【愛し君よ】
ぼくは知ってるんだぞ。
ユーリ…お前が僕の隣りで一人で声を押し殺して泣いているのを
決まってあいつの名前を呼び続けているのを
「大丈夫」「平気だって!」と言い続けて、無理に明るく振舞いつづけてるお前を
ぼくが気付かないとでも思っているのか?
泣きはらした赤い目にコンラートを想って泣いているお前に気付かないフリをするのも限界に近づいてきていることお前は気付かないのか?
今日も泣きつかれたユーリが枕に顔を埋め、シーツを握りしめている。
少し汗ばんだ髪からはシャンプーの匂いがぼくの鼻をくすぐる。
こんなに近くにいるのに、
こんなに手の届く場所にいるのに、ユーリの心はコンラートに攫われたままだ。
そしてぼくの心はずっと…
シーツを握り締めていた手が空を彷徨う。
「…コンラッ…コンラッドぉ」
そんなときは手をしっかり握りしめてやるんだ。
コンラートの代わりなんて、吐き気がするが、愛しい君が泣かないためなら、ぼくはなんだってするんだ。
誰も悪くない。
それは何となくわかる。
でも、
だけども、
「コンラッド…すきっ…好きだから、置いてかないでっ…」
いちばん
なきたいのは
ぼくだ。
だれもわるくないのに…
世界はこうもから回る。
End
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