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「兵助!わがまま言うな!」

ひょんな事から、いつの間にか口喧嘩に。大抵の場合、八割型は久々知の方に非があると言えるかもしれない。
竹谷は、学園の中でも、至って常識のある人種だ。個性の強い上級生が揃う中で、優しく後輩想いである彼は、やはり一際下級生にも慕われていた。
だからか、今回も、恐らくは久々知のわがままか何かが原因だろうと誰もが予想してしまう。

それぐらい、人望のある生徒なのだ。


「わっ、わがままなんて言ってない!」
「わがままだ!俺が困る事、解ってるだろう!」
「なっ…」

しかし、こうも竹谷がストレートに叱る事も珍しい。この二人は、隠しているつもりが隠せていない程の、仲良い恋人同士なのだ。
いつもは、竹谷も大抵久々知を甘やかしている。

筈なのだが…


「そんな事言う兵助は、…嫌いだ」
「…っ」

日頃から、言われた事のない言葉を言われ、久々知は言葉を詰まらせた。

八が…俺を、嫌い

嫌い…
嫌い…


「……っ」

だって、だって
俺は


「…ただっ…八と…っ…もっとっ‥、一緒…に」


わがまま…、なのだろう。
でも、決して困らせたくて言っている訳じゃない。
ただ、少しでも多く、一緒に居たいだけ…

「へっ兵助!?」
「う〜っ」
「わああっ…泣くなよぉ」

あっさりと、糸が切れてしまったらしい。ポロポロと泣き出す久々知に、流石に竹谷は焦った。
小刻みに動く身体を抱き寄せ、優しく頭を撫でる。
少し叱りつける程度のつもりだったのに、竹谷は自分に後悔した。クラスが違うと、中々一緒に居る時間は少ない事ぐらい自分も痛い程知っている。

それなのに、嫌いなんて言ってしまって…

自分だって本当は、もっと彼を独占したいとさえ思っているくせに…


「…兵助、ごめん」
「うっ…うっ…」
「嫌いなんて、嘘だから」

ソッと久々知の額に唇を落とす。濡れた瞳が、おずおずと此方を見上げてきた。
竹谷は、優しく微笑むと、鼻先、頬、そして、唇に優しく口付けを繰り返す。

「ん…八…」
「…やっぱり、お前にはかなわないよ」
「…ふぇ?」

口付けに酔いしれて頬の赤い久々知を見つめ、まぁ、それでもいいか、と、竹谷は小さく笑った。


わがままな子だなんて、思わないで。
ただ、一緒に居たいだけ…






≫何を言ったかは適当に想像してやってください







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