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はじめて触れた気がした。
髪はやわらかく甘い栗色で、肌は白人の中でも特異なミルク色。
瞳には、青空の中に、森林の深さを一雫おとしている。
まるで真昼の雨を見上げているようだ。
そっと頬を濡らす。
水を含んで少しだけ薄くなった色が、やさしくティエリアを見つめる。
おまえの話を聞いてるよ、俺はおまえと向き合ってるよ。
そう伝えるかのように、ロックオンはいつもティエリアに視線を合わせ、首を僅かに傾げ、身体ごと意識を向けていた。

「私が護ると云った」

ロックオンは、うん、と頷く。
それはただの相槌だったのかもしれないし、承知している旨をティエリアに伝えるものだったのかもしれない。
承知していたのだとしたら、それは非道い仕打ちだった。
ロックオンはティエリアの意思を尊重しなかった。
尊重しなかったうえに―あろうことか―ロックオンの意地のためと、世界に対するけじめのためと、そして何より仲間のために銃を握ったのだ。

「私が!まもると!云った!」

それはティエリアにとって非道い仕打ちだった。
激情のまま右手で胸倉を掴み上げ、思いきり引き寄せる。
彼は容易くティエリアへと傾いだ。
傷だらけの顔が目の前に迫る。
ティエリアは左手を持ち上げ、ロックオンの頬を乱暴に擦った。
目に留まる細かな傷を消そうとするかのように、何度も何度も。
ロックオンの唇が、少しだけ開き、ほ、っと息を漏らした。
瑞々しいみどりがティエリアに降り注ぐ。
ロックオンのみどりは実におだやかに澄みきって、ティエリアに微笑みかけていた。

「わたしが…まもると…」

ティエリアはそのみどりに安らぎを見出した。
それを自覚してしまうと、もう立ってはいられない。
握った掌を力なく開く。
意思を失ったその手は、落ちゆく前に白い手に拾われた。
剥き出しの指がティエリアの手の甲を撫でる。
それからもう一度、ロックオンの頬に戻された。
指先に皮膚が触れる。
ロックオンは何も云わなかった。
何も云わずにティエリアをやさしく見つめている。
掌から仄かな熱が伝わってきた。
ふるえるくらい、あたたかな熱だった。



咽 を お さ え て 泣 く 君 は




※ティエリアにとってロックオンは初めて触れた母親のような存在であり、父親のような存在でもある…という妄想


あきゅろす。
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