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ねえゆーちゃん、バレンタインのチョコはどうだったの?

ゆーちゃんはママに似て可愛いから、貰ったのよね??チョコレイトv


えっ、1個も貰ってないの…そんな!?やっぱりフェロモンが足りないのかしら?

ああっそうだ!今日はゆーちゃんの為に特別に特大のチョコレートケーキを作ったのよ!


ねっねっおいしそうでしょ?ママの愛を受け取って!!





今年もモテナイ男には厳しい季節がやってきた。

おふくろは毎年興味深々でおれが貰ったチョコの数を尋ねてくるが、色好い返事をしたことが無い。

ちなみに渋谷家の長男、渋谷勝利は意外と外面は人当たりがいいため、おモテになるらしい。


いや、しかしチョコをあげた相手がギャルゲー好きの登場キャラに弟の名前を付けるような奴だと知ったら女の子はどう思うだろうか。



街はバレンタインで色めきたっていた。公衆道徳おかまいなしにイチャつくカップルを横目に、なんだか見慣れた人物を目にした。


「おぉ〜い村田ぁ!」

おれが手を振ると、村田は紙袋を両手にブンブンと手を振り返した。


「渋谷!?帰りが一緒になるなんて珍しいね」

おれの親友兼仕事上のパートナーはまるで終業式の日に慌てて教科書を持って帰った小学生のような大荷物だった。良く見ると鞄もパンパンだ。


「ちょうど良かった〜ねえ渋谷。悪いけど、半分持って!!」

つき出された袋を手にすれば、ずっしりと重かった。

「こんなに大荷物でどうしたんだよ〜」

「今日は何の日だかぐらい渋谷だってわかるだろ?」

村田はうんざりしたように言い放った。


「まさか…チョコ!?村田ってモテるんだな」


手元の袋を良くみれば、色とりどりのラッピングが施されたチョコがぎっしり詰まっていた。


「まったく困るよね。これを全部食べたら糖尿病になっちゃうよ」

確かに。それにしても贅沢な悩みだなぁ。……ん?でも…村田の学校って…。


「おいっ村田。それってもしかして全部男から…?」

「そうだね。中には手作りチョコだってあるよ。見る?」


薄ピンクの包装紙に赤いレースのリボンでキレイにラッピングされていた。まさかこれが男の作ったものなんて、誰も思わないだろう。


メッセージカードにはDear村田様と一言書かれてあった。



むっ村田様!?






見たくもない男子校の実態を見てしまった。共学で良かったとしみじみ思う。


「それにしたって量が多すぎないか?どんな生活をしているんだよ」

「べっつにふつーだよ。ただみんな勝手に僕にまとわりついてくるだけ」


女王様ですか!?


「でもたまに、体操着とか上履きがなくなるんだよね。それがちょっとね…」


何かもうコメントが浮かんで来ない。目の前にいるダイケンジャー様のパワーを改めて知った。


「ところで渋谷はどうだったの?チョコ」

村田はおふくろと同じ興味深々顔で尋ねてきた。

「1個だけど…」

今年は運良く、クラスメイトの女の子からチョコをゲットした。クラス全員に配っていたから義理以外の何者でもないが。


「1個!?なんてこった。渋谷は毎年ジェニファーさんの手作りケーキだけだって聞いていたのにっ」


村田は大袈裟にのけぞった。


「何でそんなこと知ってるんだよ!!」

「ジェニファーさんとあの前電話したときに教えてくれたんだ!」
「最近の長電話の相手ってお前かっ!?」

「ジェニファーさんと僕はそれはんもう仲良くさせていただいてますよ!」

「…なんかお前と話していたら、疲れてきたよ」


ガックリ肩を落とすと、村田は慰めるように肩を叩いてきた。


「そんなに落ち込むなよ〜渋谷にはこれからすることがあるんだから」


すると村田はキレイに包装されたチョコレートのリボンをほどき、おれの首に器用に蝶々結びをした。例の赤いレースのリボンをだ。

「なっ何をする気だよ」

「何って日頃お世話になっている眞魔国の皆さんにプレゼントをあげようと思って」


鼻唄まじりに聞こえてくるのは……バレンタイン○ッス!?


「まさか、おいまさかだよなぁ!」


村田の肩を思いっきり揺さぶるも、視線をそらしニタリと笑った。

「渋谷、あそこに池があるだろ?あの池に会いたい人を想いながら飛込むと、その人に会えると言う活気的な池なんだ。その名も想い池!!」

「いやいやいや。そんな古いネタなんて、誰もわかんないって」

「そうかな〜名作だよ?まあ、とにかく眞魔国へゴーだよ!本当に想った人のところに行けるからさ!」


相変わらずマイペースな村田は俺の背中を思いっきり押した。



いつものようにスターツアーズ、


おれの脳裏に浮かんだのは……。





やはり眞魔国のことを思い出すとき真っ先に考えるのは、名付け親であり、今は恋人のウェラー卿コンラートのことだったらしい。


今回は何故か水を介してではなく、なんとストレートにコンラッドの膝に乗っかった形で眞魔国へやって来た。


流石のコンラッドも少し驚いていたようだが、おれと目が合うと頬を人なでして、

「おかえりなさい、陛下」

と微笑んだ。


「陛下じゃないだろ?名付け親」
おきまりのセリフもこんな至近距離だとなんだかくすぐったい。


「可愛いですね、今日はまた一段と」

「可愛いって言うな」


照れ隠しにいつものセリフを切り出すと、何かを思い出したかのように、おれの首に結んであるリボンを軽く持った。


「成程。バレンタインですか」


良く見るとリボンにはセントバレンタインと英語で刻まれていた。

「あっそれは村田が…」


「…猊下に感謝しなければなりませんね」


コンラッドはおれの首に結んであったリボンをゆっくりほどいていく。


「コンラッド?」


「こんな素敵なプレゼントをいただいたんですから」


わざわざ耳元で囁くコンラッドに意味を理解して顔が赤く染まった。


村田め、それが狙いだったんだな。お節介な友人に怒る気も無くす。

なんだか笑い出しそうな気分だ。

コンラッドに身を任せるとゆっくり瞳を閉じ、甘い口付けを待った。


Happyvalentine恋人達に幸あれ!



End






あきゅろす。
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