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今日は目が覚めたら暑くもないのに汗が出て、起きたいのに起き上がれなかった。
でもそれは少したったら治まったから、おれは飯も食わずにユースタス屋のところへ行った。
理由は簡単、無性に会いたくなったから。
ユースタス屋の船までの道程がやけに遠いと思った。
それからいつもより地面が柔らかかい気がした。
ユースタス屋の船の下に着いたら頭の中でサイレンが鳴った。
ユースタス屋の船の階段をのぼっている最中になんだか目がチカチカした。
もう少しで船長室だというところでキラー屋に話しかけられたが、言葉が聞き取れなかったのでそのまま船長室に入った。
ユースタス屋は椅子に腰かけて新聞を読んでいた。
ユースタス屋、と声を出したかったのにまったく声が出なくて口をぱくぱくさせるだけだった。
それでもユースタス屋がおれを見てくれたから気にならなかった。
嬉しくなってユースタス屋に近付こうとしたら視界が揺れた。






「目ぇ覚めたか」

ぱちり、とまばたきをする。
ユースタス屋がいる。
あれ、でもここはおれの船じゃない。
ここはユースタス屋の船だ。
それからユースタス屋のベット。
考えようとすればするほど頭がボーとする。

「テメェ、ここに来たこと覚えてるか」

少しだけ記憶を辿って、そういえばやたらとふわふわした気分でここまで来たことを思い出した。
今日一日で不思議体験をいくつも経験したように思う。
なかなか楽しかった。

「人の部屋に入るなり倒れてんじゃねぇよ」


…倒れた?
倒れたっておれが?
なんでだろう。
日射病か、いや、今日はたしか曇りだったし。
朝食を抜いたからか、いや、いつものことだし。
あ、ユースタス屋が溜息ついた。
なんだよ、溜息つくと幸せ逃げるんだぞ。

「38.6°」

さんじゅうはちどろくぶ。
なんだそれ。
むぅと顔をしかめた。
ユースタス屋は俺の眉間を指でこついた。
それからまた溜息。
もったいない、幸せが逃げるのに。

「テメェの体温だよ」

おれの体温?
おかしいそんなはずない。

「おれの体温は35°だ」

かすれた声が出た。
ユースタス屋はまた溜息をついた。
今日三回目。
すでに三つも幸せが逃げてる。
もったいない。
ああ、もう、さっきから頭が全然働かない。

「熱があるから高ぇんだろーが」

ユースタス屋はまた溜息。
四つ目の幸せが空気に溶けた。
今度溜息をついたらおれがもらってやろう。
だってもったいない。
うん、おれさっきからこればっかり。
頭はまわらないけど、ユースタス屋に会いたかったんだ。
それだけははっきりしてる。

「医者だろーが」

「内科と外科は別だ、ばーか」

けらけらと笑えば呆れた顔。
それもそうかとか、納得したり。
でも、会いたかったんだ。
無性に会いたかったんだよ。
ユースタス屋、お前にこれは伝わるかな。

「あいたかった」

ただそれだけだけど、それが一番大切だと思うんだ。
腕をあげてユースタス屋に伸ばしたら、手を掴まれて優しく握られた。
なんだかこそばゆい気分。
おれたちには似合わない行動。

「わかったから、寝ろ」

「命令するな」

わかってないよ。
ユースタス屋といるのに寝るなんて、もったいない。
ねぇ、もったいないんだ。

「ここにいるから、ちゃんと寝ろ」

ここにいるっていつまで。
目が覚めるまでなの、熱が下がるまでなの、それともずっといてくれるの。
これはおれの我が儘なのかもしれない。
だけど今日ぐらい許してくれてもいいじゃないか。











会いたがり
(熱が出てもユースタス屋を忘れなかったおれに免じて!)











キッド大好きなローさん


あきゅろす。
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