6.あれは恋だった
人間なくした時に大切なものを気付くことが遥かに多い。
そう、君は早く気付くべきだった。
「馬鹿だねぇ、渋谷。今頃 気付いたの?」
呆れ顔で腕を組むと、渋谷の顔が百面相し始める。
「何だよ 村田!……ってえ!?知ってたの」
「知ってたのってそっちの方が驚きだよ」
思わず肩をすくめた。何を言ってるんだろう、この魔王サマは。
「え、なに!村田だけだよなぁ?知ってるのって」
「グリエは一般常識だと思ってるし、ビーレフェルト卿も知ってると思うよ。」
「うわっハズい!んじゃおれが気付くのが一番遅かったってこと!?」
「そーだよ。ビーレフェルト卿なんて、いつも嫉妬して、むちゃくちゃウェラー卿のことボロクソ言ってたじゃないか」
「あーそうかも。おれ馬鹿みたい」
「全くねえ。僕にしとけばいいのに……」
「え、何か言った?」
「んにゃ何でもない。で、どうするの?」
「どうもしないよ。過去形」
「過去形?」
「あれは恋だった……現在形には変えられない」
じゃあそんな顔しないでよ。
END
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