最近、キラーがやたらとキスをしたがる。
出会った当初は外そうともしなかった仮面を部屋に入った途端惜し気もなく外して、おれに擦り寄ってくる。
愛されている、自覚はある。
愛している、自覚もある。
ほだされている気もするし、ほだしている気もする。
気持ちを教えてもらったし、気持ちを教えた。
要は、おれとキラーは恋人同士で、お互いそれを恥ずかしがるような歳でも性格でもない。
「ペンギン」
キラーはよくおれの名前を呼ぶ。
おれは必要がある時以外は呼ばない。
キラーはよく手を繋ぎたがる。
おれは二人っきりの時だけ繋いでもいいかと思う。
キラーはよく抱き着きたがる。
おれはたまに抱きしめてほしい時がある。
キラーは人に触れていることが好きなのだと言う。
誰でもいいわけではないらしい。
おれは人の話を聞いていることが好きだ。
誰でもいいわけではない。
キラーとおれの感覚はどこかずれている。
お互いそれは理解できていると思う。
「ペンギン、抱きしめたい」
おれの返事を聞くことなく、後ろから抱きしめてきたキラーは、おれの帽子を剥ぎ取った。
素顔はとうの昔に晒しているし、今更隠す気もない。
うなじの辺りをあぐあぐと甘噛みされて、擽ったさに身をよじった。
振り向いて見れば、キラーの顔が思った以上に近くて慌てて身を引いた。
その後すぐキラーが顔を寄せてきたので、ごまかすようにキラーの肩に顔を埋めた。
身体もキラーのほうに向き腰にぎゅうとしがみつく。
「ペンギン、避けたでしょ」
耳元で拗ねた声が聞こえて思わず笑ってしまった。
すんすんと鼻を鳴らして耳裏を嗅ぐものだから、また身動いでしまう。
「はは、だってさあ…」
避けてしまう。
キラーの顔が近づいてくる度に避け続けている。
手も額も頬も瞼の上も掌も腕も首も、耳だってキスを許した。
それでも一カ所だけ、口だけはどうしてもキスをしたくなかった。
「だって?」
「んー、内緒」
なんで、教えてよ、とぎゅうぎゅう締め付けてくる腕をあやして、また笑う。
言えない、言わない。
これはおれが勝手に決め付けたことだから。
だって、
(未練があればお前は帰ってくるだろう?)
帰ってくる、という表現自体が間違っているとわかってはいるけれど
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