こんな天気の良い日には、見知った町を散歩して一日を過ごすのもいい。
毎日通っている筈でも、見落としている風景は意外に多いものだ。
「…あれ?ここ、こんな木あったっけ」
「あったよ。毎日通ってるだろ?」
「…むぅ。…知らなかった」
手を繋ぎ、立ち止まり、歩調を彼女に合わせていると、なかなか先へは進まない。
本当にゆったりとした、散歩日和だ。
しかし、それをとても楽しんでいる自分がいた。
こんな時間を過ごすのも、本当に久しぶりだ。
「…はち、次はこっち、行ってみよ?」
「…あぁ、いいよ」
繋いだ手を引っ張って、新たに見つけた道を進み出す。
そんな姿を、小さく笑いながらも、久々知の赴くままに着いていく。
見ているようで、見落としているものは本当に沢山あった。
それこそ日常を、余裕なく過ごしているからなのだろう。
勿体無い事をしていたなと思う。
ふと、楽しそうな笑い声が隣を走って行った。
「…子供も結構いる」
「あぁ、この先に確か公園が…」
「……あっ」
「……おっ…、盛大に転けたなー…」
一人、輪から遅れて走っていた子供が道端に置き去りにされている。
次第に泣き声が辺りを大きく響き渡った。
しかし、その子の友達も、助けてくれる大人も、誰も今はここには居ない。
竹谷は、困ったように、優しく笑った。
「…ちょっと待ってて、兵助」
「…うん」
繋いでいた手を離し、泣き喚く子供へと歩み寄る。竹谷の大きな身体に並ぶと、子供が本当に小さく見える。
何だか、胸がきゅう‥と熱くなった。
「…よっ…と、…大丈夫か〜?…ん、どこ痛い?膝か?」
「…ふぇっ…えっ、っ…おひざぁ…」
「…お〜、よしよし、痛かったな〜」
小さな身体を抱き上げて、優しく笑いかけて。
気が付けば、子供は、しっかりと竹谷の懐に懐いていた。
まるで…、父と、子のように
「…ふふ」
「お、兵助」
「…大丈夫?」
「……ん」
子供特有の柔らかい髪を撫でる。
竹谷の腕の中は、余程心地が良いのだろう。小さな身体は、まだこのままで居たいと言うように全身を預けている。
端から見ると、自分たちは今、一体どのように見えているのだろうか…。
…やっぱり……
密かな期待が、膨らんだ。
漸く元気を取り戻した子供は、嬉しそうにこちらへ手を振りながら走って行った。
今度は転けるなよ!と、竹谷の言葉を背に受けながら。
隣の見上げた横顔は、何だか嬉しそうに笑っていた。
聞いていた通り、やっぱり彼は、子供が好きなんだなぁと思う。
「お?…どうした?」
「…んーん、何でもない」
「…そっか」
不意に、数日前の事を思い出す…。
『仲良いご夫婦ね』
『……へっ?』
『……あー…』
『…あら、違ったかしら』
『……まだ、ですけど。…近い将来、そうなります』
あの時の、笑顔でそう言ってくれた彼の言葉が、何度も頭をよぎる。
道を歩いていた優しそうなお婆ちゃんも、嬉しそうに笑っていたのを思い出す。
恥ずかしくて、でも、幸せすぎて
泣きそうになるのを必死で我慢して、竹谷の手をぎゅ‥と握った…。
「…帰るか」
「…うん」
もう、気が付けば辺りは夕焼けの色に染まっていた。
穏やかな町並みを、美しく描いている。
歩いてきた道をまたゆっくりと戻り始めた。
この先には、きっと、まだ見た事のない風景が沢山あるのだろう。
いつまでも変わらないでいてほしい、風景と、町と、人々。
もっと、大切にしたい。
だから、これからは
毎日を、もう少しゆっくりと、生きてみようと思った。
彼と、一緒に…
≫まとまりなくてすみません;;でも、やっぱり竹くくは甘甘が一番ですね^///^書いてて萌えました(笑)
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