気が付いたら、卒業していて。
気が付いたら、春休みが終わって。
気が付いたら、大学生になっていた。
毎日どんなふうに過ごしていたかなんて、思い出せない。
何も考えられなかったから。
神奈川から離れての一人暮らしは不安もあったけれど、でも、何の思い出もない新しい土地は逆に暮らしやすかった。
友達もできて、笑っている時間も増えた。
バスケの推センで入学したからには、やっぱりバスケ部に入らなくちゃならないわけで。
ホントはやりたくなかったけど、毎日打ち込んでた。
でも、夏が終わった頃から徐々に部活から足が遠のいていった。
どう足掻いても、バスケをやってれば宮城が頭の中に浮かんでくる。
それはどうしようもなかった。
「1年のクセに生意気だ。」
「ちょっと有名だからって調子に乗ってる。」
そうやって影で言われ始めたのもわかってる。
真面目に部活に行かない自分が悪い。
冬になる頃には、もうバスケットボールに触れることもなかった。
「あんなに好きだったバスケだって、宮城がいないとできねーのな。」
ボソッと呟き苦笑いをする。
白い息で手を温めていると、空からちらほらと氷の結晶が落ちてきた。
「雪…?」
そういえば今日雪になるかもって天気予報で言ってたっけ、なんて呑気に思ったあと、急に胸が締め付けられるように痛んだ。
宮城がいなくなった日も雪で、
あれ以来初めての雪だ。
「なぁ、宮城。俺お前がいないとなんもできねーよ。お願いだから戻ってきて、助けてくれねーかな。」
空を見上げながら唱えたその願いは、闇の中に消えていった。
何してんだかな、なんて自分が馬鹿らしくなる。
寒さに耐えきれず、家路を急いだ。
今日は久々に泣いちゃおっかな、なんて思いながらアパートの前まで来ると、自分の部屋に明かりが灯っていることに気づいた。
「やべー、つけっぱなしだ…」
早歩きで階段を登り、ドアの鍵を開ける。
「え…」
部屋に入るなり視界に飛び込んできた光景に言葉を奪われた。
目眩がしそうなくらいの衝撃だった。
「おっせーよ、三井サン!」
「み、みやぎ…?」
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