あの日以来(1週間しか経ってないけど)沖田君の姿を見ていない。町を歩いていても会うのは何時も瞳孔開き気味な男だけで…何時も一緒に見回りやってたじゃん、アンタ…沖田君と

「最近沖田君見ないけど、どうしたの?」

「あぁ?総悟?アイツ……て、イヤ何でもねぇ」

「何ソレ、すんげー気になんですけど」

「ただ、仕事で京に行ってるってだけだ」

「へぇ…」

仕事で京に、ねぇ。
大串君、何か誤魔化しきれてない感で溢れてるんですけど…
オレの気のせいかな


「京に行ってんなら会わねぇわな」

振り返りもせずヒラヒラと手を振ってその場を後にする


ぁ、前に見えるのはもしやジミー?
ちょっくらジミーに確認してくるか

「おーい、ジミー」

「山崎です。旦那じゃないですか。どうしたんです?」

ニコニコと陽気に聞いてくる

「沖田君に最近会わねぇんだけど、どうしたの?」

さも知らないような振りをして、先程と同じ質問をしてみる

「え?隊長ですか?」

「うん」

「隊長なら京のほうに仕事のほうで行ってるはずですよ?」





大串君が云ってた事本当だったんだ
てかさ、いまさらなんだけど何でオレが沖田君のコト心配しなきゃなんないの?別れたんだし関係ないじゃん。

「旦那?」

「ぁ、うん。ありがとな」

ジミーに背を向けて着た道を戻っていく。もちろん後ろでジミーがホッとした顔をしていたなんて知る由もなかった







「ちょっと!銀さんどこ行ってたんですか?今日依頼人来るって云ったでしょう!?」

「あー…、そうだったっけ?」

そういいながら奥の部屋へと引っ込む。襖を閉めその場にズルズルと座り込んだ。
携帯を開き受信履歴の中から彼の人メールを開く

『明日、旦那んトコ行ってもいいですかぃ?』

『明日、会えやすか?』

『会いたいでさぁ』

何度消そうとしただろうか?

何時も指が途中で止まってしまうのだ。

そのまま携帯を閉じて強く、強く握った。壊れてしまうくらいに強く…

涙なんてとうの昔に枯れてしまったから溢れるものなどなかった。あるとしたら、溜息くらいだろう

メール上でも江戸弁を使う彼を想い、どうすることも出来ない気持ちで少しばかり焦りを感じる

「銀さーん。依頼人来ましたよー!」

「おー、今行く」



会いたい…


逢いたい…

気持ちばかりが膨らんでいって、ココロが…


壊れそうだった



ねぇ、沖田君…

君は知っていただろうか?

オレは、いつの間にか…

君無しでは呼吸をするのも


困難だった――…なんて


君は知っていただろうか?


