!現パロ注意
!原作ペンギンっぽい(not双子)
喫茶店でバイトを始めた。
バイト自体初めてだった。
食器洗いさえ数えるほどしかしたことがなかった。
「おはようございます!」
うん、おはようっておれの頭をくしゃりと撫でながら店長は笑った。
三年くらい前に家の近所に出来た喫茶店。
この喫茶店が募集していたアルバイトの定員数はたった一人だった。
そんな喫茶店の面接を、駄目元で受けてみたら採用された。
入ったことはなかったけれど、ガラス越しに見える店内はいつも落ち着いた雰囲気があって、わいわい騒ぐことが好きなおれには似合わないな、と思った。
でも、ずっと一度でいいから入ってみたいな、と思っていた。
喫茶店はブラックコーヒーが飲める大人が行く場所だと思っていた。
高校生のおれが、入っていい場所だとは思えなかった。
「なのにバイトだなんて、おれは何を考えてんだか」
「なーにが?」
エプロンを結んでいたら、後ろから声をかけられて、ひゃあ!と素っ頓狂な声が出た。
変な声ーと笑って茶化されて、おれは睨むことしか出来ない。
二十六歳独身、腰まであるブロンドの髪をブラウンのリボンで軽く結っているここの店長、もといキラーさん。
見た目はチャラいが中身は物腰の柔らかい優男だ。
この喫茶店の立地条件がそんなによくないのにバイトを一人雇えるくらいに儲かっているのは店長の人柄の良さのお陰だろう。
「お客さん来るまでゆっくりしてていいよ」
「はーい!」
ゆっくりのんびりとした話し方はこの喫茶店に合っていて、やっぱり騒がしいおれは場違いな気がしてならない。
店長がいいなら、いいんだろうけどさ。
―――カラン
あ、誰か店に来た。
この喫茶店が混むのは大体正午から午後三時。
今はまだ十時を過ぎたところで、普段ならカウンターで学校の宿題をやっていたり、店長が作った試作品のケーキを食べていたりする時間だ。
「久しぶりだな」
店長の声にカウンターを覗いてみれば、見慣れない赤い奴がいて、この喫茶店にはあまり合っていないな、と思った。
背が高くて、ごつくて、眉毛がなくて、赤くて、店長の知り合いには見えなかった。
けれど、店長はどこか楽しそうで、オーダーを聞いていないのに店長特製のブレンドコーヒーを入れはじめた。
二人のやり取りを眺めていたら、赤い奴と目があってしまって、びくりと肩が揺れてしまった。
「あ?…誰そいつ」
「ああ、キッドはまだ会ってなかったか」
おいで、と店長に手招きされて、赤い奴の前に立たされる。
やはりでかくて、見上げていると首が痛くなりそうだ。
「バイトのペンギンくんで、こっちが幼馴染みのキッド」
「へぇ、ここってそんなに儲かってんの」
店長と幼馴染みだという赤い奴は、ぐるりと店内を見渡した。
昼前の店内はがらんとしていて、決して流行っているようには見えないだろう。
「まあ、それなりにな」
店長の返答に赤い奴が怪訝そうな顔をした。
それに対して店長は可笑しそうにアハハと笑った。
今度はおれが顔をしかめる番だった。
店長が笑うことなんてよくあることだけれど、声を出して笑うところは初めて見た。
この人は静かに笑うのが癖だと思っていたのに。
自然とおれの頭を撫でた店長の顔はやはりよく見る表情だった。
優しく微笑むくらいなら
(なんでこんなにムカつくんだろう)
社会人×高校生+幼馴染み=?
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