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※色々と捏造しています
※天草犯人注意





ざああああああ……


雨が無慈悲に降っている中、誰も居ない山道を一人の右代宮戦人が歩いていました。

彼は傘を持っていません。
雨粒が無遠慮に彼の頬や額を叩きました。
せっかくの上品で上等な白いスーツも、今やずぶ濡れで台無しです。
髪型を保っていたワックスはとっくに流れ落ちていて、垂れて張り付いた髪が彼の左目の視界を真っ赤に染め上げていました。
さながらそれはこの島に転がる死体達の血のようです。

しかし右代宮戦人にとってそれは些末なことのようで、気にした様子もなく一定の歩調で歩き続けます。

やがて山道が途切れ、開けたそこは切り立った崖の上でした。

そこで彼がぼぅっと雨に叩かれ続けていると、不意に
ばしゃり
という音が背後の山道から聞こえました。
右代宮戦人が緩慢な動作で振り返ります。
そこには天草十三が立っていました。


「旦那、2ヶ月ぶりっすねぇ。」

「おう。久し振り、というにはまだ早ぇか。」


お互いがお互いに、笑顔になりそこなった不良品を表情筋を使って繕いながら、片手を挙げて挨拶をしました。


「……案外、あっという間だったな、6年間。」

「ええ、そうですね。」

「お前には感謝してる。俺に期限付きとはいえ自由をくれたんだから。」

「感謝されるようなことはしてませんよ。俺もある意味自由になれたんですし。」

「…………、そうか。」


それぞれ思うところがあるのか、2人ともそのまま口をつぐみ、すぐに会話は途絶えました。
えも言えぬ微妙な雰囲気を孕んだ沈黙が2人の間に落ちます。
暫くして、その沈黙に耐えきれなくなったのか、右代宮戦人が妙に明るい声で言いました。


「でもまさか、お前とクラスメートになる日が来るとは思わなかったぜ、いっひっひ!」

「ヒャッハ、俺だって予定外でしたよ。でもま、楽しかったですよ。色々馬鹿もやれましたしね。」


右代宮戦人が笑いました。
天草十三は哂いました。

ああそうだ、と右代宮戦人は思い出したように、天草十三に右手を突き出します。
手にはワインボトルを携えていました。


「“ワトスン”の役目は果たしたぜ。これで俺の“右代宮戦人”もお役御免だな。さっさと幕引きにしようぜ?」


右代宮戦人だった男からワインボトルを受け取った天草十三は、やり切れなさそうに眉根を寄せて男を見つめます。


「旦那、一緒に「駄目だ。」

「どうしてだ!どうしてあんたはそうやっ……!」


…………………。


暫しの間があって、右代宮戦人だった男が天草十三から離れました。
その顔に浮かんだのは、自嘲の笑みでした。


「……俺の血を遺しちまう訳にはいかねえんだ。チェンチのベアトリーチェから生まれた悲劇なんて、もうたくさんなんだよ。」


そして、真剣な面持ちで天草十三を見つめます。


「“土石流”までもう時間がない。お前が、お前の手で、…………終わらせてくれ。お前にしかできないんだ。頼むよ、戦人。」


「あんたは……あんたはずるい。卑怯だ。」


戦人と呼ばれた男は、駄々をこねるようにずるいだの卑怯だのと言い続ながら、チャキ、と右手に持っていた銃の、その銃口を右代宮戦人だった男の心臓に当てます。
右代宮戦人だった男は苦笑しました。


「悪い、とは言わないぜ?謝って済むなら初めからしないしな。」

「……わかってる。あんたは俺で、俺はあんたなんだ。」

「じゃあ、」

「ああ、」





「「グッバイ戦人、ハバナイスドリーム」」





















1986年10月6日

その時“右代宮戦人”は死にました。
その時“天草十三”は本当の意味で生まれました。

産声をあげることはありませんでした。
しかしその産声は、もしかすると一粒の涙だったのかもしれません。





おしまい。











Un cauchemar doux supreme.
このうえなく柔らかな

(おやすみなさい、よいゆめを)











色々補足と蛇足
天草=霧江の息子=真戦人
戦人=死んだ下位ベアトの息子=偽戦人
天草は6年前に六軒島の魔女を探して道に迷い、そこで戦人に出会います。
幽閉されて暮らしているという戦人の境遇を聞いて、戦人を島から連れ出し、明日夢の死を契機に期間限定で“戦人”を貸すことに。
その間天草は暗殺や護衛スキル積んでました。雲雀13になったりとか←
で、監視と護衛の両方の目的で戦人と同じ高校に編入しました、といった感じです。

天草にとっての予定外は戦人が切れるカードではなくなったことです。
土石流はぬかるんだ土地を時限爆弾で爆破することによるものです。

あと、
哂う=わらう
ワトスン=観測者=ボトルメールの筆者≠犯人
チェンチのベアトリーチェの悲劇=近親姦
です。

ちなみに戦人が激昂した天草に何をしたかはご想像にお任せします←


色々分かりづらくてすみません(土下座)
というかこれお題に沿ってるのだろうか←
畜生、文章力がねぇ、文章力がねえよおぉぉぉひいぃぃぃぃぃぃぃっ



ここまで読んでくださった方、素敵企画を立ててくださった眼鏡様、協賛の町田様に感謝いたします。
ありがとうございました!






あきゅろす。
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