『Deep celebration』続編
甘々
Deepシリーズ完結編
***
――おかしい。
一時間前に、手紙入りのプレゼントを渡したのにスザクから何の反応もない。
「…スザク――、」
「なぁに?ルルーシュ」
「……いや……何でもない」
――いや、変だろう。
プレゼントの感想なんて要求するもんじゃない。
が、しかし。
プレゼントの中身は指輪だ。
12月5日にプロポーズと一緒に貰った指輪のお返しに買ってきて日頃、照れて言えないスザクへの想いを『誕生日くらいは言葉にしたい』と文にしたためたのだ。
恥ずかしさと戦い、何度も破っては書き、書いては破り。
ついに書きあげた、俺の全てを賭けた恋文とプレゼントを、
スザク、お前は華麗にスルーか?
アーサーと猫じゃらしでのんびり遊びやがって。
のんびりスルーか?
俺の気持ちなんてどうでもいいって事か。
あああムシャクシャしてきた!
ムシャクシャしてきたぞーー!!
「…気分が悪い。帰る」
「あっ――…ゴメン…」
「っ――、」
――あ、謝られた…。
やはり、俺の想いとプレゼントは空回りしたのか――…
何故?どうして?
半年前、お前が俺の誕生日にくれたプロポーズはどうでもよくなってしまったのか?
心の中で問掛ける度、胸が軋んだ。
君の気持ちは受け入れられない、ゴメン。
そういう事なのか?
「……何故謝るんだ」
「え?だって昨夜僕が激しく君を愛し過ぎたせいで眠れなかったから体調悪いんでしょ?」
「ほあ!!?違うわーー!!!!」
馬鹿が…!
ヒトが真剣にショック受けたり悩んだりしてるというのに。
余りにも的外れのスザクの答えに、カッときた俺は鞄を掴み出口へと向かった。
「ちょ、何怒ってるの…?!」
追い掛けて来ようと慌てるスザクの気配を背中で感じつつ、俺はドアを開ける。
「アッ――」
スザクの声が発されると同時に、見覚えのあるリボン掛けの淡いブルーの小箱が足下に転がって来た。
「――!!!」
(俺が渡した誕生日プレゼントじゃないかーー!!スザクの奴、封を開けてもいなかったのか…!?)
――愕然とした。
色々、想像していたから。
プレゼントは渡す方もワクワクしているもので、プレゼント対象者の反応を楽しみにしていたりするものだろう?
プレゼントを渡して直ぐ、
『開けていい?』
なんて展開が好ましい。
その後の展開は、
『…嘘、いいの?僕がこんなの貰って』
喜んでお前は言うんだ。
恥ずかしいけど思いきって、
『お前に、貰って欲しいんだ』
『…ありがとう。アレ?手紙入ってる!』
『ばっ、それは後で一人で読んでくれ…!』
――と俺はその場を去って――
予想をたてて照れていた。
だが、予想は妄想に終わった。
スザクは受け取ると即『ありがとう』ととても嬉しそうに笑いながら鞄に直してしまったのだ。
俺の目前でプレゼントを開けるのが恥ずかしいのかもしれないと、何も言わないでおいたが。
本当は大分凹んでいたんだぞ。
まさか、朝一で渡したプレゼントが下校時にも開けられていなとは。
そんなに俺からのプレゼントに興味が無いのか。遺憾だ。
「…俺からプレゼント貰っても嬉しくないって事か?」
「え!?な、何で…?」
何の事だか分からないと鳩が豆鉄砲を喰らったような顔でスザクは首をかしげた。
スザクの足下のアーサーも不思議そうにコチラを見る。
あれ?
もしかして俺からのプレゼントに興味が無いから開けないワケじゃのか。
「返して」
「要らないから開封しないんだろ?」
「何故そういう解釈になるの?兎に角もう、そのプレゼントは貰った僕のだから、返してよ!」
もみ合った挙げ句、頭に来たのか俺の手を捻りあげスザクはプレゼントを力づくで取り返してきた。
何だよ、そのプレゼントへの執着は。開けなかった癖に。
奴は、手の中のプレゼントをブルーのリボンをなびかせながら俺から遠ざけた。
――その時。
「あっ…!」
そよぐリボンに遊び心を掻きたてられたのか、猫はスザクの手からプレゼントを奪い、ドアを抜けて廊下を駆けていった。
「アーサー!」
「ほああぁ!!!」
俺とスザクは部屋を飛び出し猫を追い掛ける。
「ねぇ…何でさっき、あんなに怒ってたの?プレゼント返せとかって」
「それは…お前がプレゼントを開けないから…要らないのかと思って。だって普通嬉しければ、直ぐ開けるだろうが」
「別に?僕は中身は何でもいいや。ルルーシュに貰う事に意味があるんだもん」
「!」
なん だと?
衝撃と息切れに足が止まる。
これだからKYは!
「ハァ…ハァ…」
「ルルーシュ」
「お前は!猫を追い掛けろ…!誰かに中を開けて見られたら大変だ…!」
「どうして?そんなヤバイプレゼントなの?」
「プレゼントよりも…手紙がヤバイ」
「手紙?…なに書いたの?」
「『愛してる』だの『傍にいて欲しい』だの絶対口で言えない事を――…はああ!?」
――口では決して言えない事を口にしてしまった。
謀ったなぁ、スザクぅぅ!!!
「ラブレター入りのプレゼント、取り返してくるから、ちょっと待ってて」
「っ…!!」
そう言い残すとスザクは頬を真っ赤に染める俺を置いて、猫を追い掛け颯爽と走って行ってしまった。
*
数分後、猫を抱いてスザクが戻ってきた。
左手の薬指にはプレゼントした指輪が光っている。
「……」
「ただいま、マイハニー ルルーシュ♪」
「ふん、…バカ」
俺は、ポケットに入れて置いたスザクに貰った指輪を、そっと薬指にはめた――。
おかえり、マイダーリン
Fin.
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