君が居るから、笑っていられた

君が居るから…

…この世界でもう一度ちゃんと生きてみようって…



思えたんだ、ってことを…


ココん所仕事がたくさん入ってくる。
猫探しとか、浮気調査は毎度のコト。何かホントたくさん仕事が来た
仕事をして、楽だなんて考えるときがくるとは思いもしなかった


余計なことを考えずに済むんだ

沖田君のコトとか…過去のこととか…沖田君のことだとか…

逢いたい…という気持ちは日が経つほどに強くなって、夜も熟睡することがなかった

「銀さん?何か考え事してる時間増えましたよね。仕事してる時間と平衡して」

「銀チャン熱でもあるアルカ?」

「ねぇよ」


オレのデコに手を当てて自分の体温と比べる神楽の手を払いのけて机の上にあるジャンプに手を伸ばした


「そうだ、銀さん。僕たち明日姉上と出かけるんで、明日はゆっくり休んでくださいね」

「―…新ぱっつぁん、眼鏡でも割れたのか?」

「どういう意味ですか?!」

「いやな、お前がオレにゆっくり休めなんて…」

僕もいえる日が来るなんて思ってもいませんでした。なんていちゃって、何処まで失礼なんだコイツ。


「じゃぁ、僕今日はもう帰りますね」

「私も新八んトコ行ってくるアル」

「ぇ?何お前。泊りがけなの?」

「そうアル。姉御と明日買うものの相談するアルヨ」

「へぇ…」

万事屋から2人も居なくなると流石に寂しくなる


こんなときに沖田君が来てくれたらな…なんて、

「好きな、奴…かぁ」

ジャンプを開きながら独り呟く
この無音が寂しさに拍車をかける


逢いたい…

また独り呟くのだ

この静かな空間で…

そっと消え入りそうな声で…


ポツリと…






餓鬼共が居ないと朝から暇でしょうがない
何度も何度も呼んだジャンプを再び読み返していたとき、突然万事屋の電話が鳴った。留守電設定になっていたのか『銀チャンは、只今仕事中ですアルヨー』いや、おかしいだろその日本語は
ピーと機械音がなった後、

彼の声が…

沖田君の、声が・・・

電話に出たら、きっと…また酷いことを云ってしまいそうで恐かった
だから聞いてるだけにしたジャンプ片手にでも、しっかり心は沖田君の声に集中させて





『何だ…旦那いねぇんですかぃ?』

あぁ、愛しい彼の声

『ま、しょうがねぇや。時間ねぇし』

ゴホゴホと辛そうな君の咳。
体調でも悪いのだろうか?

『旦那、嘘ついてすいやせんでした。好きな奴が居るっての嘘でさぁ』

ヒューヒューと彼ののどが悲鳴を上げている

『オレ…死ぬんでさぁ…』

止まるはずのない時間が止まったような錯覚に陥った
ソレは悪い冗談?

『治らねぇんですって』

やめろよ…。そんな冗談。笑えねぇよ?

『オレね、昨日夢を見たんでさぁ…。






ソコは、万事屋でねぃ、何時もアンタが座ってるソファにやっぱりアンタが座ってて、その腕ん中にオレがいるんでさぁ…。
夢ん中のオレはすごく幸せそうな顔しててねぃ、羨ましかった…
アンタは何時もみたいにオレの髪の毛「綺麗だね」って云って優しく梳いてくれるんでさぁ・・・そんでオレも「旦那の手ぇ、気持ちいい」って……っ』



滅多に泣かない彼が電話の向こうで泣いている。


『だん、なにっ「別れよう」なんて、云った…事すごい、後悔してっ…どうせ、死ぬなら・・・夢ん中見たいにアンタの…銀時の腕の中で死にたかったなぁ…って…
最後まで、銀時の声、聞いて、そんでっ、笑って「大好き」って、云って…アンタの泣き顔見て…


