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オレがどれだけ拒否しても
ここにあるこの世界。



なんで。



問うには殖えすぎたことば。

「君は」

なするには汚すぎた、

ことば。













真っ赤だ、嘘臭さ。

造り物みたいに妙にプルプルしていた、ほそい管、実際には思っていた程リアルじゃなかった。しかもぬるついていて、滑る。気持ち悪い。
「なんでこんなの入ってんの、体」
フニフニ。摘んで、爪を食い込ませたらやけにあっさりと切れた。興味が急激に削がれた、更にそれが何だかすごく汚くてなお気持ちの悪いものに思えてきてしまったので咄嗟に指から離す。軽く弧を描いてから小さく間抜けな音をたてて獄寺君のフニフニした管は床に落ちた。棄てられたのは獄寺君の一部だったもの。オレの大切な獄寺君のなかにあったもの。
でもきらいだ。
獄寺君から切り離された瞬間それは死んだ。獄寺君は苦笑いを浮かべながら一言も喋らずにオレを見ていた。無関係の傍観者みたいに。
変なの。
「…………さあ、奇跡の地球と進化のロマンですかね」
しばらくの間の後やっと口を開いたかと思ったら獄寺君は何だかつまらない事を云った。わけがわからない。赤い。いらいらする。ぬるぬるする。
オレはそのまま獄寺君のすぐ横に腰を下ろして彼の、今はどことなく青ざめている血の気のない顔に触れた。そのまま白い額に手をおくとその場所で玉になって浮いている汗は思った通り脂っぽくてすごくじっとりとしていた。でもそのぬるつきは、もしかしたらオレの手に着いていた汚れのせいかもしれなかった。獄寺君の顔がオレの手にたくさんついていた血で赤く汚れる。血液は、なんでこんなに赤いのだろうかなんてふと思った。
「てかってる」
「やめて下さいよ、脂ぎったハゲの中年に使うような表現は……」
「いたいの?」
「ええ……そりゃあ、まあ、…オレの腕ですし」
「うん」
「血管も、あんま無いと結構困るモンなんで……できればそんな粗末に…扱わないで頂けたら、すげえいいんスがねえ……」
「うん。そうだね」
君はいつも正解な解答だけ突き付ける。そうだ、いつだって頭がよい、とても。
だからいつもわけのわからないことばかり云う。頭のわるいオレには理解ができないことを云う。その口から落っこちるのはわからないことばかりだ。
理解ができない。死ねばいい
オレの要らないことばたち。
「獄寺君」
「ハイ……今度は何でしょう」
「くちきかないでよ」
「さっきも云いましたよねソレ」
「じゃあなんで喋ってんの」
「10代目がこうやって喋らすからでしょう」
「でもオレ喋ったらだめって云ったんだろ」
「……返事を促されたらこたえないと…なあ、と」
「だってオレ命令したんじゃんか」
「どっちにしたって怒るんでしょうが、返事しても、しなくても」
「おこるよ」
でも、獄寺君はおこられたってちゃんとオレのいうこと聞かなくちゃいけないんだ。
「……………」
「だって……………、…じゃあさ…いいよでも、とりあえず血い出すのはやめてよ」
「ハイ……? それはオレにはどうにも……」
「だってぬるぬるして気持ち悪い」
「………じゃあオレの腕切って血管やら、神経やら引っ張り出して遊ぶの止めて止血できるモン貸して下さいよ。それか救急車」
「…やだ」
「……ハア…、そろそろオレ貧血で…、いい加減視界とかヤベんスけど。頭ぼんやり」
(嘘つき)
「だって獄寺君と今一緒にいたい」
オレの獄寺君。
――は、大切だ。とても必要、好きだといってもいい。
「一緒にいてくれなくちゃ、だめだ」
(でもさ、結局なんもかんも予定調和なんだよ)
獄寺君を見上げる、オレ。まっすぐ絡みあうまなざし。
獄寺君のみどりの目とオレのちゃいろの目がそのまま融けてまざり合ってしまいそうだと思った。それもいいな。
二人で融ける、そしたら――…
「……………そりゃ、まあ…10代目と一緒に…居たいですよオレ……」
獄寺君は眉間に皺を寄せて瞼をぎゅっと強く閉じた。そのままおおきく溜め息をつきながら空いているほうの無傷な手で自らの頭をガシガシと掻きむしる。


「煙草吸っていいスか」


獄寺君はまた勝手なことを云った。本当はいつだって自分の希望ばかり。最低、最低。
オレを蔑ろにする。
でも同時に彼はすごくオレのことがすきなんだろうなとも感じた。
堪らなくいらいらする。
「いいよ。別に吸いながらでもさ」
「…は?」
「セックス。するんだろ」
腹がたった


……から、包帯と消毒薬は顔面目掛けて投げ付けてやった。



******





今日だってまた毎日のなかの一日
何もかわらない。
繰り返す今日かわらないまた、またそう云って、そして君も
……膚は、熱は。
(まだ生きてるね)
「君も、オレも…っ…」
愛とも違うどこかで縋って。
「ハ…ッ…あ、アう…」
肉体が、ここにある。シーツもベッドも酸素も汗も息も、眼球があって、君がいて、見える、世界、空間、命……?


「……おわれば、いいのに……ッ」


おちるのも、あがるのだって、一瞬。








君がオレに背くから、終わらない世界。
拒否しても、してもまだオレ目の前にある。


「…ッ……なんで、殺してくんないの…」


おなじことばを繰り返す。
(あつい……)
オレを呼ぶ声がする、君。泣いてる? オレが……?
(……もう)
安くなってゆくのはオレのことばなのか、それとも命のほうだろうか。
オレがまだ生きているのは獄寺君がオレの言葉を最優先にしなかった証拠。
そんなものいらない。
獄寺君もオレもみんななくなってしまえばいい。


だいきらいだ。



そして君は今日もオレを殺さない。
「……なあ」


獄寺君、







「殺せよ」

















〔END〕
【20070801*ドルチェヴィータ/dagaz】






PUBLICATION BGM
EVERYWHERE YOU GO〜Burning Ver./Masahki Endo
TIME DIVER/Akira Kushida











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