持ちで一杯になったユウジの顔に熱が集まる

「ひとくちでええんやで?」

「お前のひとくち絶対でかい」

「でかいってどんな風に?」

「………………」

「えっち。」

「っあぁあ阿呆!白石なんか知らん!!」


顔をこれ以上無い位に染めて走って逃げていったユウジを残念に思うと同時にユウジの心をひとくち分、齧る事には成功したかなと白石は笑った。




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