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「委員会に行ったぁ!?」
「ああ、今日も一段と気合い入ってたぞ」

教室の前で、その事実に呆れながら食満は頭を抱えた。約束したと言うのに…人一倍熱血な彼は、委員会となればその事をも忘れて行ってしまうのだ。
まぁ、日頃勿論、食満との時間を何より優先してくれてはいるので、こんな事もたまにならば許す。

しかし、今日は普通の日ではない。今日は2月14日、即ち、バレンタインなのだ。
数ある記念日の中でも、特に恋人の為に用意されたような日だと言うのに…。


「もんじのやつ〜…」

そりゃ文句の一つも言いたくなる。
しかし、行ってしまった以上は仕方がない。
彼は、委員会に行ってしまったら最後、なかなか戻って来ないのだ。熱心なのはいい事だが、待つ身にもなってほしいものだ。


「仕方ない…、今日も待つか」
「…ふ、渡すのか?」
「……へっ?…なっ、べっ別にチョコレートなんて…」
「……ぶっ、解りやすい奴だな。まぁいい、私はもう帰る」

食満は、意外にも解りやすい人間なのだ。
そうして話していた仙蔵は、笑いながらそう言うと、そのまま教室を出て行った。

残された食満は、自分の教室ではない事に若干の違和感を感じたが、もう鞄も手に持っているので仕方なく、文次郎の席で待つ事にした。彼の鞄がまだ残っていたのでとりあえずは安心だ。

そして食満は、携帯を弄りながら延々と時間を持て余していた。









++++++


「げっ、もうこんな時間か」

また今日も、委員会が終わった頃には外は暗くなっていた。いつもの事なのだが。

文次郎は、校内の時計を見て足早に教室へと向かっていた。




すると、その時


たまたま通りかかったとある教室から、会話が聞こえてきた。どうやら、男女の声のようだ。

文次郎は、特に気にする事なく通過しようとした。しかし、その時一つの単語が耳に飛び込んできた。




“今日……バレンタイン……”




文次郎の足は、ピタリと止まった。それはまるで、全く動かなくなったかのように。


そして、一瞬にして思い出した。それこそ、何故さっきの今まで思い出せなかったのか不思議なくらいに。




「うわあああーーッ!!」



すっかり、約束を忘れていた。

今日は、学校が終わったらデートをすると言っていたのに…!しかもっ、“バレンタインなんだから絶対だぞ!”なんて超可愛らしく言われていたのに…!!


俺としたことがああああ!!!



ひたすら文次郎は、自分を思いっきり殴ってやりたい気持ちで走った。


あああ、今晩電話で謝って許してくれるか…
きっと相当怒ってるよなぁ…


とにかくそんな事を考えながら、ひたすら走った。







教室の前に漸く辿り着いた文次郎は、とにかく落ち込んだ。
折角のデートも、バレンタインも台無しだ。

まぁ、全て自分が悪いのだが…


深い溜め息を漏らしながら、文次郎は真っ暗な教室の戸をガラッと開けた。



だが、その瞬間
飛び込んできた一つの姿に、文次郎は驚きの余り固まった。そして思わず、目を擦る。


「え…嘘、だろ?」

予想外すぎて、嬉しさよりも驚きの方が大きかった。

ゆっくりと、自分の席に近づく。机に伏せて、小さく寝息をたてる存在。
こんな真っ暗な放課後に、彼女が居た事がまだ信じられなくて…だが、同時に愛おしさがふつふつと湧き上がり、今すぐにでも抱き締めたくなった。


「……留」
「…ん…?」

しかしどうやら、眠りは浅かったのか小さな声と気配で食満は起きた。少し、ぼーっとしてはいるが…辺りを見渡して、それから、漸く文次郎に気がついた。



「……ッ!文次郎!!」

「とっ留…!今日まじで悪かっ…「えいっ!!」

「…へっ?ッ…うわああ!!」




ドッシーン!!




「…いって〜」

怒られる…!と構えた瞬間、思いっきり食満が飛びついてきた衝撃で、受け止めたまま尻餅をついてしまった。
凄い音なりに、痛い。

しかし、今居るこの存在の前には、どうって事はない。


「…留」
「…バカもんじ。もんじってやっぱりバカ」
「…だな、大バカ者だ」


ぎゅう‥と抱き付いてくる温もりも身体も心地よくて、文次郎も強く抱き返す。
本当に愛おしくて、仕方ない。


彼女は、こんな大バカ者を、こんなにも愛してくれる。




「くす、どうせチョコレートだって一つも貰えてないんだろ」
「…いっ、いいんだよ別に」
「うん…、そう、それでいいの。…貰ってたら、許さない」
「…留」

「バカなもんじは、私だけを見てればいいんだ」


そうして、文次郎の頬に小さくチュッと口付けを送った。



そう、私の事だけを見て
私の事だけ考えて



こんなにもアナタを愛せるのは、私だけなんだから…



「…今日泊まってやる。そんで、目一杯詫びろ!」
「…ははっ、…勿論、喜んで」


そして、ゆっくりと、彼女の柔らかな唇を優しく塞いだ。




まだ、バレンタインは終わっていない。



本日は、甘い甘いチョコレートと一緒に




お前の身体を、存分に味わう事にしよう。






≫この後自宅でがっつい頂かれます(^q^)初々しめな竹くくと違って文食はちょっと大胆だといい…!にょた食萌えます!







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