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「ねえ、ふざけないでよ」

目一杯、怒気を含ませて言ってやった(つもり)。だって、だってなんなの、これは。

「ふざけているつもりなど全くありませんよ。」

嘘だ。嘘じゃなかったらセバスチャン、あなたってどれだけ鬼畜で嫌なやつなの。そんなに積み上げなくてもいいじゃない。バランスを崩さないのが不思議で堪らないわ。

「こうしておかないと、あなたがまた抜け出してしまいますからね。」

くっそう。どうかしてやろうか。




毎日毎日稽古に勉強に仕事、復習と予習もしなきゃいけないし、難しい書類とは辞書を片手ににらめっこ。唯一の休憩時間もシエルにおちょくられたりセバスチャンから課題を出されたり。もうとにかく何もかもが嫌になって、パーティーにいる女の子みたいに私も華やかに楽しく毎日を過ごしたくなって、…昨日の夜、こっそりベランダから屋敷を抜け出したの。
でもやっぱり私には暗い夜の街を一人で歩く勇気もなくて、かといって泊めてくれる知り合いもいなくて。どうしようもなくなって、とりあえず庭の木にのぼって朝がくるまではここにいようって、眠ったの。

すると、誰かにほっぺたを軽く叩かれて。重い瞼をあけるとあら不思議。私の部屋の天井が。あれ抜け出したはずなのになってあたりを見渡すと、それはまああからさまに怒ってますオーラを出しているセバスチャンがいた。

それからあとは、セバスチャンにこっぴどく怒られて、シエルにも軽く怒られて、ついでにタナカさんにもやんわり怒られて(心配しましたよって)、何でかバルドにも怒られた。

そして今。私の部屋にはいくつもの塔ができている。塔は窓やドアの前にたっていて、クローゼットやら机やら椅子やら何やらで作られている。てっぺんは天井までとどいていて、登る気なんて到底おきない。
ね、ここまでしなくてももう十分反省してますって。

「ねえ、外が全然見えないじゃない。」
「仕方ありません。」

あなたが抜け出すのが悪いのです。飄々と言ってのけるセバスチャンを思いっきり睨んでやった。
外が見えなくなった部屋は少し暗い。嗚呼、なんだか檻みたいね、泣けてくるわ。

「…お嬢様、」
「……なによ」
「私だってこんなことはしたくありません。」

じゃあしないでよ、と言おうとした瞬間に唇を塞がれた。

「…もうあんな心配をかけさせないで欲しいのです。朝部屋のドアをあけた時、あなたがいなくて心臓が止まるかと思いました。」
「…分かってるわ…反省してる。」

素直にそう言うと、セバスチャンは微笑んで私のおでこにキスをした。

「……でも、こんな毎日もう嫌なの。楽しくないわ。自由な時間が欲しい。」

なんだかセバスチャンの目を見て言えなくて絨毯を見ながら話す。こんなこと、誰にも言ってない。

「…そうでしたか…。」

心なしかセバスチャンの声は沈んでいて、心が苦しくなった。私のこと、ワガママって、根性なしって思ってるのかな。

「…でもしょうがない、よね。」

分かってるよ。本当は分かってるから。この家に生まれてしまったその日から、自由なんてないのよ。少しだけ、言ってみたかっただけ。少しだけ、現実から離れたかったの。

「…ごめんなさい、セバスチャン」

あれ、なんだか泣きそうだ。なんでだろ、
床を見てたら涙が落ちそうだったから、上を向く、と抱きしめられた。

「…そうですね、ですから、私がいるのですよ。」
「…え、」
「楽しくないのなら、おもしろくないのなら、私が楽しくおもしろく変えて差し上げます。主にはいつだって気分よく仕事をこなしていただかなければ。ならば日々を変える、それも執事たるものの務めです。」

嗚呼セバスチャン。あなたってやっぱり嫌なやつね。あんなに怒られた後にそんなこと言われると泣きたくなっちゃう。それにこんなに言われちゃ期待しちゃうじゃない。変わるかもって。

「…期待していいの?」
「もちろんです、お嬢様。」

























(とりあえずこの塔はどけてくれるわよね?)
(……はい)





















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カオスすみません;;;



















あきゅろす。
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