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胸を締め付けられそうになるその後ろ姿。頑として顔を見せないものだから、困った彼は、仕方なくその後ろ姿を見つめる事で間を保つ。

涙腺が意外な程に弱い彼には、やはりこの映画もその類に入るようだ。
可哀想な事をしてしまったか…。そう、思った。
思ったが、それでも、この映画を二人で見たかったのだ。


「…さ〜ぶろ」
「……」
「……大丈夫か」
「……お前、っほんと最悪」

その声は、弱々しい程に頼りなく。涙混じりのそれは、日頃の強気な彼を想像すらさせにくいだろう。


茶色いクセのある髪を、伸ばした手で優しく撫でる。
パシッと払いのけられたが、気にせず、また撫でる。

二、三回とそれを繰り返せば、観念したように、抵抗をやめた。

しかし、なかなかこちらは向いてくれない。




「…俺も、途中ちょっと泣きそうになった」



大の男が二人で、と、きっと笑われるだろう。

しかし、恥ずかしい奴らだと、思われてもいい。
馬鹿みたいだと、思われてもいい。


あんな風に、時をも越えていくような強い想いが、きっとあるのだと信じてみてもいいじゃないか。


竹谷は、目の前の彼もまた、そうであってくれればいいなと思う。




「…そういや、あの、…茶髪の男の方さ…、三郎に、ちょっと似てたよな」

歩き方とか、笑い方とか
つまらなさそうな顔とか、一つ一つが、まるで三郎を連想させるようだった。

その度に何度も胸を締め付けられそうになった事は、敢えて言わない事にした。



だってこいつは、三郎なのだから。



「……っ…れは」
「…え?」


「……っ俺は、…消えたり…しない」



赤くなった目元は、悲しいまでの色をしていて、それを真っ直ぐにぶつけてくる。

涙腺が崩れると、感情もうまく制御できないのが彼だ。
まるで、それが現実でも起こり得る事のように、思っているのだろう。



「…あぁ」
「…俺は…ここにいる」
「…わかってる」
「……ここに…、ここに……側に…」
「…うん」

縋りついてくる身体を、優しく抱き寄せる。

その、自分と同じだけの背丈や、それなりに、しっきりと鍛えられた身体。
小さい、柔らかい、そんなものとは無縁だ。


しかし、この、触れた先の感触から生まれてくる愛おしい感情は一体何なのだろう。


堪らなく、愛おしいのだ。




「…俺も、消えない」
「……」
「…ちゃんと、ここにいる。な」


解りきった事でも、言葉にする事は、大事だと思った。


前髪をかき分け、そこに口付けを一つ、二つ。

不満そうにこちらを睨みあげる目は、どうやら、何かを言いたそうだった。





「……消えたりしたら……意地でも探し出して…ぶん殴ってやる」


掠れ声で囁かれた台詞が、強く脳内に残った。




大丈夫。
例え、どこへ消えてしまっても

どこまでも追いかけて、俺も、必ずお前を捕まえてやる。







≫某映画のキャラが三郎すぎたので(笑)







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