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美大生パロ(みんなイラスト学科)




じゃーんけーん、ぽん

気の抜けた掛け声と共に振り下ろされた五つの手は、二つのグーと三つのパーに分かれた。



「なんでおれが買い出しなんだよ」

「負けたからな」

現在十八時五十分前。
つまりは売店が閉まる十分前。
課題を学校で終わらせてしまおうと意気込んだおれ達は午後の授業が終わってから早々に課題を始めたはずだった。
少なくともおれとペンギンは真剣に課題をやっていた。

「ユースタス、どこまで出来た?」

「あー、ラフ出来たから下書きの下書きしてた」

そうか、と短く答えたペンギンは財布の中身を確認していた。
おれも釣られて自分の財布を覗き込めば、まぁそれなりの金しか入っていない。
それなのに奢れと脅してくるトラファルガーには怒りを通り越してむしろ拍手を送りたい。
しないけど。

最後まで残ると言い切ったトラファルガーに便乗しておれ達は残った訳だが、問題は晩飯だ。
おれとキラーがルームシェアしているマンションは大学から自転車で五分。
飯を食いに家に一度帰ることも出来る。
だが、問題はトラファルガー達三人だ。
三人がルームシェアしているマンションは自転車で二十分はかかるとか。
しかもトラファルガーは今日、バスで来たらしい。
帰る頃にはバスがないから歩きなのは確定だ。
そんな訳で売店に晩飯を買いにいくことになったのだが、全員で行けばいいものをトラファルガーが動きたくないなどとややこしいことを言ったので、ジャンケンになった。
その時点でおかしいのに、ジャンケンは真面目に課題をやっていたおれとペンギンに買い出しさせるというやるせない結果に終わった。
というか、こういう時のための学食じゃないのか。

「そういやトラファルガーが学食にいるの見たことねぇな」

「食べ切れないらしい」

食べ切れないってなんだ。
確かに食が細いのは知っているが、そこまでだっただろうか。
おれが作ったハンバーグとか、普通に食べてたぞ。
それ以前に学食にはミニうどんとかミニソバとかライス小とかトラファルガーにうってつけなものがあるだろうが。
何が嫌なんだよ。

売店に着けば、外に出していた商品をおばちゃんが片付けているところだった。
軽く挨拶をして残ったパンとおにぎりの中からさっさと自分の分を選び、トラファルガーが言っていたカロリーメ○トとスポーツ飲料を手に取る。
あとスナック菓子を一つ。
ペンギンを見れば同じような状態でレジに向かっていた。
相変わらず仕事が早い(使い方違う気がするけど)

「今、アイス全部五十円引きなんだけど、買わないかい?」

ペンギンがレジに商品を置いたところで、おばちゃんが声をかけてきた。
ちょうどアイスボックスの隣に立っていたおれは、ほぼ無意識にそれを見た。
なるほど、確かに五十円引きと書いた紙が貼ってある。
それを確認して、レジに向き直ると、見越したようにペンギンと目があった。
その視線は、どうする?と訴えている。

「あー、五十円引きは惹かれるけど、今月切り詰めてるから止めとくわ」

おれの返答に少し残念そうにするおばちゃんには悪いが、やたらと金のかかる恋人がいるのだ、どうしようもない。
潔く諦めて、レジの方に一歩足を踏み出したとほぼ同時に、ペンギンがこちらにきて、おれの足は中途半端に止まった。

「今月余裕あるから、奢る」

ローの面倒見てくれてるし、とペンギンは財布を軽く持ち上げた。
クールな顔してこの男は、そういうところまで完璧なのか。
持つべき友はペンギン、これに間違いはないだろう。
こういう奴が一人いるだけで、何でも円滑に回るものだ。

どうせあいつ等も欲しがるだろうから、と五人分買おうとするペンギンに当分頭が上がらないだろう。

「ユースタス、好きなもの選べ」

「悪ぃな…じゃあ、これ」

おれがアイスボックスからソーダ味のアイスを取り出したら、ペンギンはその横から林檎味のアイスキャンディを手に取った。
続けざまにハー○ンダッツのグリーンティーをアイスボックスから出す。

「それ、トラファルガーの?」

「あぁ、よく分かったな」

分かるも何も、人の金でわざわざハーゲン○ッツを食う奴はトラファルガーぐらいだ。
あいつは遠慮のえの字も知らない奴だから。
ハーゲ○ダッツがトラファルガーのということは、迷わず取ったのを見る限り、林檎味のアイスキャンディはペンギンのものだろう。
あのお堅いと有名なペンギンがアイスキャンディを持っているというだけで、急に親近感が沸く。

「後はキラーとシャチだな」

「キラーはソフトクリームが好きだったはず」

キラーの分を手に取って、ペンギンを見れば、もうすでにシャチのであろうアイスが持たれていた。
シャチは質より量って奴だから、と言い残してペンギンはレジにアイスを置いた。
シャチが安くつく後輩でよかったかもしれない。

「つーか何で残ってんだ?あいつ一年だろ」

「シャチは一人分の飯が作れないんだ」

てことはなんだ、シャチはペンギン待ちで、ペンギンはトラファルガー待ちってことか。
ついでにキラーはペンギン待ちだし、おれはトラファルガー待ちだ。
結局、全員トラファルガー待ちで、誰も咎めないのだから、そりゃあ、あんな我が儘女王様になるわけだ。

おばちゃんに代金を払ってビニール袋を片手に外に出る。
都会と違って光の少ない田舎にあるこの大学は、星がよく見える。
親元を離れて暮らすぐらいの価値はあると思う。
まぁ、スーパーが遠いのと、コンビニがないのが難点と言えば難点だが。

そうこうしている内に着いた教室のドアを開けると、教卓の上でポーズを取っているシャチと、タイマーを見ているキラーと、机に座ってシャチをクロッキーしているトラファルガーがいた。
まぁ予測はしていた。
こいつ等が監視の目がない中でちゃんと課題をやっている訳はないのだ。











クロッキーしようぜ!
(そんな満面の笑みで言われても)











結局この後みんなでクロッキー大会(クロッキーは短時間で人とかを描くことです)(人によって書き方は様々なのですが、だいたいはシルエットを描く感じ)

大学が閉まるまで入り浸って、みんなでキッドの家で晩御飯を食べたんじゃないかな


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