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それすら愛しく感じる
「もう隊長なんて嫌いです」
ぷい、と、きれいな顔を背けて、イヅルは言うた。
「堪忍やて、イヅルぅ〜」
猫撫で声で近寄れば、きっ、と睨む深蒼の瞳。きゅう、と回した腕をぺちりと叩く。
「ヤ、です。もう、愛想が尽きました」
離せ、と言わんばかりに腕を攻撃してくる細い腕。構わずにぎゅう、と抱き締めてやると、ぴたり、抵抗が止んだ。
「もう、イヅルだけやって」
「……狡い」
腕の中で小さく震えるからだ。
俯きに、金糸が顔へ掛かって表情は窺えない。
けれど、わかる。
――泣き虫さんは、困るなァ。
ふふ、と笑えば、何笑っているんですか、と不機嫌そうな声。
「イヅルがあんま可愛えから、」
そう言えば、もう、と照れくさそうな声が聞こえた。
ああ、そんな君も愛おしい。
(0619)
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