[携帯モード] [URL送信]



学パロ注意




やばいやばいやばいやばい…!

制限時間残り十五分。


赤信号を完全に無視して全力疾走するおれは、端から見ればどれほど滑稽なのかはよく分かっている。
髪は長くて金髪でワイシャツのボタンは全開な上、中に着ているTシャツにはリアルな骸骨がプリントされてる(選んだのはキッドだ)
そんないかにも不良ですよという格好の奴が全力疾走なんて、どう考えてもおかしい。
しかも向かう先は不良は寄り付かない朝の学校だ。
財布しか入っていないぺらぺらの鞄を手離さないよう握り締めながら学校の門を潜る。
靴箱で脱いだ靴をそのままに潰れた上履きに履き替え、二階にある職員室へ。
挨拶もなくドアを開けたおれを部屋にいた教師が一瞬睨んだが、我関せずといった具合にすぐ視線は外された。
そんなことは今のおれにとってどうでもいいことで、慣れた手つきで遅刻届けに手を伸ばした。

そう、おれはすでに学校自体に遅刻している。
ホームルームなんてものもとっくに終わっていて、一時間目が始まっているのだ。
そしておれが焦っている原因がその一時間目。
一時間目が始まって二十分。
つまり残り三十分。
おれの通うこの学校では授業終了二十五分前までに教室に入らなければ遅刻ではなく欠席になる。
つまりは、後五分で今までの羞恥の沙汰は意味をなさなくなる。
いつものおれならそんなことは気にせずサボるのだが、今日はそうもいかない。
おれのサボり癖がついに度が過ぎて、出席日数の危機になったのだ。
学校自体はまだ平気だが、問題なのは各教科の出席日数で、今日の一時間目である生物が後一回でも休めば単位を貰えないという極限の状態まできていた。
それに気付いたのは一通のメール。


喧嘩を吹っかけてきた他校の連中をキッドとぶん殴ろうとした時、そのメールはおれの携帯から無機質なメロディを発しさせた。





FROM:トラファルガー・ロー
TITLE:言い忘れてたけど
―――――――――――――――
後一回でも生物欠席したら単位や
れないってペンギンが嘆いてた




おれは無言でそのメールを五回ほど読み返して、恐る恐るスケジュール帳を開いた。
今日の一時間目、生物。
文系であるおれの一週間にたった一回しかない授業の一つ。
だがまさかこんなタイミングでカミングアウトされるとは夢にも思わなかった。
トラファルガーの言う『後一回』とはきっと今日も含めた『後一回』に間違いないだろう。
ペンギンは真面目な生物の教師で、こんな冗談を言う人間ではない。
しかも遅刻欠席もきっちり把握して記入漏れもなければ妥協もしない。
だから、ペンギンが『後一回』と言ったのなら、本当に『後一回』でしかなのだ。

「キラー、なんかあったか」

「…ああ、留年の危機だ」

メールをいくら読み返しても内容が変わる訳もなく、遠くで響いた聞き慣れたチャイムに顔を上げる。
そこには少し驚いた顔をしたキッドがいた。
まぁ、それもそうだ。
いつも留年だとか退学だとか言われているのはキッドの方で、おれはそれなりに上手くかわしてきたのだから。

「じゃあこいつ等の相手はおれだな」

にやりと悪役じみた笑みを浮かべて近くにいた奴をぶっ飛ばしたキッドは今この状況で誰よりも頼りになる。
そのせいで退学になりかけたり停学させられたりしているのだけれど。

「悪い、行ってくる」

無言でおれを見ずに片手を上げたキッドはやたらと男前で、こういうところにトラファルガー辺りがころっと惚れてしまうのだろう。
一歩踏み出したおれは、誰かがごみ箱に激突したであろうけたたましい音を合図に走り出した。



「ドレーク!印鑑!」

「先生を付けろ…ほら」

遅刻届けを受け取って、足早に職員室を出る。
後ろでドレークが何か言っていたが、気にせずドアを閉めた。
そのまま階段に直行して二段飛ばしで駆け上がる。
目指すは四階右側の角。

足がほつれてこけそうになりながら教室に雪崩込む。
人の机にぶつかりながら教卓に遅刻届けを叩き付けて一秒。
ぜぇはぁと整わない呼吸の中、おれが教室に入っても一切見ようとしなかったペンギンの視線がおれを捕らえた。
呼吸は少しずつ落ち着いて、何も言わずに遅刻届けを受け取ったペンギンを見据える。

「遅刻理由が『喧嘩』というのはどうかと思うが」

「そ、そこじゃなくて…遅刻だったか」

教室に入った時、ペンギンがおれを見なかったのは他に見ていたものがあるからだ。
おれの見間違いでなければ、それは腕時計。
ペンギンは、きっちり秒単位で遅刻か欠席かを決めようとしたのだ。

「…惜しいが、後二秒だったのにな」

「二秒…」

おれは無気力にずるりと床にへたりこんだ。
なんてことだ、来年もまた同じ学年だなんて。
キッドが先輩になるとかおれは嫌だ。

「後二秒で今年の分の生物を来年お前にみっちり教えられたのに」

残念だ、と苦笑したペンギンが授業を再開するとばかりに教科書を持った。
おれの頭はウイルスに感染されたパソコンのようにホワイトアウトして、ペンギンに教科書で軽く頭を叩かれたことで現実に帰ってきた。

「ペンギン、それって…!」

「どの道、『後一回』欠席すれば留年だからな、気を抜くなよ」

それは、まだ可能性があるということだろうか。
来週からもこの時間に教室にいなければならないけれど、そうすれば留年は免れる。

「ああ、でもお前、この前の中間で15点だったから補習な」











二秒が一年の意味を持つ
(君とマンツーマンの補習なら喜んで受けるよ)











生物で15点って、キラーは一体何したんですかね
解答欄ズレたのか?
キラペンほど生徒×先生が似合うかっぷるはないと思う


あきゅろす。
[管理]

無料HPエムペ!