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ルビーが中学生になって数ヵ月が経った。


何が変わったって何もかもが変わった。
あたしが進路に悩み出したのもそうだけど、とにかくルビーだ。
背はみるみる内にあたしを追い越し、目線を少し高くしなければその深紅の瞳を見つめることが叶わなくなった。
肩幅も広くなり、入学当初は着られていたと言っても過言ではない学ランを、今となってはすっかり着こなしてしまっている。

華奢であるようでいてしっかりとついた筋肉はもはや男性そのもので。
あたしに見せる笑顔も純粋なそれに加え、どこか妖艶な色を含むようになった。

相も変わらず女子にモテまくりで、今でも1日3回は告白されるらしい。

単刀直入に言おう。彼は大変色っぽくなった。
大人へと、そして男性へと、驚かずにはいられないスピードで成長し近づいていっているのだ。

そう自覚するたびに、胸がざわついて仕方がない。


「あの一件」以来、あたしたちは幼馴染みのような、あたかも恋人同士のような、何とも言えない不思議な関係を続けている。

今日も今日とて、「サファイア。」と優しく呼びながら大人びた笑みで迎えに来てくれたルビーに、明るく微笑み返し、いつものように一緒に登校することしかできないでいる。

ああ、この感情は、この関係は、一体、なに?



「どうしたの?サファイア。」

「…へ、え?」

「なんか元気ないみたいだけど。」

「えっ、あ、ごめんち。」

「どうして謝るの?何かあった?」


心底心配そうな表情でこちらを見るルビーに、申し訳ないような気持ちと共に、熱いような切ないような感じたことのない感情が湧いてくる。
ざわり、ざわり、胸が騒ぐ。

何と言っていいか分からずに、何となく笑みを浮かべて「進路にちょっと悩んどって」と適当な言葉でその場を濁した。

それを見透かしたのかルビーが怪訝そうな顔をするので、余計に申し訳なくなってしまった。

違うよルビー。あたしはルビーに嘘をつきたいわけでも言い訳をしたいわけでもない。(進路で悩んでるのは本当だけど。)
ましてや困らせたいわけでもないんだ。
本当に何て言っていいのか分からないだけなんだ。



「…サファイアは大学に行くんだよね?将来博士の研究所継ぐために。」

「そ…そうたいね。」

「近くの大学だよね?」

「うん、行くなら通える範囲たい。」

「それなら良かった。」


にこりとほんのり嬉しそうにルビーが笑う。
首筋も、横顔も、本当に男っぽくなってしまったとつくづく思う。
…いやいや、一体何を考えてるんだあたしは。


「それより、本当に何もないの?大丈夫?」

「ああ、うん。大丈夫とよ。」


元気をアピールするためにガッツポーズをしてみたら、ルビーが優しく楽しそうに笑った。


ルビーは解っている。
あたしが最近おかしいことを。
腹の内に訳の分からない抱えきれない感情を隠し持っていることを。
それでも見守ってくれる彼は本当に優しくて、そして本当に大人になった。


「サファイア?」

「うん?」

「好きだよ。」



ほら、そんな笑顔でさらっとそんなことを言うから。

そんなことを言えるようになったから。

胸のざわつきが止まらない。


何も言わないあたしの手を、何も言わずに握って歩くルビーがどこか遠くに見えて、背中がとても広くて、何故だか切なくて、あたしは本当に狡い人間だと自分を責めずにはいられなかった。


ざわり、ざわり、ざわり、
一歩ずつ、得体の知れない感情が大きくなっていく気がした。






前回から2年後の設定です。
サファイアの感情もついに変化期です(^O^)






あきゅろす。
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