放課後、四人で立ち寄ったとあるファミレス。時間帯的にもそれ程混雑はしていなかったので、すぐに席へ案内してもらえた。
「兵助、何か飲む?それとも、何か食うか?」
「…んー…、甘いもの食べたい」
「…甘いもの…、ケーキとかパフェあるぞ」
「……どっちも…」
「…だーめ、どっちか一つ」
席に着いて早速、そんなやりとりを見せる二人を雷蔵がくすくすと笑う。甘える久々知と、それが可愛くて仕方ない竹谷。本当に、可愛らしいカップルだなと思う。
「…ほら、雷蔵は?」
「…へ?」
「何か、飲む?」
「…んー…、どうしよう…」
鉢屋と一緒にメニューを覗き込む。しかし、なかなかこれが決まらない。よくある事だ。
悩み始めると、本当に決まらないのだ。
「どれとどれで悩んでる?」
「…えっと…、アイスミルクティーと、レモンティー」
「わかった」
え?と聞く前に、メニューが閉じられてしまった。よくわからないまま首を傾げていると、向かいの二人も、どうやら注文が決まったようだ。
すると、タイミング良くすぐ側をウエイトレスのお姉さんが通ったので、鉢屋が声をかける。
注文する品を聞いて、雷蔵は、きょと‥と鉢屋の方を見た。そして、仄かに頬を赤らめて、小さく笑った。
「…と、あと、アイスミルクティーとレモンティーで」
なかなか決まらない彼女の為に、半分ずつと言う提案だ。雷蔵は、嬉しそうに鉢屋の服を掴んだ。
「…ん?」
「えへへ、ありがとう、三郎」
「いいよ」
そして、優しく撫でてくれる手に、思わず抱きつきたくなってしまう。しかし、ここは外。我慢、我慢。
「ははっ、雷蔵の悩み癖は相当だもんなー」
「だってぇ」
「いいんだよ、可愛いから。悩んだら、俺が両方買ってあげる」
「…もう、三郎ったら」
彼女を甘やかすのは、男なら誰だって同じ。鉢屋に同じく、竹谷もだ。
結局、ケーキとパフェを注文する事になってしまったのも、最終的には、彼女の可愛さに敵わないからだ。
「へへ、はち、好き」
「ったく、俺も甘いよな」
腕に抱きついてくる久々知の頭を、優しく撫でた。
その様子を、雷蔵がまたくすくすと笑う。
お互い、こんなにも彼らに愛されている事を、本当に幸せに思う。
そしてそれは、彼らにとっても同じ事だ。こんなにも可愛らしくて、愛おしい存在が側に居てくれる事を、何よりも最高の幸せだと思っている。
「…可愛いなぁ、まじで」
「だな、こんな可愛い子、他にはいない」
「…?」
「…?」
そしてまた、きょとん‥とする顔が可愛らしくて本当に堪らない。
緩む頬を何とか抑えて、何でもないよと笑いかけた。
「…、ほら、クリーム付いてる、兵助」
「…ん、ん」
「…、おし、取れた」
「ったく、お前等は親子か」
笑う雷蔵とは反対に、呆れた様子の鉢屋がため息を吐いた。
健気におしぼりで拭く竹谷が、本当に父親のように見えてしまって…。
しかも、久々知もそれをしてもらって当たり前のように思っているから余計にだ。
「…違う!‥あむ‥」
「……」
「…恋人、だもん」
「だよなー、…あ、また付いてるぞ」
「…ん」
「…もう、いい。好きにしてくれ」
それよりも、俺は可愛い雷蔵を見ている事にするから。
隣を見ると、ちゅう‥とストローを加えてミルクティーを飲んでいた。
その可愛らしい唇に、今すぐにでもキスをしてしまいたい。チラっと、大きな丸い瞳と視線が合うと、にっこりと花のような笑顔が咲いた。
その余りの可愛らしさに、思わず眩暈を感じてしまう程だ。
「おいしい?雷蔵」
「うん」
「レモンティーもあるからな」
じゃあ、と。次はレモンティーに口を付ける。結局、半分ずつとは言っても、甘い鉢屋の事だ。全部雷蔵の為に頼んだのだろう。
彼女の嬉しそうな笑顔が見れるのなら、本当に何でもしてあげたくなってしまう。
