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甘いもの禁止の続き




悪い部分が完治した時の気分とは、何と嬉しいものなのだろうか。普通でいる事が、こんなにも有難い事なのだと強く思う。
歯科へ通い続けていた日々も漸く終わり、今日は待ちに待った約束の日。



「…はち!」
「はいはい、まずはここな」

繋いでいた手を引っ張られ、竹谷は苦笑しながらも彼女の思い通りに店内に入っていく。
甘ったるい匂いが立ち込める店内は、やっぱり竹谷にとってはあまり居心地は良くなかった。





「…こんなに食えるのか?」
「ん、大丈夫」

寧ろ、まだ満足いかないらしい。その足で、次の店へと向かう気満々のようだ。
別に、彼女の為に金を使うのが惜しいとかそんな事は勿論思わない。いくらでも、買ってやれるものなら買ってやりたいし、今のこの嬉しそうな表情、見ていてこちらもついつられてしまう。

しかし、虫歯が完治したとは言え、これではまた再発してしまうのではないかと心配にもなる。




「早く!早く!」
「はいはい、わかったわかった。いくらでも買って差し上げますよ、お姫さま」
「へへ」

手を引かれるまま、竹谷は健気に彼女の後を着いて行った。







「うへ〜…しっかし…本当に食えるのかぁ?」
「大丈夫!」
「…まぁ、残ったら明日にでも置いときゃいいけど」

低いテーブルの上を、ケーキやらドーナツがぎっしりと並べられる。見た目的には美味しそうではあるのだが、いざ食べてみろと言われれば恐らく自分は無理だと竹谷は心の中で呟いた。


温かい紅茶もいれて、久々知は満足そうな顔で竹谷の足の間にちょこんと座った。
最近は、意識さずにこうやって床に座る竹谷の足の間に納まるのだ。その姿を目の当たりにする度に、緩む頬を抑えられない。何たってこんなに可愛いのか…。思わず、その細い躯を後ろからぎゅ‥と抱き締めて肩に顎を乗せる。

早速もくもくと食べる様子も、可愛らしい。



「…はちも、食べる?」
「…あー…」
「…ん、……おいしい?」
「……甘い」

一口、口に入れた途端に広がる甘い味。美味ではあるが、それ以上を欲しいとはやはりあまり思わない。
しかし、久々知はそれらを難なく食べられるのだから素直に凄いなぁと思う。
この細い躯の、一体どこにそれだけが入るのだろうか。


「んん、くすぐったい」
「…あ、ちょっとだけお腹ぽっこりしてきた」
「っ…やぁっ!」
「あははっ、可愛いお腹」

途端に顔を赤くさせて小さく暴れるが、それでも口元が止まらないのが本当に可愛らしい。


ああ、何て幸せそうな顔…。



「おいしい?」
「…ん、おいしい」
「幸せか?」
「…うん」

そっかそっか、と、笑いながら久々知の頭を撫でる。それすらも、目を細めて嬉しそうに受け入れる姿はまるで甘える小さな子供のようだ。


「…はちが…」
「…ん?」
「……はちが、いるから……もっと幸せ」
「……」

しかし、生まれる感情は、子供に対するものとはまるで違う。


愛おしい
この細い躯も、ふわふわな髪も、甘く香る唇も…

堪らなく、全てが愛おしい。



「…兵助、俺も甘いもの、食いたくなった」
「…どれか、食べる?」
「…あぁ、…」
「…んっ…、…んぅ」


じゃあ、俺は


この極上の甘い躯を
ゆっくり味わうとしようか…。






≫後日談でした(*^∀^*)







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