「ひでぇかお」

って馬鹿にして


キスして


「愛してる」っていって

笑って…


「ありがとう」っていって…

それ、から…っ』

向こうでゲホゴホとさっきよりも苦しそうな声が聞こえてくる。とっさに電話に出て「大丈夫か」と聴こうと思った瞬間

『アンタが優しく、オレにキスしてから、…死にたかった…』




『アンタだけですぜ?オレが愛してたの』


コレは本当だからと最後に念を押す

「総悟っ」

『何だ…


  アンタ居たんですかぃ?人が死ぬってのに…性悪でさぁ』

受話器の向こうでふわりと華が咲くように笑う総悟が手に取るように分かる


『後追いなんて、止めてくだせぃよ』

向こうでガチャリと電話が切られた






総悟のもとに行かなくては…

万事屋から飛出して愛車に跨る



今なら、間に合うだろうか…



布団の中で、最後の時を待っていた


最後にアンタの声聞けてホントに良かった
後は死ぬだけ…なんて

あぁ、なぜだろう…アンタの声聞いたら…

涙が…溢れてきて…


「ぅっく…」

逢いたい…

逢いたい…



彼は来てくれるだろうか?
オレのところへ。いや来るはずはない…
最後まで我侭で、勝手に別れてずるい手段で謝罪した



「ぁぃ…たぃ…」




そう呟くとしまっていた障子がガラッと音を立てて勢いよく開く






神様…オレ、幸せ者でさぁ…



逆光で顔こそ見えなかったが、親しく付き合った仲だ。顔なんて見なくとも分かる


「旦那ぁ…」

オレをぎゅっと抱きしめるアンタの腕が妙に懐かしい


「旦那?」


「ふざけんなよ」

「すいやせん…」

「なんで、云ってくれなかったんだよ…」

「すいやせん」

「なんで、傍にいさせてくれなかったんだよっ!!」

「ごめん、なさい…」


ギュウギュウと締め付けられる圧迫感が愛おしい。アンタの猫毛が愛おしかった


急に旦那の片方の手が髪を撫で始める。ソレから指先が髪を絡める

「沖田君の髪…綺麗だね」


「――…旦那の手ぇ気持ち良いや」

髪を梳く手は震えていた
旦那の気持ちが痛いほど伝わってきて苦しかった


「だんな…、大好き」

「オレも。沖田君のこと好きだよ」


「旦那、泣いてんですかぃ?」

「馬鹿いってんじゃねぇよ」

少しばかり二人の身体に距離ができる
旦那の首に腕を絡めて甘いキスをした


「愛してる」


「先云わちゃいやしたねぃ」

「沖田君は?」

「もちろん」





          愛してる






「旦那、あ…「云わないで」」

「ぇ?」

「だって、云ったら…逝っちゃうんでしょ?」


その言葉を云ってしまったら…

お前は遠くへ行ってしまうのだろう?と…



髪に、額に首筋に、胸に…、手に


最後に唇に…旦那は優しいキスをくれた


「泣いてんじゃねーよ。コノヤロー」

「っ…コレ、はっ鼻水でさぁっ」

やだ…ダメ、泣きたくない

泣いたら



泣いてしまったら…


あんたの顔…



見えなくなっちゃう――…




「おまっ、もうちょっと可愛いこと云えないんですか?この口は!」



あぁ、意識が遠のいてゆく







まって、


もうちょっとだけ…




「ひでぇ顔…。」

「うるせぇな」

「はは…」

「もう一度、オレと…付き合ってくれる?」



あぁ、やっぱりアンタはカッコいい




そんなの、決まってる


「喜んで」


「マジでか。」




「オレァ、幸せ者でさぁ…



  ありがとう…ごぜぇやし、た………――」




「総悟!」







一筋の風が唇を掠めていった





様子を察したように近藤たちが総悟の部屋へ集まってきた



「万事屋ぁぁぁぁぁ!!!ごめんなぁぁぁ!!お前に、一番つらいこと、させちまって-――!!!」


鼻水たらして涙流してそれでもオレに謝罪してくるゴリラに胸が痛くなった…



「ごめ゛ん゛な゛ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
















アレから、何年経っただろうか…
オレは相変わらず万事屋で、


今でも、君のメールを読み返すたび泣きたくなる。叫びたくなる



『銀時、大好きでさぁ』



心が



ココロが




熱くなっていくのを感じた





忘れもしないあの風が吹き抜けた



♪〜♪〜


懐かしい音、あぁ、忘れもしない彼からのメールの着信音


「なんで」



確かに新着メールが1通
件名は、沖田総悟




『旦那、逢いたいでさぁ』



…ふと、雨が降ってきた

否、雨なんかじゃなかった


オレの涙だった

枯れたと思ったのに


はは・・・と笑って

「オレも、逢いてぇよ。」



Sで気が強くて
髪がさらさらで、笑顔が可愛くて
何気なくオレのコト頼ってくれたりするお前に




逢いたい


逢いたい


初めて、人を思って泣いた


携帯のディスプレイが涕色にかすんだ





あぁ、ココロが熱い…
















-------------
ラミハル様(URL)

BACK


あきゅろす。
[グループ][ナビ]
[HPリング]
[管理]

無料HPエムペ!