「…甘いなぁ、三郎も」
「お互い様、だな」
「まぁな」
仕方ない。だって、本当に可愛いのだから。
「…ね、そういえば…、雷蔵」
すると、今までもくもくと食べていた久々知が、一段落して雷蔵に声をかけた。
竹谷と鉢屋も、氷が半分溶けてしまったお冷を飲みながら、話を聞く。
「すごく、気になってたんだけど…」
「うん?」
「聞いていい?」
「なぁに?」
首を傾げて、久々知に応える。
「…雷蔵の胸がおっきいのって…、三郎に揉んでもらったからなの…?」
一瞬、空気が固まったような気がした。
「ぶはっ!」
噴出された水にぎゃっ!と叫ぶ声が響いたが、向かいに座り合っていた竹谷と鉢屋には同じ被害が及んでいた。
「…ななっ、なっ、何を…」
「だって…、揉むとおっきくなるってきいたから…、おっぱ…もがっ」
「こらああ兵助!こんなとこで!」
「んぅっ、だって!気になったんだもん!」
「だからってなぁ!」
ぎゃんぎゃんと言い合いを始める二人を見て、鉢屋は二度目の大きなため息を吐いた。
隣には、顔を真っ赤にさせて、胸元を隠す雷蔵。
確かに大きいが、雷蔵はあまりそう言った話題をしたがらない。年頃ではあるが、極度の恥ずかしがり屋でもあるからだ。
「…雷蔵」
「…ふぇ?」
「気にするな、兵助の言う事だ」
彼女の性格が天然故に、こう言った驚くような発言も今に始まった事ではない。突然、思い出してはお構いなしに発言するのだ。
「…兵助、ほら、雷蔵困ってるだろ?」
「……、ごめん…雷蔵…」
「…うっ、ううん!いいよ、平気だよ」
竹谷に頭をコツンと小さく叩かれて、謝る。でも竹谷には、もう一度、だって‥と甘えるように言っている。
至近距離で見つめ合ってこそこそと話す二人を見ていると、何だかこっちの方が恥ずかしくなってくる。
何となく、飲んでいたレモンティーに視線を戻すと、隣に座っていた鉢屋が頭を撫でてきた。
「…さぶろ?」
「…何か、あいつらばっかむかつくからさ」
俺も、雷蔵とラブラブしたい。そんな事を言うものだから、雷蔵の顔は再び真っ赤になってしまった。
「…だって、はちにもっと…」
「ん?」
「…満足してもらいたくって…」
「…!…ばか、もう十分過ぎるぐらい満足してるっつーの」
「でも…」
「俺は、兵助だから好きなの。兵助の心も身体も、今のままで十分最高だよ」
「…は…ち」
「だあああストップ!!!」
場所を弁えず、目の前で今にも抱き合ってキスをしてしまいそうな二人に鉢屋が急いで割って入る。
ほんと、二人ともがどうしようもない。
雷蔵は、そんな二人のせいで、更に縮こまってしまっていて…何だか可哀相だ。
「このバカップルが、家でやれ家で!」
「…むぅ」
「拗ねても駄目だ!つーか八、お前までのってどうする」
「はは、わりぃ、つい」
「…ったく」
呆れてものも言えない。
頼むから、お前は理性ある人間で居てくれ。
隣を見ると、何とか落ち着いたらしい雷蔵も、漸く顔をあげた。まだ仄かに赤い顔は、やっぱり可愛らしい。
「雷蔵、ごめんな」
「ごめんね?雷蔵」
「ううん、いいよ」
「お前等、可愛い雷蔵の優しさにまじで感謝しなさい」
「もう十分してるもーん、ね、雷蔵」
「ふふ」
「…ったく、ちゃっかりしてんなぁ」
久々知にそう言ってやると、同時にみんなの笑い声が重なった。
こんな風に、くだらない、平凡な日常がずっと続いてくれたらいいな。
何も、特別なものはいらない。
大好きな友達と、そして、大好きな君が、隣に居てくれたら…。
日常は、きっとずっと輝いて見えるから。
≫彼女が可愛くて可愛くて仕方ない彼氏ズが萌えます^///^
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