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刺青捏造注意




ペンギンは難しそうな本を熟読していて、おれにはまったく関心がないらしい。
会話らしい会話は、ペンギンの部屋に着いた直後、飲み物は何を飲むかと聞かれただけだ。
それから五時間、沈黙は続く。
ペンギンが本を読んでいる時に話しかけると不機嫌になることは知っていたから、おれは特にすることもなくのんびりとペンギンのベットに寝転んでいる。

ぺらりとページがめくられる音に、見上げるようにペンギンを見る。
実際に寝転んでいるおれの頭の少し上に片膝を立てて本を読んでいるペンギンはタンクトップに短パンという、普段見せない白い肌が多く露出している。
右足の付け根から太腿の途中まである刺青が短パンから見えて、ついつい目が行ってしまうのは仕方がないと思う。
音を立てないようにゆっくりと腕を動かして、タンクトップの端を引っ張る。
反応はない。
今度は身体ごとペンギンに近付いて、頭のてっぺんがペンギンの太腿にくっついたところで前髪の隙間から様子を伺う。
大丈夫、そう。

「ぺんぎん、おれのこと、すき…?」

幼稚な質問は再びめくられたページの音に掻き消された。
タンクトップの端は掴んだままで、つむじから感じる温かさに小さく息を吐く。
もっと触れたくなって、読書の邪魔にならないように頭一つ分乗り出して、ペンギンの太腿の上にそっと頭を置いた。
タンクトップの端を掴む掌が急に寂しくなって、ペンギンの腰に回す。
ぎゅう、と腕に力を込めて、ペンギンが動かない代わりに引き寄せられたおれの頭は太腿から腹へ。
肺いっぱいにペンギンの匂いを吸い込んで、深呼吸を繰り返す。
本当はもっと、背骨が折れるぐらい力を込めたかったけど、ペンギンの邪魔をしてはいけない。
光で透けた前髪の向こう、横目でペンギンを見れば、色素の濃い瞳がこちらを向いている気がした。
気が散ってしまっただろうか。
怒っているかもしれない。
それでも離れる気にはならなくて、鼻先をペンギンの腹に埋めた。
すん、と鼻を鳴らして息をすれば、上から小さな笑い声が返ってきた。
静かに耳の後ろを撫でられて、くすぐったくなって少しだけ首を振る。
目を閉じて、ペンギンから移る体温を逃がさないように出来るだけ丸くなってみる。

「ばか、ちゃんと好きだよ」

え、とペンギンを見ようとしたら、ぺちん!と大きな音と共に目は開いているのに闇の中。
それでも落ち着いていられるのは、その闇はペンギンの手だから。

「ペンギン、痛いよ」

「うん」

「おれも好きだよ、ペンギン」

「…うん」

「ぎゅってしたい」

「…うん」

ゆっくりと離れていったペンギンの掌を追いかけて、ちらりと見えたペンギンの顔は予想通りに赤くて、そんなのを全部引っくるめて出来るだけ優しく抱きしめた。











ばか、
(好きだよ、なんて反則だ)











ペンギンだってキラーがちゃんと好きなんだよ

「ばーか」受信文
しっかり受信したのに送信で圏外に吹っ飛んだ


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