あれからも結局謙也とユウジはなんにもかわらへん
たまに一緒に居るのをみたり部室で楽しそうに笑いあうのをみたりするばかりでなにか進展があったりは一切してないようだ
折角気持ちと向き合う切っ掛けを作ってやったのに。
不甲斐ないやつめ。
「おいこら謙也」
窓の外をぼんやりと眺める謙也の後頭部をべしりと丸めた教科書ではたくとうぎゃ、と変な声をだして肩がびくりと跳ねた
「な、なんや白石」
「自分いい加減白黒つけたらどうなんや」
「なにが」
ユウジの事やと言ってやればばつの悪そうな顔してこっちをみた
「でもなぁ…」
もごもごと口籠もる謙也を辛抱強く待つとちょっとずつ、話し始めた
内容としては友達として楽しくやれてる今が惜しい
例えば告白して振られてしまえば友達に戻れないかもしれない
それが怖い。
そうなる位ならずっとこのまま友達がいい
との事だ
「…あほ。ずっとこのままなんてあるわけないやろ」
あれでいてユウジは人気がある
それこそ老若男女問わずにだ
今年のバレンタインなんて比喩ではなく山のようにチョコレートを貰っていた
本人はこんなのお歳暮みたいなもんやろ、と笑っとったけど
そんなユウジにこれから先恋人ができないとは限らない
それは一年後かもしれないし
もっと先の話かもしれない
けれど明日そうなる事だってあるのだ
「…つまりな、ユウジに恋人ができてもうたらそこでジ・エンド。謙也なんか丸めてポイや」
「……」
「ユウジの目が、例え友達としてでも謙也に向いとるうちに行動しといた方がええんとちゃう?その他大勢に埋もれてからじゃ遅いで」
そこ迄言うたら謙也は渋い顔して頷いた
きつい言い方になってもうたかもしれんが、一応大事な親友、幸せになって欲しい親心やねんで?
「問題から逃げてもなんも解決せえへん、立ち向かう事!」
「…白石、えぇ事言うなぁ…」
まあ、受け売りやけどな、そう言ってやったらやっと謙也が笑った
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