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守ってくれてありがとう。


そばにいてくれてありがとう。


数え切れないほどのありがとうと言う感謝の気持ちを、おれは彼に伝えられていただろうか。



「俺の顔に何か付いてますか?」
「別にっ何でもないよ!」



コンラッドにお礼を言おうと決意したのはいいけど、改めて言うのはなんだか気恥ずかしい。

そんなおれの気持ちを知ってか知らずか、コンラッドはおれの頭へぽんっと手を置いた。



「何かありました?」

「…伝わってるのかなぁって思って」

「伝わっているって何を?」

「グレタが言っていただろう?気持ちは態度で示さなきゃって」

「そうですね」

「いつも本当にありがとう。コンラッドがいなければ、この国でうまくやっていけたかどうかわからないよ」



いつも地球育ちのおれをよく理解し、馴染めるように裏でいろいろ動いてくれたことをおれは知っている。


ホームシックになったときも、
モルギフを取りに行ったときも、不安なおれの心を察して慰めてくれたし。


何よりも『ユーリ』という名前を与えてくれた名付け親だ。このキモチをどうやったら彼に返せるだろうか?


「お礼を言うのは俺のほうですよ。ユーリは俺に生きる希望をくれた大切な人だから」


少し目を細めて温かくおれを見つめた。


「俺は貴方がこの世に生まれてきただけで、満たされるぐらい嬉しかったんです。だから」



おれのために付いてしまった傷何個も知ってる。いつも自分が傷つくのも構わずおれを守ってくれるけれど、コンラッドはおれのためなら腕でも胸でも命でもくれるって言ったけど、おれが欲しいのは…



命を盾にして守るボディガードはいらない。

そんなに懸命におれが傷つかないように、汚れないようにする必要もない。


おれを壊れ物のガラス細工みたいに守ってくれるコンラッドが怖いと思うことがある。


何も出来ないお姫様な訳じゃないから、おれにも何か守るものがある筈だから。



「ねぇ、コンラッド。前におれに腕でも胸でも命でもくれるって言ったよな?あれって本当?」

「もちろんです。あの言葉に偽りはありません」

「じゃあ腕も胸も命もいらないから、あんたの心を頂戴?」

「心、ですか?」



「そうだ。おれはなにも出来ないへなちょこ魔王だけど、大切な人の心くらい守らせてくれ」


見つめたコンラッドの瞳は銀の虹彩が眩しいほどキラキラ光っていた。


コンラッドは自分の胸におれの手を触れさせると

「俺の心は最初から貴方のものです」

と言った。


「さっ最初から?」
「最初からだよ」


コンラッドはおれの腕を引き寄せて、腰を抱くと、包むように抱きしめた。


「それに貴方は気づいていないかもしれないけど、今までもずっと俺の心を守り続けてくれた。もう充分なくらい…」

「じゃあおれはどうしたらこれからもあんたの心を守ることができる?」

「俺のそばでずっと笑っていてください」

「…それだけでいいの?」

「ええ、俺はユーリさえいてくれたら幸せですから」



コンラッドはおれの顔を手で触れると、すっと頬に優しく口付けた。


窓から優しい光が射し込む。


「…ありがとう」



真っ赤になりながらおれは今日二度目のお礼を彼に伝えた。




end




凛様からのリクエストでした。





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