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ーーガッシャーンッ!!



それは、昼の事。食堂に辿り着くよりも手前の廊下で、食器の割れるようなもの凄い音が響いた。歩いていた竹谷は、びっくりして食堂へと足早に駆けていく。

「おいっ!一体何が…」
「うぇーん」
「…へ、兵助…」

大体竹谷自身が問題に遭遇する場合、その原因の半分以上はこの、久々知兵助だったりする。
別に、嫌だとか、迷惑だとかは思っていない。しかし、またか…と、力が抜けてしまうのは事実だ。


「あーあ…こりゃまた…」
「うぅ…」

竹谷は、その光景に少しばかり驚きながらも、へたり込んでいる久々知の側まで歩み寄って、大丈夫かと声をかける。
久々知の周りには、無惨にも散らばる今日の献立たち。盛大に、ぶちまけたようだ。

「…伊作先輩、こいつ、何やらかしました?」
「ん?…はは、何も悪い事はしてないよ。ただ、転んじゃったんだよね」

まるで子供に問い掛けるように、伊作は優しい声で久々知に言った。
丁度今の時間、下級生は大体食べ終え、上級生が食堂を占領している時間。

「全く、注意が足りんぞ、久々知」
「…文次郎が言うか。お前だってこの前盛大に転んで…」
「わあああ仙蔵!」

それを見ていた、文次郎や仙蔵も、こちらへ来ては倒れた茶碗を片付ける。


「おわっ!どしたのこれ!」
「………」

すると今度は、今からお昼タイムらしい、ろ組の小平太や長次もやってきた。目の前の光景に、驚いている。
流石に、混雑してくる時間帯でもあったので、次から次へと上級生がやってくる。
竹谷は、自分もまだ昼をとっていない事に気が付いた。これはゆっくりしては居られないと、急いで立ち上がる。

「ほら、兵助。先輩たちにばかり任せてないで、ちゃんと自分で片付けろ」
「…うん」

涙目で弱々しく頷くと、久々知も一緒になって片付ける。時折、伊作や長次に頭を撫でてもらいながら。

全く、一年生じゃないんだから…とも思うが、実際六年生には可愛がってもらっていると思う。特に久々知は、何と言うか、放っておけない性格なので尚更だ。
学年が近いと、張り合って仲が悪いなんて言うけれど、四年、五年、六年はみんな何だかんだと仲が良い。

まぁ、昔はよく…張り合ったりもしていたけれど



竹谷は、自分の分のお盆を手に取ると、すぐ側の席に座って久々知を呼んだ。

「兵助!」
「…なに?」
「こっち、おいで」
「…?」

片付け終えた久々知は、みんなにお礼を言うと、まだしょんぼりとした様子で素直に竹谷のもとへやってきた。

「ほら、座れよ」
「…ん」

言われた通り、竹谷の隣に座る。落ち込んでいる時は、いつも以上に素直で、子供みたいになる。
結局、俺も先輩もそれが可愛くて仕方ないのだ。

「…ほら、これとこれ。それから、これな」
「……八…」
「食わないと保たないだろうが」

久々知の前に、二つの皿と、そして、彼の大好きな豆腐の皿を並べてやる。本当は、全部でもやりたいのだが…それでは自分の腹が保たない。
でも、それで久々知はみるみるうちに嬉しそうな顔をしてくれたので、良しとしておこう。

「ったく、気をつけろよ次は」
「うん!」

嬉しそうに食べ始める久々知につられ、自分も漸く昼を迎える事ができた。



しかし、その時

「はい、久々知」
「ほいっ、くくちー!これあげる!」
「……食べろ」
「仕方ないから、俺のもやろう」
「何だ文次郎、素直じゃないな。…久々知、私のもやろう」
「…仙蔵ぉー貴様一言多いぞ」

「……わぁ…」
「……すげぇ、今日の献立より…多くなった、な」

突然の降りかかってきた先輩たちのあげるコール
みるみるうちに、久々知の目の前は皿でいっぱいになった。本人は、驚きながらも、やがてその喜びは笑顔に変わる。

「ありがとうございます!先輩!」


そして竹谷は、隣で嬉しそうな久々知にソッと、目を細めて笑った…。




それは、そんなある日の、ほんの小さな騒動だった。






≫うちの久々知は非常に甘えたで子供なんです←優秀な子ですけどね!^^
…………食満、忘れ…てないよ!あえて出さなかっただけでs…ごめんなさい






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